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第75話 俺は「なろう」オーナーになろう、と考えた

ブクマ10582件になりました。ありがとうです。

「どうして翔が『なろう』の株式をそんなに持っているんだ?」

「『なろう』サイトは5年前、つぶれかかったんです」

「そんなことがあったのか?」

「そのときには僕は株式投資と株式投資ノウハウでひと財産稼いでいました」


翔はそんな前から大富豪をしていたのか。

どうりでアイドルを前にしても余裕があったんだな。


「当時、『なろう』は小説投稿サイトとしては3番目。アクセスは増えてきていましたが、管理費用が増して広告収入では回せなかったんです」

「それは知らなかった」


俺が「なろう」の存在を知ったのは、3年前だからな。

そのときは、NO.1小説投稿サイトになっていた。


「私のところに投資話として、『なろう』支援の話があって、それに乗りました」

「ほう」

「資金も出しましたが、いろいろとビジネスアイデアも出しました」

「どんなアイデアだ?」

「定期的にやっている『人気作家養成講座』です。あれに参加するのに一番安いコースで200万円かかるんです」

「そういえば、そんな広告出てくるな」

「えっ、それ知っているってことは、作家登録しているんですか?」


しまった。

俺の黒歴史を話してしまった。


なろうアニメのファンの俺は、その原点が「人気作家になろう」にあると知って、原作を読みまくった。

読んでいるうちに思ってしまった。


「もしかしたら、俺にも書けるかも」


思いつきで、いかにも「なろう」小説らしいファンタジー物を書いた。


たしか、タイトルに『錬金畑』と入れた小説を。


その結果は、ブクマが3。

全部で50話、毎日投稿したのに、ブクマが3。


それから俺はそれまで読まなかったエッセイを読み始めた。


そうしたら、ブクマが100未満は底辺作家と呼ばれている事実を知った。


同じ底辺作家同士で掲示板で話して、新たな小説を書き始めた。

どうすれば、人気になって底辺を脱出できるのか。


その時に書いたのが『土魔法』をタイトルに入れた作品。


今度はPVが増える方法をエッセイで勉強した上で

満を持して書いた小説。


ブクマが20。

そのうち、半分は底辺作家仲間だと分かっていた。


普通のブクマは10。

俺は底辺作家から脱することはできないと悟り、「なろう」は読専になった。


「ペンネーム教えてくれます? 悠斗さんなんですか?」


もちろん、別名だ。

ただし、黒歴史ネームだから、記憶の底から消し去りたい。


「あー、なんだ。その件は忘れてくれ」

「あー、了解しました。なかったことにします」


翔は頭の回転が速くて助かるな。

これ以上黒歴史に入り込まれると泣いて帰ってしまうところだった。


「それでは、話は戻って。そんないきさつで僕は『なろう』の株式を70%もっています」

「おう」

「そのうち、20%を『アイドルになろう』の株式20%と交換しませんか?」

「ちょっと待て。ふたつのサイトの価値が同じはずないだろう。おかしいじゃないか」


すでに大人気サイトの「なろう」と始まったばかりの「アイなろ」の株式価値が極端に違う。

そのくらい投資に疎い俺だって分かる。


「あ、勘違いしないでくださいね。サイト価値の差はお金で合わせましょう」

「どういうことだ?」

「専門家に両社の株式価値を評価させて、高い方の株の持ち主に差額を渡す。実際にはうちの方が高いから、相当額のお金をいただくことになります」

「どのくらいだと思う」

「うちの価値は100億円だと言われています。もっと詳細な価値計算は必要になりますが」


100億円の20%で20億。

そこから「アイなろ」の価値を引く。


まぁ10数億円ということか。

余裕で出せるな。


「しかし、なぜ、そこまでして『アイなろ』の株を欲しがるんだ?」

「それは、ひとつが『なろう』の守り。もうひとつが『アイなろ』の可能性をつぶさないため」

「どういうことだ?」


そこから、今、「なろう」と「アイなろ」の周辺で起きていることを翔が語り始めた。


知らないうちに俺は、エンターテイメントの大きなうねりに巻き込まれていたらしい。


この小説はフィクションです。「なろう」は「人気作家になろう」ってサイトで「小説家になろう」とは別です。

念のため。


いよいよお話は、ふたつの「なろう」サイトを中心に大きなウネリに突入しはじめました。


どこに向かうのか。


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