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ざっこの野趣を受ける酒!

 茨城県の浮島へ参りました。霞ヶ浦が満々と水をたたえる淡水の浦は、教員だった祖父母が海がわりに生徒さんを引率した広々とした水辺でありまして。

 今日は夜半の雨上がりの雲が残る、実に晩秋らしい油彩に描けそうな空で、麗らかとしか言い様のない秋晴れでした。

 浮島の名物の一つがざっこ煮であります。川海老、(はぜ)、タナゴなどを実に甘辛くこってりと煮つけます。小鮒等を串に刺して煮つけたものは「スズメ煮」等と言ってお正月のおせちには欠かせない存在でありますが。

 わたしは川床をさらったような小魚の煮付けが何より好きです。その筆頭たる(はぜ)こそ、まさに野趣満点。

 強い味付けあってこその醍醐味は、川床の栄養をたっぷり吸った腸の苦味でありまして。小指の半ばほどしかない、小さな魚なのです。それがじゃりりと噛めば噛むほど肉を感じる、川床の泥を這ったことの分かる力強い滋味、その真髄は、この小さな身体に詰まった腸の苦味が一身に担っておりまして。

 地の旨味です。泥鰌(ドジョウ)しかり、鮒、鯉、田螺(たにし)しかり、地で食べつけない方には鼻持ちならないアクに感じるかも知れません。しかしこのアクの強さこそ、万人受けに染まらない生のままそのもののざっかけない旨味ありまして。

 野趣と野趣は案外ケンカしません。今夜は芋焼酎の霧島。しかし定番の黒ではありません。すっきりキレの黒とは別のまろやか、どっしり、粘り腰の白霧島。

 煮しめた鯊を箸の先でつまみ上げ、力を入れて噛み砕きつつ、秋の地の味を、豊潤な芋で流します。お肉やお刺身も豪勢ですが、小体な秋の地味をひっそりじっくり味わうのも食の秋の贅沢。さあ今夜も乾杯です(`∇´ゞ

(2015年11月3日掲載)


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