表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミナゴロシノアイカ 〜 生きるとは殺すこと 〜 【神世界転生譚:ミッドガルズ戦記】  作者: Resetter
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/74

2.13 - チカーム教国に落ちる影 【チカーム教国:聖良3ヶ月】

チカーム回

 

 大聖堂の一室。

 アナスタシアの事務室。


 その日は珍しくザワザワとしていた。


「ねぇ、聞きました?」


「あ、あのお話ですか?」


「あら、貴女もご存知?」


「ええ、今話題……と言えば……」


「ローザ隊長にいい人が出来たって……」


「それじゃないわよ! 聖皇暗殺未遂事件よ!」


「あ、そちらですか。……正直それはあまり口にしたくありませんね。おぞましい……。」


「あ、貴女も知っているのね。シルバ様の事。」


「それは騎士様があれだけ……」


 聖女候補たちは、事務室内の掃除をしながら噂話に熱中しているようだった。


 ――パンパン!


「貴女たち。聖女候補ともあろうものが、あまり品のない噂話ばかりしていてはいけませんよ?」


「メ……メリダ様……も、申し訳ございません。」

「申し訳ございません……。」


 見かねたメリダが止めに入る。


 そして振り返り、候補たちに背を向けると、ふうっと大きく息を吐くメリダだった。


「メリダ……苦労を掛けるわね……」


「アナスタシア様……。アナスタシア様こそ、顔色が……」


「ふふ……。今の状況ではどうしようもないわね。」


 今にも倒れそうな暗い顔で、言葉を紡ぐアナスタシア。


「ふぅ……。信仰とは、何なのかしらね……。唯一神ソラーネ様のご意志、聖杯すら……私たち候補は触れる事すら出来ない……。」


「……アナスタシア様!」


 ハッとするアナスタシア。


「ごめんなさいね、メリダ。私がこんな場所で言うことではないわね……。」


「アナスタシア様、少し歩きましょうか。」


 メリダは、精一杯優しく微笑んだ。


「……そうね。」


 アナスタシアはそれに同調した。どうやら少し気晴らしに出かけるようだ。


 聖良の聖皇就任以来、アナスタシアの派閥に課せられた業務は、彼女たちを確実に疲弊させていた。


 ――――

 ――


  チカーム教国の聖都は、大聖堂の周囲のみ美しい街並みとなってはいるが、大聖堂から10分も歩けば途端に質素な風景に早変わりする。


 それは、チカーム教の方針が寄与する結果である。


 庶民は、お布施という名の高額な納税を余儀なくされるのだ。喜捨などと呼ばれている。


「よう、聞いたか? なんでも森に6人分の惨殺死体が散らばってたらしいぜ?」


 それはそんな街の一角にある、安酒場での会話である。


「あー、聞いたぜ。ずいぶん食い荒らされてたらしいが、首と胴がスッパリのやつもあったらしいから、斬り殺されたんじゃねぇかってよ。」


「おお、それよ。んな事出来るって、相手は騎士様か? って話題になっててよう。」


「騎士様って言やあ、こないだのバストス攻めで、だいぶ減っちまったんだろ?」


「あー、そうだなぁ。兵募集の貼り紙出てたし……」


「んな、斬り合ってるヒマあるかねえ?」


「うーん……。でもよう、その斬られた方の6人は誰だったんだろうな?」


「さぁなー。あ! 知ってるか? 聖皇様ってよ、儀式で奇跡の復活を遂げたらしいんだが……」


「おー、知ってるよ! 刺されたけど、一瞬で治っちまったんだろ?」


「ああ、それはそうなんだがな……。」


「なんだよ?」


「その、犯人死んだらしいけどよ、あんな大聖堂の、俺ら民には入れねぇような場所によ、ひとりコソッと侵入出来るかぁ? って話よ」


「……んん? どういう事だ?」


「つまりだな……? 組織立ったやつらが、ひっそりと……」


「おい、貴様、中々面白い話をしているな。」


「へ……?」


 安酒場で盛り上がっていた男たちに乱入したのは、赤毛の女騎士だった。


「いや、咎めるつもりはないのだ。私も話に入れてもらおうと思ってな。……マスター!」


 4人掛けの丸テーブルは一応空席はあるが、男たちに許可を求めることもなく強引に席に着く女騎士。


「へい。」


「この2人に酒を。」


「……まいど。」


「へ……?」 「よ、よろしいんで?」


「ああ。意外と民草でも、鋭い目線を持つ者がいるものだと感心したのだよ。」


 赤毛の女騎士は、腕組みをしながら深く頷いた。


「お待たせしやした。」


 そして、酒場の店主が持ってきた酒を男たちに勧めた。


「ま、やってくれ。」


「「あ、ありがとうございます……」」


 気圧されながらも、男たちは酒に手を伸ばした。


「で、貴様は何を掴んでいるのだ?」


「い……いや、掴んでいるというか……予想をたっぷり含んでますがね……?」


「ああ、いいさ。聞かせろ。」


「いや、教国に恨みを持つようなやつらが、狙ってるんじゃねぇかな、と。怪しいのは、エレミヤの奴らとか……」


「旧エレミヤ王国領か……」


「一応、チカームの領土って事になって13年ですがね、いまだに抵抗してる奴らがいるらしいじゃないですか。騎士様たちも、ちょっと前までよく鎮圧に向かってましたよね?」


「ああ、そうだな。」


「なんでまぁ、1番怪しいんじゃねぇかなと。」


「エレミヤの抵抗勢力か……」


 女騎士は、腕組みをしたまま、少し瞑目し考え込んだ。


「ふむ。参考になった。礼を言う。」


 パチリとテーブルに硬貨を置き、女騎士は酒場を出て行った。


 男たちは顔を見合わせると……


「や、やばかったな……」


「あ、ああ……。ついにソラーネ様に呼ばれたんかと思ったぞ……」


「……あの騎士様は、過激ではないんだろ……」


「……ラッキーだったな。」


 安堵の表情を浮かべる2人の男たちであった。


 ――――

 ――


 女騎士は辟易としていた。


(ふう……。街は噂で溢れかえり……大聖堂までも噂で塗れている……。シルバ殿の一件が効いたな……。致命的かも知れん……。)


 大聖堂へ戻る途上、そんな事ばかりをぐるぐると考えてしまっていた。


「ねぇ……また失敗したの……?」


「……どうやらそのようだ」


(ん……?)


 大聖堂の脇の方から、男女の話す声が聞こえた。


 女騎士は、その内容が気になったのか、問い詰めに行くようだ。


 足音をなるべく立てず、それでいて迅速な動きである。


「だから……何度も言うけど、私程度ではそんな事は……」


「そんな事とは……どんな事だ? 君は、聖女候補だったな。その男は、何者だ?」


「あ……そ……そんな……ローザ隊長……」


「な……なんだと……っ!?」


 騎士団隊長格と聞き、身構える謎の男と、絶望の表情になる聖女候補。


 そしてなおも詰め寄るローザ。


「さて。何を話していたのか……聞かせてもらおうか。」

お読みいただけまして、ありがとうございました!

今回のお話はいかがでしたか?


並行連載作品がある都合上、不定期連載となっている現状です。ぜひページ左上にございますブックマーク機能をご活用ください!


また、連載のモチベーション維持向上に直結いたしますので、すぐ下にあります☆☆☆☆☆や、リアクションもお願いいたします!


ご意見ご要望もお待ちしておりますので、お気軽にご感想コメントをいただけますと幸いです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