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第71話 俺は合コンで一番人気だと実感した

ブクマ10148件になりました。


ローファンタジー日間が3位になってしまった。さすがに20日近くも1位で居続けるのは無理があったか。

だけど、ひとつショックなことが。今、日間1位になっている小説、主人公が悠斗だって。同じじゃん。たぶん、ゆうとって読むんだと思うけどね。


「それでは第1回アイなろVIP合コンを始めます」


この合コンは司会のお姉さんがいる。

他に男が3人、女が3人。


男は俺を含めて、5000万円以上をアイドルに投資しているアークエンジェル会員。

女はアイドルランク5位以上の3人。


「あれ?」


知っている顔がいた。

異世界から転移したという設定のアイドルだ。

今日も狼の耳がピンと立っている。

ケモ耳アイドル、犬神美尾ちゃん。



「すると、美尾ちゃんもランキング上位に入っているってことかな?」

「ええ。今はおかげ様で3位なのよ」


異世界ミュージカルもスタートしたみたいだし、人気上がっているな。

それはいいことだ。


「私の株価も120ポイントまで高騰しているわ」


すごいな。俺も相当投資しているから含み益があるってことになるのか。

ちょっと驚きだな。


「何、いきなり話しているのよ。ずるいわね」

「知り合いなんだからいいでしょ」

「ハルトさん。私は友里亜。よろしくな」


俺たちの話に割り込んできたのは友里亜さん。。


セミロングの黒髪で真っ赤なメガネ。

メガネ娘ってジャンルかな。


「友里亜は現在アイドルランク4位です」


司会女性が教えてくれる。

普通に街で会えば、司会女性も美人なのだろうが、上位アイドル達の前だと霞むな。


最後の独りは着物を着ている。

腰まである黒髪が美しい。


そして、肌が驚くほど白い。

目が大きくてくりっとしている。


和風美少女ってポジションなのか。


「柚月さんです。彼女が今のアイドルランク1位です」

「初めまして、ハルトさん。柚月です」


おしとやかな感じだ。


しかし、なんで女性は俺ばかりに挨拶するのか?

