第56話 俺は宮古島にアイドルを呼んだ
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「昨晩のナイトクルーズ楽しかったぁ~」
「そうか」
今朝は、朝食をプールサイドに用意してもらった。
フランスパンに野菜たっぷりとハムや卵が挟んである。
これをぐたぐた食べるのがまた、リゾートぽいんだよな。
「でも、眠いわぁ~」
「そうだな」
俺も眠い。
結局深夜2時過ぎまでどんちゃん騒ぎだからな。
満天の星空が見える海でシャンパンパーティ。
美女が6人と俺と大樹とシェフ。
大騒ぎしても、周りには誰もいないから文句は言われないし。
もっとも、大樹やシェフは飲まなかった。
仕事中だと言うんで。
海でも酔っ払い運転は駄目なのだろうな。
「さて、今日はどうする?」
「実はプランがあってな」
「どんな?」
「大樹さんの民宿を大人気にするプランさ」
昨日、バカ騒ぎをしているときに思いついてしまった。
面白そうなプラン。
「明日、試食販売をするぞ」
「なに、それ?」
「大樹さんの民宿を盛り上げるイベントだ」
「イベント?」
「トライアイドルの試食販売in宮古島だ」
トライアイドルとユーチューバー・シバは昨日のうちに連絡を入れておいた。
酔っぱらっていたから、ちゃんと伝わっているかちょっと心配していたら、朝にはメールが入っていた。
「朝、一番の飛行機で向かいます」と。
☆ ☆ ☆
「明日、宮古島で宮古そばの試食販売します! それも試食販売の衣装はなんと水着なんです」
ユーチューブにアップされたばかりの動画。
僕はそれを見てびっくりした。
その動画に映っているのは、僕が一番熱中しているアイドルグループ、トライアイドル。
そのトライアイドルが、宮古島で試食ステージをするという。
それも明日から。
僕はアフィリエータで生計を立てているから、どこでもネットが使えさえすれば仕事ができる。
こういうときこそ、この仕事環境を活かさないと駄目だな。
よし、明日の宮古島への飛行機を予約しよう!
「うん、チケットが取れた。他の親衛隊のやつらはさすがに宮古島までは追いかけて来れないな」
僕はトライアイドルが試食販売するステージは、よっぽどの用事がない限り参加した。
特にみゆちゃん。
彼女から試食品を手渡してもらうのが一番嬉しい。
「宮古島なら、さすがに参加できるファンは少ないだろう。チャンスだ」
明日、宮古島で水着姿のみゆちゃんを想像して僕は眠りについた。
☆ ☆ ☆
「しかし、昨日の今日ですよ」
「なにか、問題が?」
「いきなり、宮古そばの試食販売と言ってもお客さん来ますか?」
「まぁ、いいではないか。何人かでも来たら」
「そうですか」
「トライアイドルは4日間宮古島にいるから、その間で民宿の宣伝したらいいじゃないか」
「分かりました」
民宿の主、大樹は心配性だ。
俺がイベントをすると言っても、集客がうまくいくか、まずはそこを気にする。
まだ、付き合いが短いから仕方がないが、俺がイベントをするときに大切にしていることがある。
それは、俺が楽しいかどうか、だ。
集客ができなくて、観客がいなかったら、それはそれでいい。
俺という観客がいる。
たったひとりの観客のために、ユーチューブで人気のアイドルがステージをする。
いいじゃないか、贅沢で。
「そうよね。悠斗さんはそんなことは気にしないわよね」
美波さんはだんだんと分かってきたようだ。
俺が何をもとめているのかを。
そう、贅沢だ。
ただ思いつきで翌日イベントが開催される。
プロデューサー冥利に尽きる贅沢ではないか。
「そろそろ、トライアイドルが到着する頃だから、迎えに行こうか」
「分かりました。クルーザーを準備してきます」
クルーザーはスピードが出るから、タクシーを使うより早いからな。
そんな理由で大樹さんを操縦士にしてクルーザーでトライアイドル達を迎えに行くことにした。
本当は、トライアイドル達を驚かせたい、それが理由だがな。
「でも、悠斗さんはすごいわね」
「何がだ?」
「ちょっと知り合っただけの人に100万円の借金肩代わりをするし、クルーザーはプレゼントしてしまうし」
「クルーザーはプレゼントじゃないぞ。あくまでも俺のだ」
「だけど、使わないときは自由にしていいって大樹さんに言ってたじゃない」
「ああ。その代わり、俺が使うときは大樹さんが操縦士だ」
どうせ、いつも使うものではないしな。
有効利用をするのは、いいことだ。
大樹さんが俺たちを呼びに来た。
「クルーザーの準備ができました」
「よし、みんなを迎えに行くぞ」
クルーザー、喜んでくれるかな。




