第89話 俺はアイドル革命ステージを見守った
スクリーンには大きく文字が映し出される。
「アイドル革命」
いつの間にか、輝くピンク色が発光するアイドル衣装に身を包んだひとり。
みゆちゃんが登場している。
「「「「みゆちゃーーーん」」」」
最前列を占領しているのは、元親衛隊の面々。
宮古島からの参加だ。
「いくわよ、アイドル~ 「「「「「「「「レボリューション」」」」」」」」」
試食販売員の恰好をしたアイドル達8人は大きなエプロンを投げて、色とりどりの発光をするアイドル衣装に早変わりをした。
「女の子は誰だってアイドルになれるの~♪」
みゆちゃんをセンターに全部で3チーム9人。
チーム毎のフォーメーションがあって、さらに全体のフォーメーションがある。
なかなか複雑な振り付けだ。
「よくまぁ、あれだけ複雑なフォーメーションを短期間に覚えましたね」
「ああ。みゆちゃん達も必死で練習してきたからな」
今、ステージで彼女らが歌っているのが、「アイドルレボリューション」。
普通の女の子がアイドルに変身するって話だ。
ソングライターの一輝が考えた。
「インパクトを出すために、変身をいれましょう」
「変身?」
「伝統的なアニメのひとつ、魔法少女の世界観です」
あー、そっちか。
少女って昔から変身にあこがれているよな。
シンデレラもそのひとつだな。
「いつもはただの試食販売員だけど、レボリューションが起きるとアイドルに変身するってね」
「それなら試食を100してもらうと変身できるっていうのはどうだ?」
「あ、いいですね。そういう条件付きなのは受けますよ」
そんなノリで一輝と決めた『アイドルレボリューション』。
なかなかのできに仕上がっている。
「心のパワーが満ち溢れた時~♪」
「しかし、面白いですね。アイドル革命って考え方」
「そうだろう。実際、『アイなろ』はアイドル革命を狙っているんだぞ」
「えっ、それはどういう?」
これはまだ誰にも話していない。
俺の中だけの構想だ。
「これからのアイドルの世界は、俺たちが創るということだ」
「俺たち?」
「俺たち『アイなろ』の参加者達だ」
「そういうことですね。それは可能な気がしてきました」
そう。
いままでのアイドルの世界は大手プロダクションが握ってきた。
当然、多くのリソースを持つ大手プロダクション。
作詞作曲、振り付け、衣装、メイク、音響、ステージ関係。
アイドルに必要なリソースをほぼ独占して、アイドルを創り上げてきた大手プロダクション。
今は、ネットが発達して誰でも発信ができる時代。
アイドルの形も大きく変わってもおかしくない。
「重要なのは、それぞれのメンバーが持つ魅力を最大限に発揮させる仕組みづくりだ」
「おお、そうですね。僕もゴーストをしていた頃とは比較にならないほど、のびのびと仕事させていただいています」
「そうだろう」
『アイなろ』の一番の力は、アイドルオタク達。
彼等が何を望むのかを、うまく引っ張り出す情報システムが『アイなろ』だ。
それぞれが各種ポイントを持っていて、レベルアップができる。
作曲家は、自ら作曲した曲を公開して、アイドルに歌ってもらう。
その歌に「いいね」が押される度に作曲家もポイントが入る。
ポイントがたまると、レベルがあがって出来る行動が増える。
ただのファンだってそうだ。
最初は、ただのファンだとしても、レビューを書けばインフルエンサーになれる。
レビューが参考になったと「いいね」が押される度にポイントが入る。
もちろん、プロデューサもいるし、なかにはアイドル原案という『アイなろ』職業もある。
観る側と創る側の境目がとことんあいまいなのが『アイなろ』の特徴だ。
ちょっと前までただのファンだったのが、一気に高レベルプロデューサになる。
そんなことも可能な仕組みができている。
「アイドルだってひとなのよ。恋だってしたいの♪」
あ、みゆちゃん、かわいい。
ソロパート突入だな。
すでに深夜番組主催のオークションが始まっている。
次の正式デビューライブチケットがオークションで売られ始めた。
限定100名の少人数ライブだ。
「3万円突破!」
ずいぶんと高額になっている。
普通のライブだったら3000円が限界だろうに。
みゆちゃん復活!
さて、人気も復活するのか?
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