なんか不自然じゃないか。


「ハルトさんはみんなご存知ね。詳細不明のアークエンジェルさん。エンジェルの断トツナンバー1ね」

「あなたが悠斗さんですね。僕は翔。マレーシアで投資家をしています」


男も俺に挨拶をするのか。

翔と名乗った男は俺よりも少し年下くらいか。


しかし、美形な男だな。

顔の掘りが深くて整っている。

ザ・ハンサムという感じだ。


どう見ても、合コンなら俺より翔が人気になるのが自然だ。

俺もブ男だとは思わないが、ハンサムとかイケメンとかは言われたことがない。


「翔は投資家か。するとエンジェルも投資活動の一部なのか?」

「いえいえ。完全に趣味です。もっとも、今は投資額より2倍くらいの含み益はありますが」

「それはすごいな」


男同士で盛り上がっていると、アイドルの女の子3人も近況報告しあって盛り上がっている。

たったひとり、取り残されている男がいる。


「最後のひとり男性は大和さんです」


司会の女性が紹介するけど、誰も興味を示さない。

いかにも、アイドルオタって感じの男だ。


分厚い黒フレームのメガネをかけて、小太り。

ここにいるってことは、お金はもっているんだろうけどな。


誰も相手しようとしないから、仕方なく司会女性が相手をしている。

俺は相変わらず翔と話している。


「しかし、ハルトさんはすごいですね。アイドル投資額5憶円くらい行っているんじゃないですか?」

「いや。投入したのは確か2億7千万円くらいのはずだ」

「それが今や、含み益で10億を超えていますよね」

「そんなにいっているのか?」

「えっ? 知らないんですか?」


アイドル投資は利益目的ではないから含み益とか興味ないしな。

だいたい、そのくらいなら1時間もあれば財布から取り出せる額だしな。


しかし、いかんな。

どうして合コンなのに、男とばっかりしゃべっているんだ。


だいたい、翔も俺なんかとしゃべるより、アイドルと話したいんじゃないか。


「ところで翔。この3人の中では誰押しなのか?」

「えっと。いないですね」

「そうなのか」

「あまり人気が高いアイドルには興味ないです」

「おいおい。じゃあ、なんでこの合コンに参加したんだ?」

「実は、ハルトさんに会うためでして」

「俺?」


なんと、こいつの目的は俺か。

もしかして、ゲイだとか? まぁ、そんなはずはないか。


同じエンジェルとしての興味だろうな。

なんだかんだ言っても、俺も翔に興味を持ってしまったしな。



俺が「もしかして、こいつゲイなのか」って顔をしていると。


「あ、違います。私も恋愛対象は女性です」


ゲイじゃない宣言をしてくれた。

俺はほっとした。


「ハルトさん。ずばり聞きますよ。『アイなろ』を作ったのはハルトさんですね」

「あー。そうともいえるのかな?」


言い出しっぺは俺。

そして、今は株式会社化していて、最大の株主は70%を持つ俺だ。


「やっぱりですね。エンジェル仲間では有名な噂です。ハルトさんがオーナーだってね」


そんな噂が出ているのか。

あまりアイドル投資をしすぎるのも問題か。


「さっきから、何? 男同士で話しているのよ」


メガネっ娘、友里亜さんが文句を言う。


「そうですわ。せっかくだから席替えしませんこと?」


着物美少女、柚月さんも同調する。


「それでは、席替えタイムです」


今は男側と女側で、対面して座っている。


司会者は誕生日席だ。


まずは6人全員が席を立って男が順番に座る。


俺がまず女側だった方の真ん中に座り、男側だった方に翔が左席、大和が右席だ。


「さて。アイドルのみなさん。僕の近くに来てください」


ひとり大和が盛り上がっている。

もちろん、アイドル達は無視している。


翔は俺が先ほど伝えたLINEidを入力中だ。

友達申請をすると言っている。


アイドル3人はくじ引きをして席を決めた。


翔と大和の間、俺の対面には美尾ちゃんが座った。


「おー、美尾ちゃん。ケモ耳、触っていい?」

「あんた失礼ね。触るんじゃないわよ」

「そんなこと言わないでよ。美尾ちゃんにも、もっと投資するからさ」

「あんたの投資なんていらないわ」


あー、大和、嫌われてやんの。

いきなりそれじゃ嫌われても仕方ないな。


「じゃあ、柚月さん。お話しましょうね」


大和は懲りずに自分の対面座った柚月さんに話しかけている。

柚月さんは嫌がらずに対応をしている。


翔は俺とのLINE友達申請が終わると横の美尾ちゃんに話しかける。


「美尾ちゃんはミュージカルの主役やってるんですよね」

「はい。悠斗さんの投資で実現したの」

「ネットで人気になっているね。なろう異世界をそのまま持ってきたようだって」

「そうなの。なかなか評判良くて。前回の舞台も満員御礼だったのよ」

「それはすごい。私も投資しておけばよかったです」

「翔さんは投資家なのよね」


アイドル投資家のエンジェル達は、プロフィールページをもっている。

そこに、自分の情報を載せることができる。


