43.聖教国の謎
部屋の一室に連れてこられると扉の鍵を閉められてしまう。
部屋の中にはテーブルやベッド、タンスや化粧台といった生活に必要なものは全て置かれていた。
そして、窓の外からは町並みを眺めることができる。
いざとなればここから逃げることもできるかな。
ただ、今はこの聖教国についてもう少し調べておきたい。
そのためには……やっぱりルルカが来てくれるのを待つしかないかな。
しばらくベッドに腰掛けて待っていると窓の外から声が聞こえる。
「お兄ちゃん、来たよ」
姿は見えないものの声だけが聞こえる。
「よくこの場所がわかったね」
「色んなところを探したよ。部屋に入って大丈夫かな?」
「うん、今なら大丈夫だよ。でも、静かにね」
「よいしょっ……」
部屋に入ってきたルルカはようやく実体の姿に戻る。
「よかったよ。ルルカがさっきの視線に気がついて……」
「それで、ルルカは何をしたらいいかな?」
「ルルカは僕の代わりにこの部屋にいてくれるだけでいいよ。僕はしばらくこの神殿を見て回りたいから……」
「でも、人が来たらバレてしまうよ」
「うん、だからね。このポーションで僕になりすましてくれたらいいから……」
ルルカに変化ポーションを渡す。
「これを飲んで僕に変身してくれたらいいよ」
「うん、わかったよ」
早速ルルカがポーションを飲んでくれる。
するとポンっという音とともに白い煙に覆われて、それが晴れてくるとそこにはいつもと変わらないルルカの姿があった。
「あれっ?」
ポーションを飲んだはずなのになんで姿が変わってないんだろう?
首をかしげるレフィ。
「これでいいの?」
「うーん、おかしいなぁ。本当ならこれで僕の姿になるはずなのに……」
「どんな姿になったの?」
化粧台の方へ向かっていくルルカ。
そこの鏡に映し出されていたのはレフィの姿だった。
「ちゃんとお兄ちゃんになってるよ?」
「あれっ、本当だ……」
(つまり僕たちだけには変化前の姿が見えるのか。あれっ、ということは僕の性転換のやつも?)
同じようにレフィも鏡を覗き込む。
するとそこにはレフィの面影がある少女の姿が映し出されていた。
「やっぱり……」
(つまり、あのとき飲んだ性転換のポーションは他の人には少女に見えるポーションだったんだ。しかも僕たちにはそのままの姿で見えるし、実際の姿はそのまま……。なんでこんな効果なんだろう?)
改めてポーションを作った時を思い返してみる。
(僕自身はすごく嫌がってたね、そういえば……。だから、他人からは少女に見えるポーションが出来上がったんだろうな)
ややこしいなとレフィは苦笑を浮かべる。
ただ、今のルルカの姿だとまずそうだ。
鏡に映る自分の姿をよく見て、改めて変化ポーションを作り出す。
そして、それをルルカに渡すとレフィは透明化のポーションを飲んで、壁を通り抜けて廊下に出る。
◇
廊下に出るとレフィの部屋には神官が一人、見張りとして立っていた。
扉から出なくて正解だったね。
そう思いつつ他の部屋を見て回る。
ただ、この辺りはほかに使われている様子はなかった。
来客用の部屋……なんだろうな。
とりあえず今はさっきいた神官長とかの部屋を探したい。
いつまでルルカで誤魔化せるかもわからないからなるべく急がないと……。
それからしばらく探して周り、ようやく神官長の部屋へたどり着いた。
その部屋には神官長の他にもう一人、別の神官もいた。
「くくくっ、聖女は見つけたか。これで教祖を出し抜いたことになるな」
「教祖様も別の聖女を引き立てようとしていたみたいですもんね。ただ、そのものには断られたみたいですが……」
「あとは巷で噂になってる御使い……。かのものさえ手に入れれば……」
「神官長の地位も安泰ですね……」
「神に仕えし聖女と御使い。その二人がいるとなれば周りの国も我が聖教国を頼らざるを得ないからな」
「本当に神に仕えてるとお思いですか?」
「……まさか」
「……ですよね」
「そうでないと、このような話をしている我々こそが神罰を受けているはずであろう。しかし、一度もそんなことはない。つまり、これは神がお認めになられたこと。聖女と御使いを招き入れることこそが正義なのだ!」
高らかに声を上げる神官長。
それに合わせるように神官の男も笑みを浮かべていた。
◇
次に教祖……とかいう人にも会っておきたいなとレフィは更に神殿の中を見て回る。
すると聖女の選定をしていた奥の部屋で熱心に祈ってる人を発見する。
この人がもしかして教祖と言われる人だろうか?
「ふぅ……、神官長が聖女の資格を持っている少女を見つけたようですね。あの野心が強い男に神はつくというのですか? そんなことはないはず。毎日こうして祈りをかかさない私にこそ神は微笑むはず。聖女がダメなら次は御使い様……。なんとしても神官長に負けるわけには……」
なんだかどちらも本当に神を信仰してる風には見えないな。ただ、自分のいいように使ってるだけにしか……。
そうか、それならそこをうまく利用すれば――。




