第55話 俺はすぐにクルーザーが欲しいと伝えた
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「大樹さんは、船舶免許を持っているよな」
「はい。一級船舶免許を持っています」
よし、オッケーだ。
いまさっき3分で作った計画を実行することにした。
「それならば、俺が大樹さんを雇うことにしよう」
「えっと、どういうことですか?」
「俺のクルーザーの操縦士としてだ」
すでに俺の頭の中では、青写真ができている。
宮古島にクルーザーを持つ。
必要があれば、すぐにクルーザーが迎えにくる。
それって贅沢だろう。
しかし、ここはひとつ。
贅沢好きな美波さんの意見も聞かないと駄目だな。
「美波さん、自家用クルーザーを持つというのはどうだ」
「どうだって! 素敵すぎるわ」
よし、美女の素敵って言葉もいただきました。
俺は自家用クルーザーを持つことにしよう。
俺は電話をした。
もちろん、パラジウムカードのパーソナルコンシェルジュ。
略してパラコンシェルジュにだ。
「あー。今は宮古島にいるんだが。できるだけ早くクルーザーが欲しい」
パラコンシェルジュもさすがにびっくりしたようだ。
本来クルーザーを買うには時間がかかると言っている。
細かい仕様がどうのとか聞かれて答えられないから、知識がありそうな大樹さんに代わってもらう。
「一番いいのを頼む」
俺が出す指示はそんなものだ。
ただし、時間がかかりすぎるのパスだ。
すぐに手配できるうちの一番いいクルーザーを頼んだ。
運よく沖縄本島にちょうどいいクルーザーがあるという。
手続きその他、面倒くさいこともあるらしいが、それはパラコンシェルジュにお任せだ。
「明日の夕方には届くぞ」
「本当ですか!」
「素敵っ。じゃあ、明日、ナイトクルージングしましょう」
美波さんの頭の中には、クルーザーで楽しむ姿がイメージできているんだろう。
俺はというと、クルーザーがどんなものか、イメージはできていない。
まぁ、操縦士もいるから問題ないだろう。
俺はクルーザーに乗ってシャンパンでも飲んでいればいいのだから。
☆ ☆ ☆
翌日の夕方、まだ日が沈む1時間前にそれは到着した。
全長30フィートで約9m。
定員12名。
最新式のクルーザー。
キッチンもベッドルームもある。
風呂までついている豪華クルーザーだ。
「なんでしょう、これは」
「たった今から、俺の物になったクルーザー」
あまりに豪華なクルーザーが民宿の前の桟橋に横付けされた。
それを見た民宿の主、大樹さんが話す。
「ちょっと聞いていいですか? このクラスだと3000万円くらいはするんじゃないですか」
「なかなか良い読みだな。正しくは3200万円ちょっとだ」
大樹さん、ちょっとパニクっている。
そこに美波さんがやってきた。
「うわーーー、すごいっ。豪華クルーザー。悠斗さんのよね」
「そうだ。今、さっき、俺のものになった」
「素敵。早速、ナイトクルーズしましょう」
「そうだな。しかし、ふたりだけだと寂しくはないか」
「じゃあ、あれね。ナイトクルーズパーティね」
美波さんはスマホを取り出してどこやら電話する。
しばらく話していると。
「30分くらいでくるわ。ギャルが5人とシェフとパーティ資材一式ね」
すでに宮古島のどこかのお店に話を通したらしい。
そういうことに関してはパラコンシェルジュ以上の手配力だ。
「今夜はナイトクルーズパーティよ!」
クルーザーを手に入れた。




