表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミナゴロシノアイカ 〜 生きるとは殺すこと 〜 【神世界転生譚:ミッドガルズ戦記】  作者: Resetter
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/74

1.33 - 迷宮パーティ結成、ユーフィンツ亭会談【エウローン帝国 : 中街・ゼント3ヶ月】

善人回

 

 ゼントの班決めは結局、ゼント、シャルマ、エボロスの3人となった。


 その日の放課後。


「今日は僕が支払う。少し時間をくれないか? 親睦を深めたい……というか、今までろくに話したことすらないからな。」


「んん~。まぁ、俺は夜までは多少時間あるか。」


「シャルマ。イーリはいいのか?」


「ばっ!? おま、オーズ! いいんだよ、今は!」


「うん。では、店に行こう。」


 そうして中街の飲食店に移動した3人だった。




「この店でいいかな。」


 エボロスが選んだ店は、ユーフィンツ亭という"オーズ"の記憶にもある店だった。


 パスタのようなものや、サンド的なものがあり、裕福な学生の小腹を満たすのに重宝されている店だ。


 庶民的だが小洒落てもいて、現代的に表現すれば、カフェに近いものである。


「あ、ああ。」


 そんな店を前に、シャルマは少し気後れしているようだ。


「オレは構わんが、ここは他生徒が多いんじゃないか?」


 ゼントはそこが少し引っかかるようだった。


「ああ、大丈夫さ。そこは任せてくれ。」


 エボロスはニヤリと笑みを浮かべると、中に入っていった。


 ――――


「お前さん、ただの真面目くんかと思ってたが……」


「ふふふ。少しは見直したかい?」


 エボロスが店に入り店主に案内された部屋。

 そこは、個室だった。小規模な商談なら十分な造りである。


「なるほど……」


 これなら確かに人目も気にならない。ゼントも納得したようだ。


「さて。今日はもちろん奢らせてもらう。好きなものを注文してくれたまえ。」


「ううむ……。俺だけこんな贅沢して……いいのか……アイツらに悪ぃな……」


 シャルマは難しい顔をしながらメニューを睨んでいる。


「オーズ君。あ、同じ班だし、オーズ君でいいかな?」


「ああ。」


「……オーズ君は、あの召喚事故以来、すっかり大人しくなったと思って見ていたけど、話してみるとよりそう感じるな。」


「そうか。」


「オーズ君も、貴族らしく今日は接待を受けているという事で、僕に奢らせてくれ。」


「……持ち帰りでもいいか?」


「ん? お腹空いていないかい? もちろん構わないさ。好きなものを包んでもらおう。じゃ、一先ず飲み物だけ頼むとするよ。」


 そう言って、人を呼びにいくエボロス。




「お、おいオーズ、お前まさか……」


「オレに食事は必要ない。腹を空かせた奴らに持っていってやる方がいいだろう。食料はまだあるはずだが……」


「いや、すまねぇな。ありがとよ。じゃあ俺も……」


「いや、シャルマ。お前はちゃんとここで食え。招かれたという手前……」


「ああ、そうか。そうだな。」


 そんなことを小声でやり取りする2人であった。




「さ、飲み物だ。どうぞ。」


「ああ。」 「おお、ありがとよ。」


 エボロスは、商人よろしくすっかり接待モードのようだ。わざわざ飲み物まで取りに行き、手渡す有様だった。


「で、本題なんだが、オーズ君は力術が得意だったよね。」


「ああ。」


「で、シャルマ君は、噂では……」


「ああ、気付いてんだろうが、俺は力術は一切使えねぇ。だが……」


「ああ。武技の授業の凄まじさはもちろん知ってるさ。学園で右に出るものはいないってことをね。と、いうこともだけど……」


「ん?」


「少し小耳に挟んだのだけど、シャルマ君は、酒場で用心棒をしてるとか……何やら小さな組織のリーダーだとか……」


 エボロスのその言葉を聞いたシャルマは、感心したような顔をした。


「ほー。なるほどなー。エボロス。お前さんはしっかり"商人"してんだな。」


「そりゃあね。窮地から這い上がるには大事だろ?」


「ちげぇねぇ。はっはっ!」


 当然だが、シャルマは学園内で鉄鋼団の話をしたことなどはない。秘密にしているといっても過言ではないのだ。


