第91話 俺は知らない間に恨まれていた
「この数字はどういうことなのだ?」
ぴしっとスーツを着たビジネスマンが12人参加している会議室で私は小さくなっていた。
スクリーンには、グラフが表示されている。
グラフの縦軸には、登録者数と書かれてあり、過去1年の登録者の推移が一目で分かる。
それを一目見れば分かるのは、『アイなろ』の躍進だ。
スタートこそ3カ月前にすぎないのに、登録者がうなぎのぼりだ。
それに対して『よかみん』の停滞ぶりが良くわかる。
「広告予算は求めるだけ与えたのに、この結果はどういうことだ?」
『よかみん』を運営している会社の役員連中が私を責め立てる。
『よかみん』の現場は私を中心としたメンバーで構成される。
ここにいる役員たちは、マスコミ各社に所属しているお偉いさん。
金は出すが、口も出すというタイプだ。
「しかし、『アイなろ』の勢いは止まりません。このままじゃ、逆転などは期待できません」
正直ここまで差をつけられてしまうとは私も予想できなかった。
実際、世間の興味は『アイなろ』にもっていかれている。
マスコミ連合が多大な資金を投入して作ったサイト『よかみん』は全然、興味を持たれていない。
内容的には『アイなろ』を意識したつくりになっており、メジャー側へのデビューもしやすい特典があるのにも関わらずだ。
そのうえ、目玉として有名作家やメジャーアイドルのPVをコンテンツとして無料解放しているのに。
全く歯が立たないのだ。
「それで、対応策はあるのか?」
「これから検討します」
「ふざけるな!」
『よかみん』運営責任者の憂鬱は当分続きそうだ。
いろいろと大変みたいです。
あっち側も……恨まれているなぁー。




