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牛丼小論

 いやはや、夏も真っ盛り太陽も遠慮会釈なくなって参りました。夏痩せに鰻召しませ、と万葉の和歌にも(当時は『むなぎ』と言ったそうですが)謳われるバテの季節、鰻殿は割高にしても手っ取り早く景気をつけるには、やはり牛の肉なと掻き込みたいところ。まあ自家製もやりますが、ここはお外で気軽な昼食のお供など、食べてみたいところですな。吉野屋すき屋松屋、定番どころはあまたありますが、わたしはあえてその、サイドメニューとしての牛丼道。を突き詰めたいところ。

 例えば最寄りの駅の立ち食い蕎麦屋の小どんぶりで、セットについてくる牛丼。普通のご飯茶碗くらいの分量に、赤しょうが。大手チェーン店のものとは違いきしきし歯ごたえスジ肉多く、こんにゃくなど混じっていたり。そしてやたら甘辛い。ご飯が少なくてつゆだく過ぎ。しかしそれこそが、辛いつゆのざるそばなどに、合ったりするのです。

 ずるずると冷たく蕎麦をたぐり、引き締まった塩辛味を感じます。そこに熱々の甘辛牛肉とほこほこご飯をたっぷり。この組み合わせは癖になります。ここであえて牛丼は助演と言いたい。真打ち蕎麦がぴりりしゃっきりしめた座を、牛丼がまろやかに和ませて幕引く。これに冷酒は圧倒的破壊力。

 ここで牛丼は脇役ですが、圧倒的な存在感なのです。かき揚げ丼も捨てがたいですよ、でも夏の立ち食いざるそばのお供はやはり牛丼と断じたくなります。

 おっちゃんくさいと言われますが釣り堀などで出される業務用の牛丼も大好きです。玉ごと入れのか、大ぶりの玉ねぎなど煮すぎていて食べにくかったり、お蕎麦屋の牛丼と肉が違い、こちらは脂をおごりすぎていたり。しかしぬくいご飯大盛りにこれが合う!これに小瓶の冷酒などやっつけますと、堪りません。この場合冷酒が主で、牛丼が従。可憐な主演を、花も美もある味付けたっぷり助演が盛り上げる。

 サラダ(白菜漬け)、卵に味噌汁の牛丼セットも確かに美味しいです。しかしお店の片隅であえて縁の下の力持ちしてる牛丼にこそ、光あれ(`ー´ゞ-☆と言う牛丼小論でございました。

(2016年7月19日掲載)


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