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ミナゴロシノアイカ 〜 生きるとは殺すこと 〜 【神世界転生譚:ミッドガルズ戦記】  作者: Resetter
本編

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1.23 - 死体漁り 【遠征のゼントとスラムの子供たち】

善人回


 エウローン帝国の国境と、旧バストス王国の国境は、当然ではあるが隣接しており、更にいえばエウローン帝都はバストスとの境からほど近かった。



 13歳のラメントや、16歳のラファの、女子供といって差し支えのない者ですら、2時間も歩けばゆうに国境を越せてしまう。


 だが、今回目指しているのは、バストスの王都の跡地である。


 時折休息を挟むなら、いくら長距離移動になれた者といえど、6時間ほどかかるのだ。



 (しかし……思っていたより、ラファもラメントも平気そうだ。それに歩くペースもずいぶん早い……。

 まぁ、森の中ではないとはいえ、女子供の速さではないな……。これがこの世界の標準なのか? 世界に満ちる神力の影響なんだろうか……?)


 いくつかの廃墟と成り果てていた村の跡地などを通り過ぎながら、ゼントはそんな事を考えていた。



 「やっぱりさぁ、さっきの村とかも何にも残ってなさそうだったねー。丸焦げだもんなー。」


 「そうですね……。これが……チカーム教の本当の姿なんですね……。」


 

 「あー、ラファはチカーム教国にいたんだもんねー。知らなかったの?」


 「はい……。恥ずかしながら、私は聖女候補として修行の毎日で……。儀式に失敗して……立場を無くして、教巡として外に出され……派閥からの援助もなく、他派から排斥されて……命からがら逃げるうちに、初めて少し目の当たりにしました……。」



 「ラファも大変だよねー。」


 「いえ……。ラメントこそ。エレミヤで……」



 「あはは! あたしはあんまり覚えてないんだよねー。小さかったからさぁー! だから、シャル兄やミト兄や鉄鋼団の皆が家族なんだよー」


 「そうですね。私なんかを平然と受け入れてくれた……あのお2人には感謝しかありません。」



 (ラファはチカーム教だったとは聞いていたが、そんな感じだったのか。派閥……か。同じ宗教を信仰する仲間であるはずなのに……。やはり人間は善でいることは損でしかないのだな。それにしても、こんなに話しながら歩けるとはな……。大したものだ。)


 ゼントは、考え込みながらも、2人のタフさに感心しているようだった。



 「そーだよねー。あの2人はやっぱりさいきょーだよねー♪」


 機嫌が良いのか、歌い出すラメント。


 「あら。ラメントはやっぱり歌が……とても上手ですね……。」


 聴き惚れるように、うっとりと……それでいて目の端を湿らせるラファ。



 「わー! ラメントねぇちゃん! もっと歌って!」

 「うたってうたってー!」


 子供たちも喜び、催促をしだした。



 「んふふー。いいよー! 今日は広場の代わりに、みんなに歌ってあげよー! わったしにまっかせなさーい!」


 「わーい!」 「やったー!」


 子供たちは大はしゃぎである。


 (やはり……ラメントの歌……声は……恐ろしく美しい……。これは一体なんなんだ? これも、神力なのだろうか?)


 ゼントは、そのラメントの歌声にまさに痺れるような感覚を味わっていた。


 

――――

――



 「あ! お城! 見えてきたねー!」


 旅のBGMかの如く、その美声をいかんなく発揮していたラメントが、バストス王都をその目に捉えたようだ。


 「おー! 城だぞ! いけー! オーズ! とばせー……」


 ――ゴッ!


 「にいちゃんナマイキ!」


 「いってぇ! 今のはいいだろー……」


 「だめ! オーズにいちゃん! オーズにいちゃんっていうの!」


 (いや……別にどうでもいいんだが……モイはアニヤの躾にうるさいようだな……。)



 「わー! はやーい!」 「きゃははは!」

 「たのしー!」 「いけいけー!」


 「あー! オーズぅー! はやいよー! くそー、まっけないぞー!」


 「あ……ラメント……」


 目的地を発見した子供たちは、ゼントを走らせると、大興奮の様子だった。


 それに触発されたラメントも駆け出した。


 取り残されたラファも、少し小走りになった。



 早朝からの移動、太陽はちょうど真上を少し過ぎた辺りだった。


 

――――

――



 「うあー。くしゃーい。」 「ねー。くさいねー。」

 「うん。でもいっぱいあるね!」 「おたからー!」


 王都城門から正面に少し進んだ辺りに、集中して死体の山が出来ている箇所があった。


 (これが戦争か……。なるほど……。

 この身体では分からないが、相当臭うらしいな。それはそうか。この辺り一帯、原形を留めていない死体と……おそらく血溜まりで出来たであろう泥濘になっている。

 中々に凄惨な光景……なんだろうな。不思議と何も感じないが……。)



 ゼントが辺りを確認していると……


 「よっし! みんなー、よく聞いてー!」


 ラメントが声を上げた。


 「「「はーい!」」」


 「ほら、これ見て! この死体は、剥いでもお金になりませーん! 普通の服だからでーす! だっかっらぁー、ほら! こっち! こーゆー鎧! 鎧を着た兵士、騎士が狙い目でーす! あと、剣とかー槍とかー、鉄の武器! わかったかなー?」


 「「「はーい!」」」


 「よーし! みんなでがんばろー!」


 「「「おー!」」」


 ラメントは、子供たちを上手く先導したようだ。



 それは、ゼントには出来ない事だ。


 「うふふ。ラメントは上手ですよね、オーズさん。」


 「ああ……。ラファは、平気なのか?」


 「平気……ではありませんが……慣れないと。私も皆さんと生きていきたいので。」


 ラファも、悲惨な目に遭ってはいるが、スラム暦自体は長くない。1年程度である。


 箱入りのような生活を送っていた聖女候補時代には、無縁の光景でしかないのだ。



 だが、彼女の瞳は強く輝いている。

 "生きたい"。純粋なその想いが、この1年余りの彼女を支えてきたのだろう。



 

 

 死体剥ぎの作業は、それなりに順調な様子だった。


 2時間程もすれば、鎧や武器で、既に1台の台車は埋め尽くされていた。中々の収穫である。


 

 子供たちは皆一様に笑顔であった。


 「わ、この剣かっこいいなー! ぼくのにしよー!」


 「あ、いーなー! くそー、おいらもいいの見つけてやるー!」


 そんな風に男の子たちは特に楽しそうだった。



 「ん? あれ? ねー! ラファねぇ!」


 「アニヤ。どうしました?」


 「なんか、この人……生きてるかも。」


 「えっ……?! ちょっと……見せてください!」


 アニヤが掘り返していた死体の山の下から、どうも息のありそうな者を見つけたようだった。

お読みいただけまして、ありがとうございました!

今回のお話はいかがでしたか?


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また、連載のモチベーション維持向上に直結いたしますので、すぐ下にあります☆☆☆☆☆や、リアクションもお願いいたします!


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