第85話 俺は軽く募金に応じてみた
コメントでリクエストが多いので、書いてみました。
俺は朝、ウォーキングをしていた。
最近、食べるものが高級化して、体重が増えてきてしまっている。
「30歳になると急に太るぞ」
そんな風に脅されて、少しは気にするようになったのだ。
まずは運動をしないといけないな。
どこへ行くにも美波のランボルギーニかタクシーが当たり前になって、歩くことすら減ってしまった。
昔なら平気で2駅くらい歩いたものだったのに。
もっとも、あの頃は電車賃をケチって歩いただけだ。
ダイエットのためにウォーキングをするようになるとはな。
どうせ歩くなら負荷をかけたほうがいいかなと、背中には1億円入りのデイバックを背負っている。
「高校へ進学できない子供のために募金お願いします」
駅の近くになったら、高校生らしいむっさい男とかわいい女の子が募金活動をしていた。
かわいい女の子の方はその気があればアイドルになれるんじゃないかと思うくらいかわいい。
「あ、少額でいいので募金お願いできないでしょうか?」
かわいい女の子にお願いされたら、スルーできないな。
あっちの男ならスルーしたところだからな。
「細かいのはないな」
「あ、大きいのも歓迎です」
にっこり笑ってくれた。
だけど、問題がある。
「その募金箱には入りそうもないな」
「えっ、そうなんですか?」
「もっと大きな箱はないのかな」
「大きな箱ですか? えっと」
きょろきょろと見まわして、チラシの入った箱を見つける。
チラシを隣の箱に移して空箱にした。
「はい。大きな箱を用意しました。よろしくお願いします」
「そうか」
俺はデイバックを背中から下して、手前に置いた。
デイバックから1千万円の束をひとつ、女の子が持つ箱に入れてあげた。
「えええっーーー」
おお。相当びっくりしているな。
俺はこういう反応が好きだ。
それもかわいい女の子のは特にな。
「どうした? 足りないのか?」
「ま、まさか! ありがとうとうございます。でも、本当にもらっていいんですか?」
「あげたんじゃないぞ。 募金だぞ」
「もちろんです。足長募金にありがとうございました」
ふかぶかと頭をさげてくれた。
「あ。そんなに頭を下げなくてもいいよ」
「そうですか。でも、そんなに募金してもらえるなんて」
「もっと欲しいか?」
「もっとって。もしかしたら、もっともらえるんですか?」
「だからあげるんじゃなくて募金だ」
今度は1千万円の札束を3つほど募金用の空箱に入れてあげた。
「うわぁ。全部で4つも。これってひとつで1千万円くらいありますよね」
「ああ、1千万円ちょうどの束だ。もっと欲しいか?」
「いいんですか。もっと欲しいです」
俺は残り全部を入れようかと思ったが、何かで使うかもしれないから1つを残して、5つの1千万円の束を入れた。
「ありがとうございます」
「もう、おしまいだ」
「本当にありがとうございます」
すっごくいい笑顔だ。
今日は朝から良いことをしたな。
俺は軽くなったデイバックを背負い直して、駅前を走り去った。
主人公にとって1億円は10㎏のウエイトらしい。笑
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