2.7 - 神聖チカーム教国 【チカーム教国 : 聖良2か月】
前回の聖良話:英雄王散る
バストス王国を滅亡に追い込んだチカーム教国。
その遠征は、聖皇騎士団が7万もの軍勢を率いて攻め入っていた。
総兵力5000でしかなかったバストス王国である。滅亡は当然の結果といえよう。
しかし、聖皇騎士団が無傷で攻めていられたのは、各町村と4都市の殲滅までで、最後の仕上げであった王都攻めにて、手痛い被害を出す事となった。
バストス王都では、騎士1000名と民10000名が死兵となって襲いかかるという凄まじい抵抗をみせたのだ。
被害としては、兵数を28000ほど失い、各部隊の隊長クラスも、ブル、ジャンロ、ロッソと3名も討ち取られてしまった。
更には、バストス王都には食料の類が残されていなかった為、帰還を余儀なくされたのだった。
そして、その帰路の約1週間に渡る道程では、攻め入る道中に蹂躙し尽くし手に入れた食料や財貨の奪い合いが始まり、更なる犠牲者を出し……
徐々に数を減らす事となった。
結局、チカーム教国に無事辿り着けたのは、出発した時の約半数となった。
――――
――
バストス王国滅亡から9日後。
チカーム教大聖堂・別棟:教栄の間にて。
帰還した各部隊長が集められ、聖皇・聖良に戦勝報告を行っていた。
教皇用の玉座に座る聖良、左右に侍るゴルドとシルバ。
そして傅く騎士たち。
参戦した者たちは、身綺麗にはしてきているが、負傷や疲労の色が濃いようだ。
「――という事でございます。」
満身創痍といった様子のベルデ。
戦で失ったのであろう右腕が、痛々しく包帯で巻かれている。
「ふーん。で、とりまバストス王国は滅んだわけね?」
報告を受けながらも、聖良はあまりピンときていないのか、あまり興味を示さない様子だ。
教皇用玉座にもたれかかったまま、脚を組み、眼下の隊長たちをジトッと見下している。
「はっ。」
「新しい教徒は連れ帰ってきた?」
聖良の次なる質問に、ビアンコが口を開く。
「そちらに関しましては……僅かとしか……」
町村殲滅戦にて捕らえた民の内、100名弱が生き残っていた。
だが、中々改宗を認めておらず、教徒とは言い難い単なる奴隷に過ぎなかった。
「そ。で、戦利品の献上は?」
「はっ。私ネロが、聖皇様に相応しい物を吟味しておりますので……。今しばらくお待ちいただけると……。」
「あれ? 昨日到着したんじゃなかったっけ? まだかかるんだ? ふーん。そ。」
聖良は、冷ややかな視線をネロに浴びせていた。
「も、申し訳ございません……。」
ネロは、それ以上言い訳をすることは止めた。
「で、隊長格、何人か死んだんだっけ?」
「はっ。ブル、ロッソ、ジャンロでございます。英雄王レオナイドの首を取ると、前線に出まして……。ブルはレオナイドに討ち取られ、ロッソはエンビストと名乗った若い騎士に、ジャンロはイーリと名乗った女騎士に討たれ……。私も援護に向かいましたが、この通り右腕を……。」
ベルデは、眉間に皺を寄せながら固く目を閉じ、絞り出すように語った。
「そっか。確か、行く前に仮で隊長させた騎士いたよね? 誰だっけ。」
だが、悔しそうに語るベルデにも、聖良はさしたる興味を示すことはなかった。
「はっ! 私、グリドでございます!」
「ああ、そうそう。グリドだ。アンタ、正式に隊長にしてあげる。」
「はっ! ありがたき幸せ! 身命を賭して!」
グリドは、仰々しいまでに傅いた。
「で、騎士の残りは? 再編でいける? 隊長の補充いる? 」
「はっ。あと1名補充していただければ。」
ブル隊、ロッソ隊、ジャンロ隊は、少ないながらも生き残りがいた。
だが、その生き残り中に隊長格が務まる者がいないとビアンコは判断し、答えた。
「ふーん。そ。ゴルドー、誰だっけ? この前活躍した新人。」
「プッチ、でございます。」
「じゃ、プッチが新しい隊長ってことで。おけ?」
「「はっ!」」
「んじゃ解散ねー。あ、ネロ、早くしてね。」
「は……はい。もちろんでございます。」
「じゃ部屋帰ろーっと。ゴルド、シルバ。」
「「はっ」」
聖良は、お気に入りのイケメン騎士を従え、退室していった。
残された隊長たちは、小さく息を吐いた。
――――
――
聖皇居室に戻った聖良。
お気に入りの寝椅子で寛いでいる。
「……加減はいかがでしょう。」
そして、アナスタシア派の聖女候補を召使いのように扱い、今はマッサージをさせていた。
「んー。ちょーっと違うかなー。アンタ下手ね。ポイントズレてるってゆーかさ。なーんかいまいちだなー。」
「も……申し訳ござい……」
「あー、もういいや。下がって。」
「は……はい。」
そそくさと退室する少女。
「はぁーあ。つまんな。」
聖良はそう呟きながら、寝椅子から立ち上がった。
そして、寝台の方へ歩き出す。
聖良の寝台は、天蓋とカーテンの付いた巨大な寝台だ。
これも聖良の要望で新たに用意させたものだ。
明らかに高級品であるというのはその意匠から一目で見て取れる。
聖良は衣服を脱ぎ捨てると、キシッと軽く音を立て、寝台に腰を下ろした。
そして妖しい笑顔を浮かべ……
「ゴルド、シルバ。」
お気に入りの2人を呼ぶ。
「「はっ」」
「アンタたちも脱いで。」
「え……いや……」
聖良の唐突な言動に、ゴルドとシルバは言葉を失った。
「ん? なに? もしかして嫌なの? それとも、意味分かってない?」
「……いえ、もちろん意味は分かっておりますし、光栄の極みでございます! ……ですが」
言い訳を始めたゴルドをジトッと見る聖良。
「聖良様は、教皇であり、聖女でございます。聖女は、神聖を保たねばなりません。乙女でなくなりますと……聖杯の力が使えなくなると聞いております……。」
シルバが横から補足を入れた。
「ええ、ですので、我々にはお応えいたしかねるのです……。」
ゴルドも俯き加減で答えた。
「はぁ? そうなの? はぁー。つまんな。」
そんな2人の言葉に、聖良は不貞腐れた顔をした。
が……
(ん? でも、処女のままならいいってことか。)
すぐにまた妖しい笑顔を浮かべた。
「まぁ、シルバの言いたいことは分かった。でも、"奉仕"は出来るでしょ?こっちに来なさいよ。」
「「はっ」」
カチャカチャと鎧を脱いでいく2人を眺めながら、聖良は満足そうに微笑んだ。
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