13.王都
「そういえば先程からドラゴンの気配がしないな。休んでるのだろうか?」
兵士が不思議そうに後ろを見ていた。
「その方がありがたい。今のうちに避難をさせられるからな」
「ドラゴンって、もしかしてこれのことですか?」
レフィは小さく手を上げながら伝える。
そして、ドラゴンの中で唯一持ってきた魔石を見せる。
「ま、まさか、それは本物の魔石か?」
信じられないと魔石をじっと見る兵士。
「どうして君がそれを?」
「えっと……、リルが倒しました!」
変に騒ぎを大きくするのも大変だろうと嘘をつく。
「……お前の爆発する薬のせいだろ」
レフィは苦笑を浮かべながら兵士を見る。
彼らは信じられない表情を見せてくる。
「ほ、本当にこれはドラゴンのもの……なのか? 私たちだけでは判断がつかないが……、でも、本当にこれがドラゴンのものなら……レフィ君、といったね。君、王国の兵士になるつもりはないか?」
「ないです。あっ、いえ、誘ってくれるのはありがたいですけど、僕には戦う力はないですから」
あまりにきっぱり言ってしまったから慌てて言いつくろう。
すると、兵士は少し残念そうにする。
「そうだな。確かに薬の神様が兵士なんておかしい話だもんな。でも今の話は頭の片隅にでも置いておいてくれ。いつでも最高の待遇で迎えさせてもらうからな」
◇
それから、王都に着くまで熱烈な勧誘を受け続けた。
王国の兵士のどこがいいのか、どうしてやっているのか。
ただ、その大半が「王女様が可愛いんだ」「たまにくれる労いの言葉、あれだけで頑張れる」といった王女様に関わるものだった。
その王女様と会ったことがあるらしいけど、レフィは全く身に覚えがなかった。
「とりあえず直接会ってから考えよう」
そして、夜になる頃にようやく町へとたどり着いた。
ただ、ドラゴンの騒動があり、町は閑散としていた。
「これが……王都?」
「あぁ、今は避難命令が出ているはずだからな。早速王城へ向かうが、一緒に来てもらえるか?」
王城か……。何度かは行ったことがあるけど、あまり気が乗らないなぁ。
もちろん断れるわけもなくレフィは頷くしかなかった。
「ではこちらだ。一緒についてきてくれ」
兵士に案内されてレフィは大通りをまっすぐに進んでいく。
もちろんリルは町の中に入ってからは小さくなり、レフィの肩に乗っていた。
王城は遠目から見てもその姿は見えていたのだが、近くで見るとはっきりその大きさが見て取れる。
ただ、王城内は物々しい雰囲気に包まれていた。
「こっちだ。謁見の間に向かうぞ」
◇
謁見の間に入ると中では国王と思われる初老の男と兵士がひっきりなしに話し合っていた。
「さすがに兵士長達がいないのでは相手にならないと思いますが」
「よい、市民達が逃げる時間さえ確保できればよいのじゃ」
「国王様、ただいま戻りました」
話し合いをしている中、一緒にいた兵士の人が割って入る。
すると国王は目を大きくして驚いていた。
「おぉ、兵士長。よく戻ってきてくれた。これでドラゴン相手に時間を稼げる」
「いえ、そのドラゴンですが、すでに討伐されております」
「……ということは兵士長がやったのか!? さすがは我が歴戦の勇者じゃ」
国王様は嬉しそうにその場に立ち上がる。
しかし、兵士長は首を横に振る。
「いえ、討伐したのはこのレフィという少年になります」
兵士長がレフィの背中を押す。
「兵士長、さすがに今は冗談を聞いている場合では――」
国王があきれた物言いをしてくる。
「えっと、ドラゴンの証があればいいのですけど、粉々になっちゃったのでこれくらいしかないのですが……」
レフィはドラゴンの魔石を取り出して、それを見せる。
すると国王の表情が一瞬で驚きのものに変わる。
「鑑定士!! 鑑定士はいるか!?」
「今すぐに呼んで参ります」
国王の隣にいた兵士が大慌てで部屋を飛び出していく。
そして、ローブに身を包んだ男性と二人で戻ってくる。
ローブの男性は懐から虫眼鏡のようなものを取り出すと魔石をじっくり観察していた。
「間違いないですね。これはドラゴンの魔石です」
それを聞いた瞬間に国王は再び驚きの表情を浮かべた。
「そうか、すでにドラゴンは倒されたか。それならば避難命令も撤回する。急いで知らせろ! あとはそなたじゃな」
国王はゆっくりレフィに近づいていく。
そして、肩に手を置いたときに何かに気づいたようだった。
「そなたは……どこかであったことがないか? どこじゃったか……。確かあれは貴族達を呼んでパーティを――」
「いえ、初対面です!!」
国王が思い出しそうになっていたので、きっぱりと言い切っておく。
すると、国王は煮え切らない顔ながら頷いた。
「そなたがそういうなら間違いないのだろうな。それでそなたにはお礼がしたいのだが、何がほしい?」
「えっと、それは何でも……?」
どういったものか聞かれなかったのでレフィは恐る恐る聞いてみる。
すると国王は笑顔で頷いた。
「あぁ、好きなものを言ってくれ。国を救ってくれたお礼じゃ。最高のものを準備させてもらう」




