第76話 俺は「アイなろ」の危機を知った
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「正直に話しますね。今、『人気作家になろう』は存続危機の崖の上に立っています」
「それはなんでだ?」
「マスコミ連合の攻勢が始まっています」
翔の話によると、『人気作家になろう』と似たような『よかちゃん』って小説投稿サイトが出来上がっているそうだ。
そのサイトは、読むと書くの頭文字を取って、『よかちゃん』という名前らしい。
『人気作家になろう』を徹底的に分析して、お金をかけまくって改良したサイトだ。
そのバックにいるのが、三大少年漫画雑誌を出している出版社。
最近の漫画原作に「なろう」小説が使われだしたことで、出版社も注目しはじめたらしい。
「確かにな。少年ステップからアニメ化して、映画化している『なろうアニメ映画』は人気だからな」
「アニメの流れは、少年雑誌を出している三大出版社がコントロールしてきたんです」
「それは言えるな」
「それを崩されて、対抗するために『よかちゃん』を作ったんです」
うーん。
そういう、大手が邪魔をする話は嫌だな。
「このままいくと、小説投稿サイトが大手出版社の手に落ちるんです」
「それは困ったことだな」
「だから、対抗策が必要なんです」
「それはいい方法があるのか?」
すると、翔が俺のことをじぃーと見つめてきた。
あ、あ。
俺は女の子が好きだ。
俺は巨乳も大好きだ。
ふう、大丈夫だ。
「『アイなろ』です」
なんで、そこに『アイなろ』が出てくるんだ?
サイトの作りは似ているが、ジャンル違いだろう。
「最初、『アイなろ』を見た時、『人気作家になろう』のパクりサイトだと思いました」
ドキっ。
たしかに、参考にはしたぞ。
だけど、パクるとこまではしていないはずだ。
「シンプルな作りのうちは、そのうち消えるだろうと思っていました。ところが機能を載せるスピードが半端ない」
確かに俺もそれは感じている。
宮古島のチームが優秀すぎるんだろう。
「ちゃんと調べさせてもらいました。そして、納得してしまいました。『アイなろ』のメインプログラマは、『なろう』サイト改修のときのメインプログラマでした」
「ええー、そうなのかっ」
「あれ? 知らなかったんですか? てっきり金を積んで引き抜いたんだろうと」
彼は親衛隊長の誠人の知り合いで、極度のアイドルオタクだと聞いている。
プログラマーとしては、とんでもない天才で、ベテランのプログラマーが3カ月かかる作業をたった3日で終わせたという伝説をもっていると。
その彼に『アイなろ』で提供できるアイドル関係の特権をバンバン提供したら、やたらといいのを作ってくれた。
もちろん、給料は言い値で払っているが。
「いや。アイドルつながりだ」
「あー、そういえば、すごいアイドルオタでした。彼は」
「だろう」
その一言で翔は納得してくれた。
別に引き抜きしたんじゃないってことを。
「それから『アイなろ』のサービスを体験するために、エンジェルとして登録したんです」
「あー、そういうことだったんだな」
「運営から裏情報として、トップエンジェルにして、『アイなろ』のドンが合コンに参加するって聞いて無理やり参加したんです」
そんな裏の話があったのか。
「それで、私が考えたのは、『なろう』と『アイなろ』の連携です。それが成功すれば、マスコミ連合に負けはしないと」
「そう来たか。しかし、大手出版社連合じゃないのか、ライバルは」
「忘れていました。すでに大手出版連合は、アイドルプロダクション大手と、マスコミ媒体を押さえている朴報道が参加しています」
「アイドルプロダクション大手というと?」
「一番大きいのがビーペックスです」
うわぁ、みゆちゃんの所属プロダクションか。
みゆちゃんは、敵側に行ってしまったのか。
参ったな。
「そして、『よかちゃん』を『よかみん』に進化させていると裏情報が流れてきています」
「よかみん?」
「読む、書く、観るの頭文字。漫画とアニメもサイトの中に入れたものです」
「すると、書籍化、漫画化、アニメ化、映画化、すべてサイトの中で出来てしまうということか」
「マスコミ連合だからこそ、できる技です」
たしかに今は『なろう』が人気だが、書籍化やアニメ化をちらつかされたら、人気作家も投稿サイトを移動する可能性もある。
「このまま、『なろう』人気が落ちていくのをただ待っているのは投資家としての私が許せないんです」
「それで、『アイなろ』の連携か」
「そうです。『なろう』も『アイなろ』も、一般の人たちが作り上げる文化です。マスな連中の手に渡してしまったら可能性が失われます」
熱く語る翔に、俺も熱くなってしまった。
胸がどきどきするぞ。
えっ。
俺が好きなのは女の子。
俺は巨乳も大好きだ。
ふう、大丈夫だ。
「一緒にやってくれませんか?」
手を差し出してきた。
あ、なんか、あれか。
なんとかプロポーズ大作戦とかいう番組。
やばい。
俺が好きなのは女の子。
俺は巨乳も大好きだ。
ふう、大丈夫だ。
「分かった。一緒にやっていこう」
俺と翔はがっちりと握手をした。
さぁ、出てきました。でっかい敵が。
ダブルなろうで対抗できるか!
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