第80話 俺はオーディションで衝撃を受けた
SheShockガールの新メンバーオーディション。
最初は軽く告知して実施するつもりだった。
しかし、翔に今、「アイなろ」が置かれている状況を聞いたことから、もっと大々的にすることにした。
「告知は『アイなろ』だけでなくて、フェイスブックやユーチューブ広告をバンバン出そう」
「予算はどのくらいですか?」
「アイなろ」開発リーダーの誠人に俺は考えを話している。
「8千万円だ」
「なんですかそれ?」
ユーチューブ広告は1回10円程度。
何度も見る人がいるから、8千万円でなら、ほとんどの人に広告を見せることができるだろう。
「もちろん、ユーチューバー仲間も動員してくれ」
「いいですね。連中、お祭り大好きだから」
新生SheShockガールのイメージを作る。
「しかし、映像化するなら今のメンバーだけだと地味ですね」
「そうだな、人気あるグループを使えないか?」
「予算があるならできるはずですよ」
「野麦峠42はどうだ?」
都市名グループのライバルグループとして生まれた、峠道グループ。
今や、都市名グループを超える人気になっている。
その峠道グループのトップを走るのが野麦峠42だ。
「うわ、すごいことになりますね」
「脚本を考えてもらえ」
「分かりました」
☆ ☆ ☆
予算たっぷりのオーディション告知のおかけで、書類応募人数は3千人を超えた。
その中から100人弱に絞り、第1回オーディションは始まった。
「私は新生SheShockガールのメンバーとして、全国で笑顔を増やす活動をしたいと思っています」
「あー、もういい。次」
ひとりひとり、応募者を面接していく。
各ジャンルの専門家と誠人、俺、そして翔も審査員で参加している。
「なんか、違うんだよな」
「そうですねー。なんか普通というか」
「そう。いかにもアイドルっていうかわいい子が多いな」
「それだけじゃないけどね。いやぁーさすがアイなろのオーディションだ」
翔が笑っているのは、ときどきいる、なりきり応募者。
神と話せるという巫女はいるし、本当はスライムだと主張するゼリー状のコスプレをした女がいる。
女剣士や魔法使いは何人もいた。
「だけど、そのあたりも想定内なんだよな。もしくはぶっとびすぎてついていけない」
「そうそう。あの宇宙人は笑ったな。宇宙語を話しているのだろうけど、言葉が通じないのはまずいしょ」
お笑い芸人オーディションじゃないっていうの。
なんか、ぴかっと光るオーラをまとった子がいないものかな。
「悠斗さん。ちょっとハードル上げすぎてないですか?」
「そうかな」
「それなりにいい娘もいますよ、たとえば45番とか」
たしかに45番は悪くない。
まだ育ち切っていない美少女という感じだ。
磨けば光る感がいいな。
「うーん、たしかに悪くない。だけど、見た瞬間、衝撃が走らないんだよ」
「あー、なんかわかります」
告知を予算かけてしたことによって多く人が参加してくれた。
だけど、その分、想定内の人が多くなった気がする。
「あと何人だ」
「次が最後です」
「そうか。期待できないな」
「そうですか? 最後のはすごいのをもってきていますよ」
誠人がなにから、いたずらっ子のような顔をしている。
書類選考は、誠人達、元親衛隊の連中がした。
だから、誠人は最後がどんな娘か知っているはずだ。
「それでは97番の方、入ってください」
俺にとって、彼女が衝撃だった。She Shock!
彼女こそ、本当にSheShockガールに欲しかった存在。
みゆちゃんがそこにいたのだ。
祝! メインヒロインの帰還!!
いよいよ、マスコミ連合とダブルなろうのアイドル主導権を賭けた戦いのはじまりだぁ~。




