第98話 俺は有名な「文秋砲」をまともに受けてしまった
「悠斗さん。大変よ」
朝から電話を掛けてきたのは、今は俺の秘書代わりをしてくれている美咲さん。
あまりにいろんなことに手を出して、スケジュールがぐちゃくちゃになってしまった俺の実情を知って、秘書になってもらったのだ。
最初、美波さんがやりたいと言ってきたが、どうも身体の関係がある秘書というのはと思って断った。
美波さんは俺の運転手、兼愛人だ。
なぜか運転手は身体の関係があっても気にならないから不思議だ。
「ん? 朝からなんだ?」
「とにかく、入れて」
入れるって、それも朝から。
ぼーっとしていると、どうもエロい妄想スイッチが入ってしまうな。
そういう話は、美波さんが担当だな。
「おう、今、開けるから入ってきてくれ」
急いで入ってきた美咲さんは、一冊の雑誌を俺に突き出した。
あー、週刊誌『文秋』だな。
元々は普通の総合週刊誌だったが、今は「すごいスクープが載る雑誌」として認識されている。
人気タレントのバッキーが不倫スクープでテレビから消えたのがこの『文秋』のスクープがきっかけだったな。
最近では、「文秋砲」というスクープの名前も定着してきている。
もっとも、俺が実際に週刊誌『文秋』を真面目に見たのはこれが初めてかもしれないな。
いつもは、ネットニュースで『文秋砲』のスクープを読んでいるのにな。
「あれ? この写真。俺とみゆちゃんだな」
「そうよ。悠斗さん。あなたが『文秋砲』のターゲットになっているのよ」
なんで俺なんかがターゲットになるんだ。
俺みたいな小市民をスクープしても意味がないじゃないか。
あ、すると、みゆちゃんか。
みゆちゃんが急に人気が出てきたから、スクープされたのか。
「これはみゆちゃんがターゲットだな」
「違うわ。悠斗さんがターゲットよ」
美咲さんによると、みゆちゃんがターゲットになるのは早すぎるとのこと。
だいたい1カ月以上前からターゲットになる人はスクープを狙う人達に付け回されるらしい。
「俺か? なぜ俺なんだ」
美咲さんによると、最近の俺の大金を使う姿が写真はないけど、話としてはすべて暴露されているという。
キャバクラでは1日3千万円使うとか、ポロイデイバックの中には3億円入っているとか。
「ちょっと金額が多すぎるだろう。だいたい3億を持ち歩くにはでかいスーツケースがいるだろう」
「いいのよ。読者はそんな細かいこと気にしないから。とんでもないお金持ちが売り出し中のアイドルの卵とただれた関係だって」
「おいおい。みゆちゃんと俺は清い関係だぞ」
「知ってるわよ、悠斗さんがヘタレだってことは。みゆちゃんに手を出せるはずがないでしょ」
あれ。
なんか、美咲さんの言葉に棘があるな。
なんか、俺したっけな?
「だけど、『文秋』はそんなの気にしないわ。読者が喜ぶスクープを創り上げるだけ」
「そうなのか。困ったな」
別に俺は結婚している訳でも、恋人がいる訳でもない。
愛人はいるけど、その愛人は他の女性問題に口は出さないと宣言している。
だけど、みゆちゃんはまずいな。
大々的に売り出して、人気が出始めたとこなのに。
「そろそろ、ちゃんとマスコミ対策をしないと駄目ね。あと1時間でマスコミ対策のプロが来るわ」
マスコミ対策というとテレビで謝罪会見するというあれか。
会見の原稿を作っているプロがいるとどこかで読んだ覚えがあるぞ。
「もう文秋に載ってしまったんだから、あきらめなさい。もう悠斗は有名人の仲間入りよ」
「そ、そうなのか」
どうして、そうなるんだ。
俺はただ、あちこちで人助けをしているだけなんだが。
「お金の使い方が派手だから、注目を浴びてしまうのよ。あちこちで悠斗伝説が持ち上がっているわよ」
「そうなのか」
全然知らないうちに、俺は有名人になってしまったらしい。
これってまずいことなのか。
よくわからないことは、しっかり費用を払ってプロに任せる。
それが俺の基本方針だ。
マスコミ対策もプロ任せにして、俺は言われた通りにするだけだな。
あーあ。とうとう週刊誌ネタになってしまった。
どうするんだ……プロまかせってことね。大丈夫なのか?
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