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元気な大学生は苦学生! 3

三話目です。

 エーフィーの目の前に現れた張飛は息を切らしながら降り立ち、右手に矛を構えながら睨みつけるような視線を相手に向ける。

 張飛の視線はナイフから鉄線に移動して行き、長いようで短い五秒間が過ぎ去り張飛は相手に矛先を向ける。

「お前は………アマリー・レイか?」

 相手はあえてフードを取らず答えることもしない。あくまでも沈黙。

「いいさ。お前を捕まえて真犯人の手がかりを見付けて見せる。それに………うちのアパートの住人に手を出したんだ。お前はただじゃおかない」

 怒りを滲ませる感情を表に出し、眉間にしわを避け、目元は怒りを現すような鋭さを、口元は獰猛な虎を思わせる。

 矛をしっかり握りしめ、鋭い視線は敵を捕らえ、両足をしっかり地面に縫い付けるように立つ。敵もナイフと鉄線を構えながらサングラス越しに張飛を睨みつける。

 殺すという感情をお互いに滲ませる。

 先に動いたのは張飛だった。

 矛先を真直ぐ敵の胴体のど真ん中へと突っ込んでいく。敵はその攻撃を鉄線でうまく縛り付けて受け止める。

 魔術を『拒絶』しようとするが、反応しない。

 どうも鉄線を周囲に縛り付けながら戦っているようで、あくまでも最低限の所を操作していると張飛は油断していると、張飛の後方から大きなエーフィーの声が聞えてきた。

「張飛さん!後ろ!」

 矛をうまく動かしながら鉄線を切り裂き体を空中で捻って『何か』からの攻撃を回避した。

 張飛が先ほどまでいた所にナイフの一本が通り過ぎる。

「お前………本当にアマリー・レイなのか?」

 張飛の中にある小さな疑問をそっと口に出す。

 アマリーの魔術は物質の遠距離操作で、数の制限が無い代わり重量に大きな制限が掛かってしまう。ナイフ何て操作できないはずだった。

 しかし、後方からナイフを飛ばしたとしか思えず実際ナイフは後方から飛んできた。

 張飛は先ほど飛んでいたナイフをジッと眺めるが鉄線の跡も見えない。

(この数日で魔術師としての才を伸ばしたのか?しかし、魔術師としてのスキルは一朝一夕で伸ばせるほど簡単じゃない。俺だって三年ほどかけて今の能力を身に着けているし、俺の魔術だってまだまだ発展途上だ。魔術師の能力は毎日鍛錬しても育たない人は育たないわけだし、彼女にそこまでの才があるとは思えない。かといって、別の魔術を習得したとも思えないし………もう少し探って戦うか?)

 張飛は矛を『拒絶』し、刀を二本『創造』する。

 二本の刀を両腕で構えながら周囲へ集中力を最大限まで上昇させる。吹き付ける風の方向すら把握する中、斜右上からやって来たナイフを右側の刀で打ち落とす。

 その次にゴミを突き抜けるように左下からやってくる攻撃を再び弾く。

 すると激しい動きを鉄線が縛り付けるように展開する。

 刀の持ち手を変えて体中を縛り付ける鉄線を切り裂きながら一気に近づく。

(なんとなく読めたぜ………お前の飛んでくるナイフのトリック………そして、お前の正体もな……その為にはお前のフードとサングラス、取ってもらうぞ!)

 左の刀を吹き飛ばし、相手はそれをナイフで弾くが、一瞬視界がふさがれてしまう。周囲の鉄線を切り裂きながら突き進み、飛んでくるナイフは回避しつつ空を刀で切っていく。

「お前の正体……!それは…」

 張飛は刀で相手のフード事サングラスを吹き飛ばし、最後に刀の一撃がマスクも切ってしまう。

 風に流れるようにマスクが地面につく、フードは切り跡が付いてしまう。サングラスにも大きな切り跡が残り相手はまっすぐ視線を張飛へと向けながら後ろに退避する。

「お前の正体……アマリー・レイの影なのかとふと思った。でも、違う。『影』の性質は記憶や人格を別としつつも魔術は『表』が習得したものが反映されてしまう。だが、お前はナイフを勢い良く投げ、空間と別空間を繋げることで別の場所に出現させる手法を取っている」

 それが敵の魔術の正体。

 空間交換。

「それがお前の魔術の正体。お前は空間と空間を切り替えているんだ。交換した場所と場所を入れ替えつつ角度や方向も好き勝手にな。ただし、交換できる場所などに制限があるんだろ?物質を区切る事が出来ないんだ。例えば人や建物などの大きすぎる物は切り取れない。それと物質を全部区切らなければ交換できないんだ。そして、これがアマリー・レイが使えるなら試合の時に使っていたはずだ。しかし、使わなかった。という事はお前は別人という事になる。お前は………アマリー・レイの関係者。もしくは親類と言った所か?」

 目の前にいる女性は確かにアマリー・レイに似ているが別人のようにも見えてしまう。

「私は……アマリー・レイ……?」

 彼女はどうしてか疑問顔になりながら思案してしまう。

 張飛だけでなく先ほどまで襲われていたエーフィーすらも困惑してしまう光景だった。

 まるで彼女自身が自分の正体を良く知らない様な口ぶり、分かっていないのか分かっているのかがどうしても判断できない。

「私は……?」

「お前……もしかして……『影』じゃなくて……『闇』なのか?」

 『闇』という聞きなれない言葉にエーフィーが首を傾げてしまう。

 すると彼女の方は『闇』という単語を前に苦しみだしてしまい、大きな悲鳴と共にその場から逃げ出してしまう。

 張飛は追いかけようとしたが、エーフィーがいることに気が付き足を止める。

 張飛はエーフィーに近づき膝をついてエーフィーに手を伸ばす。

「全く……心配したぞ………」

 エーフィーは涙を流しそうになるのを我慢しながらその手を握りしめる。

 元気のいい声を出しながら彼女も立ち上がる。


今回は張飛の戦闘シーンでした。ではまた明日!

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