第54話 俺は美女と一緒にエメラルドグリーンの海に潜った
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「噂には聞いていたけど、すごいわっ」
「えっ、何がだ?」
「だって。ポンと100万円。見たことない」
「そうか」
最近、闇金と聞くと条件反射的に人助けしてしまう。
その中でも100万円は一番安いしな。
「なんか、恰好良かったわ」
「そうかぁー」
美女の美波さんにそう言われると照れるな。
「本当にありがとうございました」
「あー、そんなに気にするな」
そうは言っても気にしているみたいだな。
「お礼と言ってはなんですが、誰も知らない、とっておきのスポットに案内しますよ」
亀の恩返しならぬ、ダイバーの恩返し。
竜宮城に連れて行ってくれるのかな。
そのスポットはボートで40分ほどのとこにあった。
「それでは行きますね」
3人とも、ウエットスーツを着込んで腰にはウエイト。
背中にはボンベを背負う。
インストラクターに教わりながら、海にエントリー。
一気にエメラルドグリーンの世界へ。
自分の呼吸音くらいしか聞こえない静寂の世界。
色とりどりのサンゴ礁には、小さな熱帯魚が逃げることなく泳いでいる。
インストラクターはキョロキョロ廻りを見まわしている。
何をしているんだろうか。
ん? 俺と美波さんに合図を送ってくる。
この手を見ろって?
その手がある方向を指さした…なんだろう。
あっ、海亀だ。
遠くだから分からなかったが、良く見ると海亀が優雅に泳いでいるじゃないか。
「行ってみましょう」
言葉では言えないのでジェスチャーで伝えてくる。
もちろん、俺と美波さんはオッケーサインを返す。
3人が近づいて来ても海亀は逃げずおっとりと泳いでいる。
えっ、背中に乗れって?
そんなことできるのかい。
ジェスチャーで示されたように後ろから近づくと、おっ乗れた。
海亀の背中に引っ付くように乗ってみると、海亀が泳いでいるのが分かる。
楽しい。
他にも大きな魚が泳いでいたり、小魚の群れが輝いていたりする。
さすがに宮古島の海は魚がたくさんいるな。
この日は場所を変えて2回、ダイビングをした。
初めてのダイビングは楽しい事がたくさんあった。
やはり、いろんなことを体験してみるというのは楽しいことだな。
☆ ☆ ☆
宮古島に戻るボートの上で大樹さんに借金の話を聞いた。
大樹さんはダイビング・インストラクターはバイトで本業は民宿をやっているらしい。
「元々、ボートがあるのがうちの民宿の売りだったんです」
彼の民宿は、親から受け継いだもの。
大きな儲けは出ていないが生活するくらいは利益が出ていた。
民宿にはボートがあって、そのボートでダイビングをするのが人気だった。
しかし、去年の夏。大きな台風が来て民宿のボートが破壊されてしまった。
民宿も被害を受けて、その修繕代がかさみ、ボートを新たに買う資金がなかった。
その結果、ダイビング目的で来てくれていた常連客が来なくなり、民宿は赤字。
運転資金を借りていた銀行にも見放され、親の代から続く民宿を守るために闇金から借金もしてしまった。
その結果が今の状況だそうだ。
はっきり言って、民宿を続けていくのが難しい。
「それならボートがあれば、うまくいくのか?」
「もちろん、そうです」
「なら買えばいいじゃないか」
「無理です。ダイビングに使えるボートは高いんです。赤字続きのうちでは買えるものじゃありません」
これは良いチャンスかも知れない。
前から、調べていたものがある。
あれを買うのにちょうどいいだろう。
そう、海の贅沢品、クルーザーだ。
美女ではなく亀と戯れた。乙姫さまは現れなかった。
クルーザーは高そう。と贅沢の予感にわくわくしたらしい。




