21.招待状
うちにルルカが来るようになってから数日が過ぎた。
「やっほー、今日もきたよー!」
「わっ!?」
突然足元から現れるルルカにベッドで寝ていたレフィは思わず飛び起きてしまう。
「毎回、変なところから出てくるけど、もしかして驚かして楽しんでない?」
さすがにそのことをルルカに聞かずには居られなかった。
すると彼女は渋い顔を見せていた。
「そんなことないよ。ただ実体がないから、驚いてもらわないと気づかれないの……」
なるほどね……。それなら実体さえあれば今後は驚かせられないわけだ。
何か作れないかな……。実体を表すポーションとか……。
ポンッ。
あっ、出来ちゃった……。
「ルルカ、これを飲んでくれる? それで気づかれない……なんてことはなくなるから」
「うーん? わかったけど……」
半信半疑のルルカ。
ただ、飲んだ瞬間に半透明だったルルカの体に実体が宿る。
「えっ、嘘っ!? る、ルルカに体があるよ!?」
その場でぴょんぴょん跳ねる少女。喜んでくれたのなら良かったかも。
◇
幽霊であるはずのルルカは実体を持ったが、自分の意思で元の透明に戻ったりも出来るようだった。
ただ、ルルカはあの日以来、ほとんどの時間を実体で過ごしていた。
「ねぇ、ねぇ、今日はどんなことをするの?」
楽しげにテーブル席についているルルカ。
「そうだね、一応町中の溝の浄化は終わったし、そろそろ違う依頼も受けたいかな」
そんなことを相談していると、玄関を叩く音が聞こえる。
「はーい、どちら様ですか?」
「はっ、兵士のミハエルです。レフィさんにお手紙を届けに来ました」
「わかりました。今出ます」
玄関ドアを開けると敬礼した兵士がいた。
「こちらがレフィさんへのお手紙になります。国王様が参加できるようでしたら是非に……と仰ってましたので考慮してもらえると嬉しいです。では、自分は失礼します」
兵士は王城へ向かって行ってしまった。
残されたレフィは手紙を開けて中身を確認する。
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レフィ様
次の水の日に王城にて、パーティを行います。
是非あなた様にも参加していただきたく、この手紙を送らせていただきました。
よろしければ検討していただけるとありがたいです。
ミリーナ・リーゼンベルグ
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どうやらこの手紙の送り主はミリーナのようだった。
パーティか……。
「うーん、流石に僕一人だけを呼んでるわけじゃないもんね……」
他の貴族たちも来るならあまり目立ったことはしたくない。
この手紙にもよろしければ検討……と書かれているので断ろう。
そう考えていたのだが、レフィの後ろから手紙を見たルルカが目を輝かせていた。
「パーティ! ルルカ、一度も行けなかったんだ……。一度でいいから行ってみたいなぁ……」
目をウルウルと輝かせながらレフィのことを見てくる。
「うっ……」
純粋なその瞳を見ると思わず息を飲んでしまう。
(そうだ、それならルルカだけで行って貰えば……、いや、この手紙には僕の名前が書かれてるわけだから一緒に行くしかないよね)
レフィは小さくため息を吐いていた。
「わかったよ。それなら顔だけ出しに行こうか」
ただ、あまり目立たずにサッと帰ってこよう。
面倒ごとは嫌だもんね。
「ほ、本当にいいの!? ありがとー!」
ルルカが嬉しさのあまり抱きついてくる。
「とにかく、パーティは三日後みたいだから行く準備はしておかないといけないね」
流石に今の格好で行くわけにはいかない。
それなりの服を準備しておく必要があるだろう。
「それじゃあこの後、服を買いに行こうか」
「うんっ!」
◇◇◇◇◇
「そろそろ王都へたどり着くな」
馬車に揺られながらライバルドが声を上げる。
「そうですね。まずは到着次第、国王様に挨拶に行かないといけませんね」
そして、ライバルドたちは王都の入り口へとたどり着く。
そこでは身分確認のために兵士たちが一人一人確認していた。
「次! あっ、ライバルド様ですか」
「あぁ、国王様よりパーティに誘われて参上した次第だ。もちろん通してくれるな?」
「はっ、もちろんでございます。そういえば国王様がライバルド様たちがいらしたら来てくれと言ってたらしいですよ」
「……? わかった。宿に荷物を置き次第向かわせてもらおう」
国王が一体何の用だろうか?
ライバルドは不思議に思いながら王都へと入る。
すると王都特有の人が多い分、生活排水がたくさん流れ、漂ってくる臭い。
それに眉をひそめようとするが……。
「おや、あの独特の臭いがしないな」
「そうですね……」
「さすがに国王様が問題に思って改善したのか?」
疑問に思っていたライバルドに兵士が伝える。
「そちらですが、ドラゴン討伐の英雄様が改善してくれたんですよ。力も強くて優しいなんて本当に凄い方です……」
「ほう……、それは一度会ってみたいな。一体どれほどの魔法の使い手なのかを」
それほどの使い手が現れたのならこの王国も安泰だな……。
ライバルドは笑い声をあげながら真っ直ぐに宿へ向かっていった。
「えっ、あの……、その人は魔法使いではなく……」
兵士は最後の言葉を伝えようとするが、ライバルドの耳には入らなかったようだ。




