41.聖教国
全力でリルが駆けてくれたおかげでレフィたちはあっという間にミクロマルク聖教国にたどり着いた。
白を基調とした街並みが広がっている。その一番奥には巨大な神殿があり、行き交う人々の多くはその神殿を目指して歩いているようだった。
「なんだかすごく慌ただしいね。みんな何してるんだろう?」
ルルカが不思議そうに聞いてくる。
「神殿に向かっているみたいだけど、みんな何してるんだろうね」
小走りで神殿に向かう人々。少しでも早くたどり着きたいという気持ちが見てとれる。
近くにいた人に聞いてみることにする。
「すみません、少しいいですか?」
「なんだい、あんたは! 今はそれどころじゃないよ! どきな!」
怖い顔で睨まれてしまう。そして、そのまま神殿の方へ向かっていってしまった。
「これはただ事じゃないかもしれないね。僕たちも向かってみようか?」
「あぁ、そうだな。もしかしたらレフィが呼ばれてた理由がわかるかもしれないからな」
急いで神殿に向かう人たちを追ってレフィたちも神殿へ向かっていく。
「なんだか女の人ばかりだね……」
ルルカが不思議そうに聞いてくる。
周りの人を見てみるとルルカの言った通り、女性の人しかいなかった。
「もしかして、僕は場違いかな?」
小声でリルに聞いてみる。
「……まぁいいんじゃないかな? 聖女と言われるくらいだし……」
「だから僕は聖女じゃないよ!」
ついつい大声を上げてしまう。
すると周りの女性たちが固まり、一斉にこちらに振り向いてくる。
「聖女……」
皆目を輝かせていたが、レフィの顔を見た瞬間に向き直り、再び神殿を目指して進んでいった。
「い、一体なんだったんだろう?」
困惑するレフィ。
「もしかすると今急いでいるのは聖女に関する何かがあるからだろうか?」
「それならお兄ちゃんの出番だね」
「いやいや、僕の出番なんて全くないよ! そもそも性別が違うんだし!」
「そんなことお兄ちゃんを前にしたら些細な問題だよ!」
自信たっぷりにいってくるルルカ。
「いやいや、流石に性別の差は些細な問題じゃないよ!」
「だって、お兄ちゃんならポーンってポーション作れるでしょ。それ飲んだら性が変わるやつ……」
「うん、多分作れるけど……」
「それじゃあちょっと作って飲んでみてよ」
「絶対いやだよ! 性転換のポーションなんて!」
ポーン。
いやな音が聞こえた気がするけど、それは聞かないことにする。
「お兄ちゃん、今隠したのはなに?」
「な、何でもないよ……」
ルルカからは見えないようにポーションを隠す。
「あーっ、やっぱり何か隠してるよ! 見せてよー!」
隠したポーションを見ようと必死になってレフィの後ろに回ってくるルルカ。
もちろん、見つかってしまうとどういう目にあうかわかるので、なんとかみられないようにレフィは必死に隠していた。
すると隠していたポーションを肩から飛び降りたリルが奪ってしまう。
「なんで隠してるんだ? いつものポーションだろう?」
「危険なものだよ!性別を司ってるポーションは……」
「大丈夫だよ、ちょっとだけだから。ほらっ、一口だけ、一滴でもいいから……」
グイグイとレフィの頬にポーションを押し付けられる。
「もう、そんなことをいうならルルカが飲んでよ……」
「る、ルルカは今のままでいいから……。それよりもお兄ちゃんは聖女様なんだから飲まないと!」
どういう理屈なんだろう?
レフィは少し眉をひそめる。
すると、リルが小声で言ってくる。
「でも、今回はこの国の偉い人に会わないといけないんだろう? それを考えると聖女の立場は使えるとは思わんか?」
「うっ……」
た、確かにリルの言ってる通り、聖女と認めさせられたらこの国ではなんでもできそうだ。
つまりこの国では女性でいた方が動きやすそうだ。
「あとは僕の気持ち……だけだね」
ルルカにポーションを返してもらうと飲むかどうか真剣に考える。
しかし、覚悟を決めると一気にポーションを飲み干す。
するとレフィ自身を白い煙が覆っていく。
そして、その煙が晴れるといつもと変わらないレフィの姿がそこにあった。
「あれっ? お兄ちゃん、何も変わってないよ?」
不思議そうに聞いてくるルルカ。
「えっと、もしかして、ポーションの効果が出なかったのかな?」
首をかしげるレフィ。ただ、内心では少しだけホッとしていた。
流石に今みたいな体そのものが変わるポーションは作れないのだろうか?




