第９６話　俺は初めて俺の実力を認識した

「すごかったわ、悠斗さん」

「そ、そうか？」

一戦を終えた後。

いわゆる、賢者タイムって奴だな。

「すごいテクニシャンなのね」

「そうか」

「こんなに気持ちよかったの初めて」

「そうか」

驚いていた。

確かに、アリサが感じているのを感じていた。

俺はまだ経験と言える相手がふたりしかいない。

それも初めての人は、そのときだけだった。

二人目は時々、身体の関係を持っている。

彼女は年下だが、エッチの経験が全く違う。

レベルが違うというのか。

いつも、リードしてもらっている感じだ。

「ほら。ただ、黙って触っているだけじゃ駄目」

「何を言ったらいいのか？」

「いろいろあるでしょ、褒めるとか」

「分かった。このボリュームたまらないな」

「うん。うれしい。もっと言って」

そんな感じだから、女性を感じさせるというのはどういうことか、良く分かっていなかった。

しかし、美波の実地指導はすごいな。

いつの間にか、俺はちゃんと女性の身体のことが分かるようになっている。

「あれ。今日はここ、感じないのか」

「駄目よ、女の身体って、いろいろと変わるのよ。触ってみて、その反応をちゃんとみないと」

「そうなのか」

「いつも最初の時の気持ちで感じるところを探りながら進むのよ」

「そうだな」

その通りやった。

すると、アリサがすごいことになってしまった。

「あんなに乱れたのは、初めて」

「そうなのか」

「アリサって、こんなに感じる女だったなんて。知らなかったわ」

「そうか」

俺もこんなに感じさせられる男だとは知らなかったぞ。

「あーあ。悠斗さんの恋人さんがうらやましいな」

「いないぞ」

「えっ。嘘」

「恋人と呼べる存在はいないぞ」

「嘘。なんで？」

なんで、なんだ？

俺にも分からない。

ただ。

恋とか愛とか。そういう気持ちがよく分かっていない気がする。

「あ。安心して。恋人の座を狙ったりしないから」

「そうなのか」

「だって、困るでしょ、悠斗さん」

「そうだな」

「だったら。お店に来たときなんか、悠斗さんに付いてここに来ちゃ駄目？」

「えっ」

それは、恋人にはならないけど、そういう関係は続けたいということか？

「そんなことをしなくても、ちゃんと指名はするぞ」

「な、なに！」

いきなり、アリサ、怒りだしてしまった。

どういうことか？

「まさか、枕営業だと思ったの？」

「あ、あ」

「そんなことしないわ、悠斗さんに」

「すまん、言い方が悪かった」

「ううん、いいの。そう思われてもしかたないわね」

そう言えば、あのドンペリを入れていたおっさん。

枕営業していたという噂があったな。

「もう、枕営業はしないわ。だって、そんなことをして勝っても幸せになれないってわかったから」

「なぜだ？」

「えっ、だって。枕営業じゃ…」

「そうじゃない。なぜ、俺とここに来たいというのか？」

「だって。気持ちいいんだもん」

なんと。

身体目当て、ということか。

本当か？

「もう一回して欲しいな」

「もちろんだ」

結局、夜までしまくって。

アリサにお店を休ませてしまった。