44.聖女と御使い
部屋に戻ってくるとルルカにお礼を言う。
「ありがとう、おかげでなんとかなりそうだよ」
あとは時期だけかな。
「それじゃあルルカは元の姿に戻るね。あと今日は誰も入ってこなかったよ」
ルルカに効果消しポーションを渡すとレフィ自身も飲み干す。
「このあとはどうしたらいいかな?」
「あとは、僕の方で動いてみるからリルと二人で待っててくれる?」
「うん、わかった」
窓の外からルルカが出て行く。
◇
翌日、部屋でのんびり過ごしていると扉がノックされる。
「レフィ様、よろしいでしょうか?」
「よろしくないです」
「そんなことを言わずに聞いてください。どうやら神の御使いと呼ばれる方が見つかったようです。それをぜひご覧になっていただきたいのですが?」
(えっと、神の御使いも僕が言われていたことなんだけど……。もしかして、偽物が?)
相手が少し気になったレフィは頷いていた。
「わかりました。一緒に行かせていただきます」
「ありがとうございます。ではこちらにどうぞ」
神官に案内されてレフィは部屋を出て行く。
そして、やってきたのは昨日教祖が祈っていた部屋だった。
「よくぞお越しくださいました、レフィ様。(……私の要請には答えて下さらなかったのに)」
部屋の中にいた教祖が話してくる。ただ一瞬顔が強張ったのをレフィは見逃さなかった。
「あ、あははっ……」
乾いた笑みを浮かべることしかできないレフィは教祖の隣にいた男に視線を向ける。
ヘラヘラと微笑みかけてくる軽薄そうな男が手を差し出してくる。
「やぁ、僕が神の御使いと呼ばれてるミシェル・クリューエルだ。よろしく頼むよ」
「えっと……、レフィです。その……、ミシェルさんは何をして神の御使いと呼ばれるようになったのですか?」
「何をしても何も、俺が俺だから神の御使いと呼ばれてるんだぞ」
訳がわからない……。いや、本当に神様と交信できるような能力を持っているのかも……。
それなら何もしなくてもそう言われてもおかしくない。
(むしろ僕がそう呼ばれてることの方が違和感がある。だって、村や町で依頼をこなしただけだからね)
「ミシェルさんってどんなスキルを持たれてるのですか?」
「俺かい? 俺は火魔法だ! こう見えてレベル4もあるんだぞ」
……。
どうやら神と交信できるわけでもなさそうだった。
流石に不安に思ったレフィは隣にいる神官に小声で確認する。
「あの人って本当に神の御使いなんですか?」
「それは間違いないはず……なんですよ。教祖様が連れてこられたお方ですから……」
レフィが教祖の方を向くと彼はにっこり微笑んでいた。
「このものは近くの村でドラゴンを討伐したり、悪政を引いていた領主を懲らしめたりしたものだ!」
「えっ、そうなのか!?」
ミシェルが一番驚いていたが、すぐに冷静になり、手で顎を弄びながら言ってくる。
「たしかにそんなこともあった気がするな。数多くの村や町を救いすぎててわからないな」
当然のように答えてくるミシェル。
その様子にレフィは思わず苦笑をしてしまう。
「見ての通り、神の御使い様は流れるように人助けをしてるんですよ。これからは我が国で頑張ってくれたまえ」
「任せてくれ」
「では、早速二人のお披露目の準備をしておこう。準備ができたら呼ばせてもらう。多少時間がかかると思うので、それまではのんびりくつろいでくれ」
それから再びレフィは部屋へと連れて行かれた。
◇
部屋に戻ってくると早速透明化ポーションを飲み、部屋の外に出る。
廊下を進んでいくと前は誰もいなかった所に兵士が見張りについていた。
おそらくさっきのミシェルがいるのだろうと壁を通り抜けて中に入ってみる。
「な、なぜこんなことになってしまったんだ!?」
ミシェルは部屋の中で頭を抱えていた。
「第一、村を救ったとかなんだそれ。初めて聞いたぞ! それに俺自身は『神から与えられた力』としか言ってないのだが、どうしてそれが神の御使いということになったんだ……。そもそも、こんなことをして神罰が下るんじゃないだろうか……」
顔を青ざめている様子のミシェル。
ついつい褒められて、調子に乗ってしまったんだろうな。
でも、教祖もそのことを知らないはずはない。
多分気づいているんだろうなと思いながら、部屋を出て行く。
そして、次に教祖の部屋へやってくると、中から口論してる声が聞こえる。
「どうしてあんな男を神の御使いに選んだのですか!!」
「それをいうなら神官長が連れてきたレフィという子も性別的に聖女とは言えないですよね」
「ぐっ……」
言い争っているのは教祖と神官長のようだ。
「別にそれらしい力があれば誰でも良かったのですよ。それはあなたも同じでしょう? 昔に神の教えを伝えた御使い様と神の願いを叶えた聖女様。再びこの国にその二人がいるとなれば神を崇拝してるものは我が国も崇拝するはずですから」
「そ、それはそうだが……」
「そもそもこの世界に神罰なんてないのですから……」
教祖が笑い声をあげる。




