2.失われしの実
ユウスに連れられて幽霊城の側までやってきた。
「あれです!」
ユウスが指差した先には大木が植わっていた。
「あれっ、こんなのあったかな?」
木は周りに植わっていたのは覚えているが、ここまで大きなものはなかった気がする。
「いえ、以前はなかったのですよ。それが急に生えてきまして……」
こんな大木がすぐに生えてくるのだろうか?
不思議に思い、大木を叩いてみる。
別に変わったところはなさそうだ。
「こんなところに生えてきた大木。流石におかしい気がして、レフィさんを呼びに行ったのですよ」
「そうですか……。まぁ邪魔ならとりあえず折ってみましょうか」
レフィは爆発ポーションを作り、そのまま投げる。
「だ、ダメー!!」
「えっ!?」
ドゴォォォォン!!
突然聴こえてきた制止の声に思わず反応してしまうが、すでに投げてしまっていたポーションはそのまま爆発して、大木を根本から折ってしまう。
「あ、あぁ……」
姿が見えない声の主は悲壮な声を上げる。
ただ、折れていたはずの木はすぐにくっついてしまう。
「ど、どうして?」
流石に見たこともない光景にレフィは驚いてしまう。
「……えっ?」
見えない主も木が折れたことですすり泣いていたが、元に戻ったことで驚きを見せていた。
「足元から聞こえてくるな……」
リルから教えてもらい、レフィは足元に視線を向ける。
そこには緑色の葉っぱのような服を着込んだ小人の少年がいた。
「お前は誰だ?」
手のひらサイズのリルが凄んで見せる。
「お、俺はドライアドだ! お、お前こそ誰だ!」
「私はリル。恩人であるレフィに付き従ってる神狼だ」
なんだかこの二人が話していると和んでしまう。
ただ、ユウスは口をパクパクしていた。
「どうかしましたか?」
「ど、ドライアドと言ったら既に絶滅したと言われてる木の精霊じゃないか!?」
「んっ? たしかに俺はこの万能の木の精霊だ。でも絶滅したってどういうことだ?」
どういうことだろう?
でも、今ここに万能の木が生えているということは絶滅したのいうのはユウスの勘違いだろうか?
「お、おいっ、レフィ。この場所ってお前があのポーションをこぼしたところじゃないか?」
リルが驚きの表情を浮かべながら小声で言ってくる。
「……? 何かこぼしたかな」
レフィは記憶を遡って思い返す。
「……あっ!?」
そこでこの館の近くで蘇生ポーションを流したのを思い出した。
つまり、この場所には昔、万能の木が植わっていて、レフィのポーションで絶滅したはずの万能の木を蘇らせてしまった?
「そ、それってまずくないのかな?」
リルに合わせるように小声で話すレフィ。
「まぁ見つかると騒動になるな。絶対蘇生ポーションのことは言うなよ」
「う、うん……」
「どうしたんだい? 何か心当たりでも……」
ユウスが期待のこもった目つきで聞いてくる。しかし、レフィは首を横に振る。
「いえ、流石に絶滅したものを復活させるなんて、心当たりがあるはずないですよ……」
「そうだよね。いくらレフィさんでもすでに滅んでしまったものまでは復活できないよね……」
「そ、そうですよね……。あ、あははっ……」
レフィが乾いた笑みを浮かべる。
やっぱり蘇生ポーションが作れるなんて知られたら大変なことになりそうだった。
「それより絶滅って一体なんのことなんだ? 全然話が見えないんだけど?」
ドライアドが訳もわからずに聞いてくる。
「どうやらお前……というか、この木は既に絶滅してしまっているみたいだぞ」
リルが説明してくれる。ただ、ドライアドは信用できない様子だった。
「ぜ、絶滅なんて、今ここにこうやって生えているんだ。信じられるはずがないだろう」
「それは特殊な力によるものだ。さっきも木が爆発されていただろう? それが一瞬で直った力……。それがお前を蘇らせたんじゃないか?」
そっか……。たしかにさっき爆発させたはずの木が元に戻るのは違和感があった。
でも蘇生ポーションの効果が『一度復活させる』ではなく『対象をずっと蘇らせる』なら頷けることだった。
「た、たしかにあんな力……、見たことがない……」
ドライアドが感心したように頷いていた。
「そ、それよりこの木はなんの木なんですか? 万能の木……というみたいですけど」
普通の木にも見えるけど、ドライアドが宿っているところを見るとかなり特別な木のようだ。
でも、それ以上のことはわからない。
「万能の木は成った実を食べるとどんな病気でも治ると言われているぞ」
「あれは嘘だ」
あっさり嘘だと言われてユウスは口をぽっかり開ける。
「だいたい考えてみたらすぐにわかるだろう? 食っただけ、飲んだだけ、で簡単に病気が治るはずない事くらい」
「えっと……、ポーションは除かれるよね?」
「ポーション? あぁ、まぁあれは除いていいな。一応軽い傷は治せる訳だもんな」
なんだか、弱いから除かれると言われた気がする。
「それであの実はどんな効果があるの?」
「食うと美味いらしい」
「……えっと、それだけ?」
「あぁ、それだけだ」
ドライアドは自信たっぷりに言ってきた。




