第66話 俺はトライアイドルがメジャーデビューに期待する
ブクマ9833件になりました。ありがとうございました。
レビュー4つ目いただきました。この作品の著者さんです。
『こちら陽気なたんぽぽ荘 ~大家と店子の家賃戦争~』
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「それではトライアイドルの登場です」
今、俺はテレビを見ている。
『ミュージックスタジオ』という20年くらい続いている老舗音楽番組だ。
場所は麻布のタワーマンションで隣には美波がいる。
「みゆちゃん、人気でるといいわね」
「そうだな。やっとテレビに出れるようになったんだからな」
みゆちゃん達トライアイドルは、メジャーデビューを果たした。
大手プロダクションのビーペックス所属なので、新人としてテレビに出ることもできる。
さすがに俺が金があると言っても、テレビに出させるツテなどない。
ビーペックスにスカウトされたのはいいことだろう。
「ん? 3人しかいないな」
「そうね。トライアイドルは6人じゃなかった?」
「ああ。試食ステージだとチーム別に出るから3人だが」
「じゃあ、テレビもそうなのかしら」
司会者はトライアイドルの紹介をしている。
全部で3人と言った。
「どうもスカウトされたのは3人だけらしいな」
「そうなの。スカウトされなかった人たちは寂しいわね」
芸能界は実力本位の世界だ。
実力がない者がメジャーデビューしてやっていけるほど甘くないってことか。
「でも、みゆちゃんは大丈夫ね。ほら、センターで歌っているわ」
たしかにそうだ。
テレビカメラでアップになるのもみゆちゃんが一番多い。
「でも、なんだか。つまらない曲ね」
俺も同感だ。
昭和アイドルソングみたいな『恋の試食販売』と比べるといかにも今時のアイドルソングではあるのだが、特徴があまりないと言うか。
「これで売れるのかしら」
「それは、分からないな」
すでにメジャーデビューをしてしまったみゆちゃん達には俺たちが手を出すことはできない。
ビーペックスに任せて、ただ応援するだけだな。俺たちは。
「それよりもね」
「ん? なんだ?」
「私達は私達で、今、すべきことがあると思うの」
「それはなんだ?」
「バカ! 分かっているくせに」
もちろん、分かっている。
だから、すでに身体のある部分が反応してしまっている。
最近は、俺も上手くなったと美波に褒められるようになった。
手取足取り教えてくれた美波のおかげだな。
「あ、そうそう」
「なんだ?」
「もうタクシー使うのやめない?」
「タクシーをやめてどうするんだ?」
「いい車があるのよ」
美波は車のパンフレットを見せた。
ランボルギーニ社の物らしい。
「これの赤いのが欲しいの」
「俺は免許ないぞ」
「いいのよ。私が運転手するから。いつでも必要なら呼んでね」
「ランボルギーニ・アヴェンタドール・SVJロードスターか」
「かっこいいでしょ」
「カウンタックとどっちが速いんだ?」
「何いってるのよ。カウンタックは30年前に製造中止よ」
「そうだったのか」
そういえば俺が知っているカウンタックは漫画の中に出てくるだけだな。
実物は見たことすらなかった。
「アヴェンタドールは、ドアが上に跳ね上がる、なんて言ったっけ?」
「ガルウイングね」
「そう、それだ。ガルウイングなのか?」
「そうよ。だから、かっこいいの」
分かる気がするな。
あのカッコよさは。
「いいだろう。明日買いに行くか」
「本当? 嬉しい!」
「おいおい。俺の車だぞ」
「でも、運転するのは私。他の人にハンドルは握らせないわ」
まぁ、いいか。
愛人を喜ばせるのも男の役割だろうからな。
「そうだな。ついでにもう一台買うか」
「えっ、もう一台?」
「ランボルギーニと言えばライバルはポルシェだろう」
どうも俺には古い漫画のイメージしかないな。
普通の車は、プリウスが売れているらしいくらいしか知らない。
「ポルシェもいいわね」
「ポルシェ911ターボ。今でもあるのかな」
「ちょっと待ってね、調べてみる」
「頼む」
「あ、あるわ」
「ちゃんと昔と同じカエル顔か?」
「ええ。このシリーズはずっと同じだわ。カブリオレもあるわ」
「そうだった。オープンカーのカブリオレ。それにするか」
「色は?」
「もちろん白だ」
「分かったわ」
ランボルギーニとポルシェ。
この2台があれば、スポーツタイプの車はそれだけでいいな。
他に必要になったら、別の車も考えるとするか。
「2台合計でいくらくらいか」
「細かい数字は分からないけど、8千万円くらいみたい」
「では、明日。1億円のアタッシュケースをもって車屋に行くか」
「現金買いね。久しぶりね」
そういえば、最近はパラジウムカードが使いやすくて大金での現金買いは減った。
車くらいだと1億円でデイバックに入るから現金買いがしやすいかもな。
☆ ☆ ☆
「トライアイドルの株はやっぱり廃止なのか」
トライアイドルが正式にメジャーデビューになった今日。
『アイなろ』運営からのお知らせメールが届いた。
『アイなろ』スタート前からトライアイドルの試食ステージで応援してきた僕。
僕が持っているみゆちゃんの株は10株で24ポイント、合計240ポイント。
「お持ちになっている株はそのままポイント換算されて、会員様のポイントに戻ります」
そうなるのね。
「どうぞ、メジャーデビューしたアイドルも応援してあげてくださいね」
うーん、微妙だな。
あんまり応援したい気がしない。
まぁ、新しいファンがたくさん付くだろうから僕が応援するまでもないか。
「まぁ、ポイントが戻ってきたから、まだ人気があまりないアイドルに出資してあげようかな」
そう言ってランキング100位くらいのアイドルで気に入る娘を探しはじめた。
主人公はエッチスキルが3にレベルアップした。なんてね。
トライアイドルは前途多難ぽい?




