第60話 俺は『アイドルになろう』を正式にスタートさせた
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リゾートでのんびりしていると、男から電話があった。
「誠人です。アイドルになろうサイトのβ版ができました。打合せをしたいんですが」
なんと、もうできたのか。
開発費として3千万円ほど渡したのが効果があったな。
今、初めて知ったぞ。
サイト開発を頼んだけど、男の名前を忘れていた。
どうも男の名前を覚えるのが苦手だ。
誠人だ。忘れないように頭の中に入れておこう。
メモするほどのことでもないしな。
「分かった。打ち合わせをするぞ。サイト関係者を連れて宮古島に来い」
「ええっ、宮古島ですか?」
「こういうとこで、打ち合わせをするのがいいんじゃないか。どうせサイトだから、どこでも打ち合わせできるだろう」
「だけど、関係者って言ってもメインだけでも5人ほどいますよ」
「全部連れてこい。チケットはこっちで用意する」
「分かりました。いつですか?」
「明日の朝だな」
そうだな。
こっちに『アイなろ』開発チームのサテライトオフィスを作るのもいいな。
サイト開発なら、どこでもできるだろうから。
思いつきはすぐに実行だ。
チケットとオフィスの手配をパラコンシェルジュに頼むことにしよう。
☆ ☆ ☆
「これがβ版サイトです」
「どれどれ」
なんと。ちゃんと動くじゃないか。
単なるテキスト中心のサイトではなく、いろんな機能が付いたサイトだ。
よくまぁ、こんな短期間でこんな機能が付いたサイトが作れるものだ。
「すごいな。誰が作ったんだ、これ?」
「こいつです」
あ、いかにもオタでコミ障って感じのやせ男だな。
年齢は20歳くらいか。
自分の話をされているのに、視線すら動かさない。
「東大生なんですけど、学校にほとんど行ってない奴でして」
「社会性はゼロだな。こいつは」
そっぽ向いたまま、スマホをいじっている。
「あ、すみません。極度の人見知りなんです。そのうち、もうすこしちゃんと」
「いや、いいぞ、別に。こいつがこれを作ったんならな」
「そうなんです。プログラムをさせると天才なんです」
おー、天才か。それは心強いな。
「ちょっとだけ聞かせてくれ。どうやって、これを作ったんだ?」
誠人がこっちを向かせた。
スマホは手のとどかないとこに置かれた。
あ、やっとこっちも見たな。
「慣れているから簡単にできる」
「あー。僕が代わりに説明します。モジュールという考えがあるみたいで。サイトに使えるモジュールを組み合わせると、簡単にできるらしいんですよ」
「そうなのか。よくわからんが」
「ただ、高機能の自作モジュールをもっているらしくて」
よくわからないが、こいつに任せておくとなんでも、できそうだな。
「それで、僕達がアイドルに求めるものを要求として出してサイトに実装してもらいました」
「あ、内容は決めたのは誠人か」
「僕だけじゃなくて、親衛隊の主だったメンバーです」
宮古島に来た開発チームは全部で4人。
誠人と東大生プログラマとみゆちゃん親衛隊のメンバーふたり。
「ところで、このidは俺のみたいだが?」
「そうです。悠斗さんはエンジェルで登録しています」
「エンジェル? なんだ、それは」
「普通ならパトロンって言いますよね。アイドルを資金的に支援する人です」
たしかに俺はそれだな。
資金援助なら得意だ。
「まず、アイなろの口座に振り込みをしてもらいます」
「カードは使えないのか?」
「今、申請中なんで、まだ、振り込みだけです」
「では、振りこもう。振込先はこれだな」
パラジウムカードのコンシェルジュに指示を出して振り込んでもらった。
「あ、ありがとうございます。では、ちょっと入金確認を…うわ、なんですか1億円って」
「俺はエンジェルだからな。そのくらいはいるだろう」
「えっと。そこを突っ込むのはやめましょう。では、1億円なので100万ポイントになります」
「1ポイント100円なのか」
このあたりは、ちゃんとする必要があるな。
こいつらとは別に事務局がいるだろう。
「このポイントをどう使うのだ?」
「いろいろな使い方ができますが、まずはアイドルに投資が一番の基本です」
「アイドルに投資、これだな、おっ、ずいぶんと登録してあるじゃないか」
「ええ。チームと個人の両方で登録できます。現在12グループ55人が登録しています」
「どれどれ。ちゃんとみゆちゃんもいるな」
「はい。トライアイドルはみんな登録しています」
うん。面白い。
アイドルカタログみたいなものだな。
「では、この娘に投資をしよう」
ケモ耳をつけた少女。異世界から来た狼少女って、そりゃ設定だよな。
まぁ、面白いからこいつだ。
「ん? 株数を聞いているな。1株10ポイント。1000円か」
「そうです。アイドルはそれぞれ株を持っています。その株を買う形で支援をします」
「では、100株購入っと。おや。10ポイントでは買えないらしい。12ポイントになると言ってきたな」
「そうです。投資が入ると株価は上がるのでこの場合だと1200ポイントで100株投資ができます」
うーん。どういうロジックなのか知らないが、株式投資みたいな感じにもなるんだな。
「おや、優待券をゲットしたぞ。今ならランチデートが選べるな」
「はい。アイドルが提供している優待特典です」
「よし、このアイドルを宮古島に招待しよう。で優待券を使ってランチデートだ」
「あ、たぶん大丈夫です。地下アイドルだからライブがなければ、時間は自由は利くので」
なんだか、いろんな機能が入っているみたいだ。
あとは、おいおい使ってみるとするか。
「それでは、君たちは第一期開発メンバーだ。第一期開発費は1億円」
「おおっ、さっきの振込ですね」
「あれは、俺のポイント用だ、別に1億円振り込むから、理想のアイドル育成サイトを作ってくれ」
「ひええ、すごい金額ですね。それだと金銭取引が起きるので法人化をしないと」
「分かった、手配しておく」
「よろしくお願いします」
うん。
俺もアイドル育成には興味が出てきたところだ。
このサイトを使って、やってみよう。
こうして、『アイドルになろう』開発チーム宮古島オフィスがスタートした。
いよいよ、第7章『アイドルになろう』編が始まります。
人気サイトになるかな。




