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幸せなポーションライフを  作者: 空野進
2.2.貴族の治療
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9.平穏な日々

「くっ……、レフィめ! 覚えていろよ!」


 恨み言を漏らしながらトリスは連行されていった。


「これでもう安心だね……」


 レフィはホッとしながらそれを見送っていった。

 しかし、リルはまだ安心できない様子だった。


「最後のポーション……、あれであいつの魔法は使えなくなったんだよな?」

「うん、そのはずだよ」

「それなら気のせいか……。なんだかまだ魔力を込めていた気がしたんだ……」


 リルが嫌なことを言ってくる。

 ただ、このポーションは両親にもしっかり効いていたものなのでほぼ間違いなく効くはずだ。


 少しだけ意識をトリスに向けるが抵抗する様子なくそのまま連れて行かれる。

 うん、やっぱりリルの気のせいだ。


 レフィは苦笑しながらトリスから背を向けていた。


 ◇


「レフィくん、これで助けられたのは二度目だね。ありがとう」


 貴族にお礼を言われる。


「いえ、気にしないでください。それにあの人の狙いは僕だったみたいですから」


 つまり僕がここにこなかったらまず襲われてなかったのだろう。


「いや、トリスならおそらく君がいなくても襲っていたよ。あの残忍性……、今まで気づかなかったのが恥ずかしいくらいだ」


 貴族にここまで言わせるなんて……。


「あっ、そういえばどうして僕が部屋にいるってわかったのですか?」

「あぁ、それは察知の魔道具だよ」


 貴族は手元にある小さな鈴を見せてくる。


「これはね、目に見えない何かが近づいてきたら持ち主にだけ気づかせるようになるものなんだよ。このおかげで多分君がトリスの跡をつけてきたんだろうなと判断できたんだ」


 そんなものがあったんだとレフィは少しだけ驚く。

 もしかして、今までの人たちもこれがあったら自分のことを見つけていたのかもしれないと。


「えっと、それはどこにでも売ってるようなものなのですか?」

「これかい? いやいや、これはそうそう売ってないよ。そもそも魔道具なんて高価なものだからね。レフィくんが買おうとしても買えないと思うよ」


 領主に鼻で笑われてしまう。

 でも、こんなものがあるなら姿消しポーションは更に改良しておかないといけないな。もっと……、誰にも気づかれないように……。


 そういえば以前も臭いとかで姿をバレたこともあった。

 そこも一個のポーションで対応出来るようにしておこう。


 領主の話を聞き、レフィはうんうんと頷いていた。


「そういえばあの人はこれからどうなるのですか?」

「今日のところは尋問だな。どうしてこんなことをしたのか、なぜしたのか……等を聞き出そうとしてる。しかし、明日には王都へ搬送して、そこで罪を問うて貰うことになるだろうな」


 つまり、両親とかと同じ道に進むんだろうな。


 まぁ仕方ないことだろう。


「おいっ、レフィ。明日までここにいるんだったら十分監視があるか聞いておいた方が良いぞ」

「そうだね」


 小声で聞いてくるリルに頷くとレフィは貴族に質問をする。


「すみません、さっきの人の監視ってどのくらいの人がいるのですか?」

「監視……? 常に一人はいるようにしてるが?」


 つまりその人さえなんとかすれば脱獄することは容易……。

 なんだかリルが心配してることが現実味を帯びてきたような気がする。


「すみません、その人が捕まってる場所ってどこになるのですか?」

「町外れにある牢の中だが? 一応危ない相手だから無理に近付いたら駄目だぞ」

「わかりました……」


 口ではそう言いながらも少し心配になったレフィは一度トリスの様子を見に行ってみることにした。


 ◇


 トリスが捉えられているという牢では彼はおとなしく奥の方で座っているようだった。


「大丈夫ですか?」

「はっ、今のところおとなしいものです。本当にこのものが大それたことを企てていたのか怪しいほどに……」

「それは間違いないです。おそらく魔法が使えなくなっているので、それでおとなしいだけだと思います」


 自分で言っててあれって不思議に思う。

 父の時は魔法が使えなくなったことでかなり荒れていたように思う。

 でも、トリスの場合はおとなしいものだった。


 もしかして、ここまで読めていたのか?


 首を傾げるレフィだったが、とにかくおとなしいのなら大丈夫かと監視の人にお礼を言って家に帰っていく。


 ◇


 その夜、町の中を轟音が響き渡る。


「な、何があったの!?」


 その音に驚いて目を覚ましたレフィは慌てて家を飛び出した。

 するとちょうど牢の方から煙が上っているようだった。


「リル!」

「あぁ、急ぐぞ!」


 レフィは大きくなったリルに乗るとそのまま大急ぎで牢へと向かって貰う。

 そして、牢にたどり着いて目にしたものは意識を失った監視の人と爆発によって大きな穴が開いた牢の扉があった。

 もちろん中には誰もいなかった――。


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