 だが、情報の把握は生き残りの戦略には重要である。

 エボロスが熱心なのは、授業だけということでもないようだ。


 それを察したシャルマは、途端に好感を抱いたようだった。

 真面目くんと呼び、少し侮っていたような表情は、すっかり消え失せている。


「うん。問題児だとか言われていた2人だが、こうして話してみると全く問題がないね。」


「おいおい、今度はそういう戦術でくるのかぁ? はっはっ!」


「いやいや、思ったことを素直に言っただけに過ぎないよ。」


 エボロスとシャルマは和やかな雰囲気になっていた。


 しかし、ゼントは何か思うことがあったようだ。


「だが、オレは……いやオレたちは、必要であれば容赦なく殺すぞ。」


「うん? それは普通のこと……というか、そんな2人だからこそ、こんな時は最も信頼出来るとも言える。」


 淡々としたゼントの精一杯の悪ぶった言葉だったが、エボロスにしてみればその部分こそがパーティ参加への決心ですらあるのだ。どうということもないようだ。


「あー。そりゃ迷宮の怪物の話か? アレはホントに出るのかぁ?」


「うーん。おそらく演習という体裁である以上は、ある程度の安全確保はされているとは予測しているのだが……

 ()()()()()()()()()()()()()()()()のだとしたら、いるのはいると思う。出るかは分からないが、ね。」


「まぁ、あの迷宮、未解明らしいからなぁ。ミドガルズオルムみたいなもんか。」


「そういうことだね。まぁ、そんな場所だ。危険はあるだろう。だが、僕は必ず生きて帰らなくてはいけないんだ。よろしく頼む。」


「はっはっ! 俺もまだまだ死ぬわけにゃいかねーからよ! ああ、でもついでに宝探しはしねぇとなぁー」


「宝探しか。それは中々夢があるな。よし、見つけたら僕が捌こう。取り分はもちろんもらうが、そこらで売るよりは儲けさせてみせるよ。」


「ほー? そりゃいいな。よっしゃ! こりゃ、"仕事の依頼"としてエボロスを護ってやらねぇとだな! はっはっ!」


「そうだね。遠征が上手くいったら、今後ともよろしく頼むよ。」


「おお!」


  (仕事か。鉄鋼団にとっての新しい依頼元……取引先となるかもしれないということだな。そうか。)


「あ、そうだ。オーズ君。」


「ん?」


「オーネス君は大丈夫なのかい? 何やら凄い目で見ていたが……」


  (オーネスか。ずいぶんと"オーズ"に執着しているようだからな。少し邪魔ではあるな……。

 だが、迷宮がどんな所かによるが……ゲーム的にモンスターのようなものがうじゃうじゃいるのであれば……

 オーネスも密かに消してしまえるが……あくまで学生の演習のようだしな。そんなことはありえないだろう。

 どうするべきか……)


 ゼントは考え込んでしまった。


「何があったのかは知らないが、人間関係で揉めると色々と面倒なことになる事が多いからね。注意した方がいいよ。」


「ああ。そうだな。」


 ゼントは、人間関係で揉めたことは前世ではなかった。それは無抵抗のまま散々搾取されてきたからだ。


 今世では、理不尽に搾取されないために、自由に生きようと思っているのだ。


 現にその障害になるものは、今世のゼントは容赦なく排除してきていた。


 だが、学園生に手を出したことは今のところない。大きな問題に発展する恐れがあるからだ。


  (今はまだ、その時ではないのかもしれないな……)


 それはそれで、あまり望む結果にならないと思うゼントなのであった。


「うっし! じゃあ気合い入れていくか!」


「ああ、頼むよ。」


 シャルマは、そう言って上機嫌でジョッキを飲み干した。

お読みいただけまして、ありがとうございました!

今回のお話はいかがでしたか?


並行連載作品がある都合上、不定期連載となっている現状です。ぜひページ左上にございますブックマーク機能をご活用ください!


また、連載のモチベーション維持向上に直結いたしますので、すぐ下にあります☆☆☆☆☆や、リアクションもお願いいたします!


ご意見ご要望もお待ちしておりますので、お気軽にご感想コメントをいただけますと幸いです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