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元気な大学生は苦学生! 4

元気な大学生は苦学生!の四話目になります。

 張飛は大きく息を吐き出しながら心の奥から安心したような声を漏らす。エーフィーは目の前で繰り広げられた激しい戦いを見ているだけでも息を呑むような思いを抱えていた。

 目の前で繰り広げられた本物の魔術師の死闘であり、本気の殺意を交えた殺し合い。

 エーフィーの方に振り返る張飛の顔はどこか穏やかなものに変化しており、片膝をつきながらエーフィーの頭に手を載せる。

 多少雑に撫でるその手はゴツゴツしながらも確かな温かさを感じ取り、エーフィーはようやく場の空気が緩んできたことを感じ取り胸の奥から込み上げてくる不思議な感情を抑えきれない。

 元気が取り柄であるエーフィーからすればこんな感情はめったに来るものでは無く、瞳にたまる涙が一筋の雫へと変わる。

「本当に………心配したぞ」

 漏らすような言葉でエーフィーは一筋の雫は大粒の涙へと変わっていく。

「ど、どうして……すか?なんで…ここ…に………?」

 張飛はエーフィーに手を伸ばして立ち上がらせながら語りだした。


 あん?あれは………エーフィーか?

「なんであんなに真剣な面持ちで出ていくんだ?」

 そう思いながら俺はスーパーの中を覗き込むと足元の買い物かごの側に隠れるようにエーフィーの小柄な財布が小さな隙間に挟まっており、あと少しで排水溝に落ちそうになっている。

 財布を拾って中を確認しようとして止める。

 それ以上開いたらプライバシーの侵害に当たるだろう。

「追いかけて届けてやるか………もしかして…これをなくして焦っていたのか?」

 それなら確かに神経な面持ちで走っていくのも分かるような気がするな。フム………それにしては……何故走っていたんだ?それなら下を見ながら確認しつつ歩くと思うが?

 ちょっと気になるな。急いで追いかけるか?

 そう思ってエーフィーが去っていた方向へと探しに行くが、かなりの速度で走ったのだろう。あっという間に姿を見失ってしまった。

 全く、あいつどれだけ走っていったんだ?

 なんて思いながらメインストリートに出るとちらっとであるが視界の端にエーフィーが見えた気がしたが、急いで路地裏に曲がっていくのが見えて俺は駆け足で追いかけながら確認しようと路地裏を曲がって所で何かを蹴ってしまう。

 蹴ってしまった所で俺の視線は直ぐに下を向きエーフィーの携帯が通話モードで開いている事に気が付いた。

 通話状態で携帯を放置するという状況に嫌な予感を感じ取れた。

 通話状態はいきなり切れ、俺はエーフィーの携帯を回収しつつ急いで路地裏の奥へと走っていき、曲がりくねった一本道を掛けていくと、ちょうどフードを付けた謎の人物がエーフィーに襲い掛かった瞬間に遭遇してしまう。

 俺は頭に血が上ってしまい、そのまま切りかかってしまう。


 俺はエーフィーに財布と携帯を返しそのまま路地裏から出ていき、元のメインストリートへと出るとエーフィーを探しに来たフィリアとイリーナがこちらの姿を見付けたのか声をかけてきた。

 俺が二人の方に手を振って合図を送る間に二人は合流することが出来た。

「大丈夫でしたか?エーフィーさんの通話から突然おかしな音が聞こえてしまって、心配で二人で追いかけてきたんです」

 フィリアが何度も頷きエーフィーに傷が無いかどうかをセルフチェックしていると俺はどうしても気になる事が出来てしまった。

 現時刻ではまだギリギリ営業時刻のはずだが?

「お前達現在は営業時刻のはずだが店はどうしたんだ?」

 二人は顔を逸らし逃げるように俺に背を向ける。

 さては……早めに店を閉めてきたな。

「全く………仕方ないからこのまま夕食を一緒に食べるか?」

「いいの?おじさん報告とか無いの?」

「いいさ。報告はさっきメールで告げておいたさ、それに狙われたエーフィーをほったらかしにできんだろ?一緒にいた方が安全だ。さて、何を食べる?」

「焼肉がいい」

 フィリアの輝く瞳を前に俺は一瞬仰け反りそうになる。

 焼肉………か、まあ店で食べると洗い物をしなくていいし、食べ放題なら………まあ……いいけどよ。

「フィリア………太るぞ」

「成長は全て胸と背にまわる。今よりボインボインになるから大丈夫」

「俺は腹に向かうと思うけれど?まあ………いいや」

 フィリアは俺の背を無言で叩きながら俺は携帯でこの辺の食べ放題の焼き肉店を探し出した。


 目の前に並べられた焼肉の皿の数、軽く七枚は超えておりそのすべてがフィリアが頼んだ肉である。

 ちなみにイリーナはこういう店は初めてなのだろう携帯であちらこちらを写真で収めており、エーフィーは先ほどから大人しい。

 俺はトングで先ほどから肉を裏返したり、焼けた肉を分けたりの作業で忙しい。まあ、フィリアが焼肉に行きたいと言い出した時点で俺に焼く役目を押し付けようとしているのは見え見えだったのであえて気にしないけどな。

 俺は自分が頼んだ野菜を開いた隙間に置きながら焼けるのを待つ。

 俺は焼けたキャベツをカルビを巻きつけながらフィリアのそばまで寄せる。

「野菜も食べろ」

「おじさんの意地悪」

 フィリアは頬を膨らましながらも別の肉へと手を伸ばす。箸を伸ばす先へとすかさず野菜を移動させる。

「食、べ、ろ!野菜も食べないと成長できないぞ!」

「おじさんの意地悪」

 俺はその言葉を無視して肉を焼くが先ほどからエーフィーの端が全く進んでいない。俺は自分の端で肉を拾い息で適温まで下げてエーフィーに向かって肉を近づける。

「食べないと元気が出ないぞ。お前の良い所は元気な所だ。俺は好きだぞ……お前の元気いっぱいの所」

 エーフィーは俺が近づけていた肉を一口で食べ、視線を下に落としたまま大人しくなる。俺は覗き込もうとするとエーフィーは元気一杯な表情で笑う。

「ありがとうございます!」

 俺は殴りかかってくるフィリアを上手く捌きながら肉を焼き続ける。


次から少しずつラストへと向かって進んで行きます。では明日!

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