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いきなり門前そば!~酒々井甚兵衛そば

好物はざるそば!と公言する橋本ちかげでしたが、基本は自宅で乾麺です。しかし昨日に霜月透子さんから頂いた割烹でこの休日は目覚めましたよ。ちょっと混雑するのを覚悟で、近くの名店へ!また久々に足を運んできました。

宗吾霊堂門前に店を構えるその名も『甚兵衛そば』。地元のそば好きなら、誰もが知ってる老舗なのですが、まあオールシーズンオールタイム、混む混む。しかも今日は宗吾様で紫陽花祭りだったので「こりゃ食えんかな」と思ったら意外や意外、席にありつけました。

このお店、また、古い蕎麦屋の風情を残していていいのです。『甚兵衛』と言うと、佐倉宗吾の脱藩を手伝った印旛沼の漁師でありますが、お店にもまた、古い舟道具が展示してあり。暖簾やら掛け軸やら調度品は100年物の年代ものなのの古いお店です。「もしや甚兵衛の!?」と思いきや店員さんに聞いても今は入れ替わっちゃってて、由緒は分からないほどなのが残念ですが。

私見ですが、古き佳き蕎麦屋さんは古民家の土間や納戸のひんやりした感じをみな、備えていますな。酒蔵ほど闇は深くないのですが、しっとりと暗く安らぐのです。焼失する前の浅草雷門の藪そばに行ったときも、同じことを感じました。

頼むのはいつも冷酒とざるそば(甚兵衛そば)です。昔のお蕎麦屋さんは「お酒はそばに合わない」と言う考え方を守っていましたのでここも、お酒を先に出して「おそばを出す」タイミングを聞いてくれます。わたしは全然かまわないので出来次第、出してくれるようにお願いします。

冷酒は佐倉あたりの地酒を出していましたが、今は新潟産になっていました。しかしこれもきっちり冷やしておりまして、何より楽しみなのはあてですな。門前名物、雑魚の佃煮と自家製蕎麦の実入りのなめ味噌を出してくれるのです。量は小さな盃ほどの小皿に、ほんのちょぴっと。しかし侮れません。この五、六尾ほどの佃煮がしっかり煮付けてあり、生姜を利かせたなめ味噌と交互に少しずつ味わうと、冷酒の一合などくいくい入ってしまいます。

お蕎麦は冷酒をグラスに二、三杯残したところで来ました。猪牙舟を模した朱塗りの膳は使い込まれて、ざるの上にお蕎麦が刻み海苔をふられてぴったり収まっています。ちなみにここのお蕎麦は、細打ちではありません。と言って田舎蕎麦ほどの太さでなく、中太。それがぴかぴか輝いているのです。はは、一人でにんまりしてしまいます。

つめは、江戸前、先にちょっとつけてそそり込むだけで、十分に楽しめます。薬味に葱と山葵は定番ですが、つゆに溶かさず、お蕎麦にちょっと添えて。で、冷酒を飲む。辛目のつゆのお陰で生貯蔵酒の華やかな甘みが膨らみます。わたしはあんまし、おそばはお酒に合わない説を信じていません。辛いつゆなら、甘めのお酒が美味しいのです。食後の蕎麦湯はお蕎麦の香り再び、一杯余計に楽しめた感じですな。

残ったお酒を干して、忙しく働くカウンターでお店のおばちゃんに一声、ご挨拶をして外へ出る。少しほろ酔いに、ひんやり空梅雨の風が心地いいです。ちょうどいいので宗吾霊堂で、満開の紫陽花の群れを見て帰ろうと思います。

『甚兵衛そば』電車でなら京成宗吾霊堂駅から多少歩きます。しかし、お参りするのでしたら、ぜひ。地元っ子が愛する門前無二の名店です。

(2015年6月28日掲載)


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