翔は投資家の仕事のことをある程度公開していて、アイドル達も知っているらしい。

それに対して俺は。


「なろうアニメとアイドルが大好きな29才、恋人募集中です」


それしか書いていないから、謎のアークエンジェルと呼ばれているらしい。


「こうして、悠斗さんと話ができるなんて。友里亜、すごく幸せ」


情報が少なくて謎が多いと、興味を引く。

それもアイドル投資額NO.1となれば特に。


別にそれを狙った訳ではないが結果的にそうなっていたらしい。


「友里亜も悠斗さんに投資してもらったらいいわ。大きな舞台で歌いたいって言ってたじゃないの」

「ん? 友里亜さんは、どんなアイドル活動しているのかな」

「普段は小さなライブハウスで歌っています。アイなろのおかげで小さいとこならチケット完売するようになりました」


彼女はアイドルと言うよりシンガーソングライターで、他のアイドルに楽曲も提供している。

歌の実力もあって、人気がぐんぐんあがっている。


「友里亜さんの作った曲はいいですよね。気持ちが入っている感じがします」


翔はいろいろと詳しいな。

アイドルのこともいろいろと調べているらしい。


「悠斗さんは友里亜さんの歌、聞いたことあるの?」

「あー、実はない。ここんとこ『アイなろ』をチェックできてなくてな」

「友里亜、寂しいわ」

「じゃあ、今、売り込んでみればいいですよ。友里亜さんの歌、私も聞いてみたいです」


翔が友里亜の歌をリクエストした。

この合コンをしている場所は、完全防音の個室だ。


大きな声を出しても周りに迷惑をかけることはない。


「私が歌ってもいいかしら」

「おお。俺も聞いてみたいぞ」


友里亜さんがもっているスマホから、部屋の設備のスピーカーに音を飛ばすようにセットをする。

そして、友里亜さんが歌いだす。


おお、こんな近くで人気アイドルが歌っているぞ。

なかなか贅沢だな。


「あなたの声が聴きたくて♪」


失恋ソングか。ずいぶんと澄んだ声だな。


「いつまでも残っているあなたの声が~♪」


これは歌唱力がすごいな。

アイドルジャンルじゃないかもしれないが。


「今はただ、あなたの写真が♪」


翔も美尾も、うっとりとした顔で聞いている。


大和は歌声を無視して、柚月さんとしきりに話している。

真面目に対応している柚月だが、意識は友里亜さんの歌に来ているようだ。


「ご清聴ありがとうございました」


大和を除いて大拍手。

大和は友里亜さんには興味がないらしいな。


「すごいな、これは。どうやったら、もっといろんな人に聞いてもらえるんだろう」

「あ、いいこと思いついちゃった。歌姫として、ミュージカルに出ない?」


美尾が誘っている。

それは、いい考えだ。


「1シーンだけ、ミュージカルに登場したらどうだ?」

「いいのかしら?」

「大丈夫よ。脚本家がすごくノリのいい人だから。頼んでみるわね」

「それだったら、その舞台。私も投資したいですね」


こっちの4人は楽しそうな盛り上がっている。

たけど、柚月さんと大和は微妙だ。


「そうだ。翔、ちょっと聞いていいか?」

「なんでしょう」

「翔はシンガポールに住んでいるんだよな」

「いえ、シンガポールではなくマレーシアです。もっとも半分は日本ですが」

「投資家とか、金持ちとか。そういう友達も多いのか?」

「ええ。いますよ」


よくわからないがお金持ちというのは、お金持ちの友達が多いはずだ。

翔はすごく感じがいい男だから、周りに友達も多いとみた。


「俺が今度主催するディナーショーに友達を誘うことはできないか?」

「もちろん、いいですよ。私が誘えばたぶん集まるはずです」

「そこで、友里亜さんに歌ってもらうというのはどうだろう」

「いいですね」


翔はノリがいいな。


「あ、私も出たい」


美尾も混ざりたがる。それはそうだろうな。


「しかし、狼娘が入ると世界観が…」

「それなら、耳は隠すわ」


耳を外すじゃなくて隠すか。狼獣人だという設定は絶対らしい。笑


「あ、私も参加したいです」


柚月さんも混ざってきた。柚月さんが出るとなると外人人気も期待できるな。


「翔の友達は外人も多いのか?」

「もちろんです。柚月さんは人気になりますね」


翔は頭の回転がいいな。全部言わずに伝わるのが気持ちがいいぞ。


「なんだ? 外人と合コンをするってか」


大和は逆に全然伝わりそうもない。こいつは除外だ。


「僕も参加させろよ。金なら出すから」

「駄目だ。な、翔」

「だいたい合コンじゃなくてディナーショーですよ」

「なんだ、つまらん。そんなの出てやるか」


だから、頼んでないって。

なんだか、合コンぽくないな。


アイドルとのイベント会議になってしまった感じがするな。

まぁ、それもいいか。


アイドル合コンは俺が思っていたのと違っていた。


それでも楽しく時間が過ぎていき、お開きになった。


アイドル合コン終わってしまった。主人公、モテモテだね。



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