第51話 俺はマウンティングには興味がない
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超強力な土魔法使いの実力。土建チートで巨大建造物を造って世界を変えてしまっています。
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まずは美波さんを残して俺だけがロビーに行ってみることにした。
「どうしたのだ?」
「あ! なんでもありません。お騒がせしてすいません」
ロビーのホテルマンが謝る。
だけど、問題の根本である男は偉そうに言う。
「はっ? 何を言っちゃっているのかな? 騒いでいるんじゃないぞ。正当な要求だ」
「ほう。正当な要求なのか。何を要求しているんだ?」
困ったボンボンは俺の方に向き合った。
「このフロントマンが駄目な奴でな。部屋を用意しろと、これを出しているのに分からないのだ」
真っ黒なカード。
アメックスのブラックカードか。
確か限度額は1億円程度らしい。
俺のプライベートバンカーが教えてくれた。
あのカードを持つ程度の人はプライベートバンカーの客のレベルじゃないとも言ってたな。
「おや。変わった色のカードだな。俺のと違うな」
俺もパラジウムカードを出してみた。
「プラチナカードか。なかなかいいカードを持っているじゃないか。俺のほどではないがな」
あ、こいつ。パラジウムカードは見たことないらしい、つまらんな。
このカードの欠点は高級店のスタッフくらいしか価値を理解してもらえないことだな。
「俺は一番いい部屋に泊まっているんだが」
「お前がそうなのか」
俺のことをじろじろと見た。
まったく失礼な奴だな。
「よし、分かった。その部屋を譲ってくれ。替わりの部屋は俺のおごりだ」
ブラックカードをひらひらさせて言う。
よっぽどブラックカードがお気に入りなのだろう。
「あー。あの部屋は気に入っているから、替わる気はないな」
「なんだと! 金は出すと言っているだろう。このブラックカードで」
面白いな、こいつ。
「それはブラックカードだよな。限度額はいくらか知っているのか?」
「バカなことを言うな。限度額などない。天下のブラックカードだぞ」
あれ? プライベートバンクのコンシェルジュが言っていたのと違うな。
「おかしいな。なぁ、フロントの君。このブラックカードであの邸宅は買えるのか?」
俺たちが今、滞在している邸宅のことを聞いた。
「えーと。もちろん、料金的には借りられますが…」
「いや、借りるのではなく買う話だ」
あ、俺の意図にフロントマンは気づいたらしい。
にっこりと笑って言う。
「それだと、限度額が足りないですね」
「なんだと!」
ボンボンが怒りの表情に変わった。
面白いな。自分の限界を知らない男というのは。
「ブラックカードは限度額は1億円くらいだぞ。恥をかくからちゃんと把握しとけよな」
「はぁー。たかがプラチナカードだろ、お前は。せいぜい限度額1千万円程度だろ」
カードの色で、相手を測るとは、こいつバカだな。
その上、無知な上に無知だってことに気づいていないとは、な。
「それはどうかな。なぁ、フロントマンよ。もし、俺がこのカードで俺が今、借りている邸宅を買いたいと言ったらどうする?」
「それは…私では判断できかねます。時間をいただけますか。オーナーとのアポイントを取ますので」
「はぁ? 何故ブラックカードだとあっさり無理ってと言って、こいつのプラチナカードだと、そんな話になるのだ?」
「お客様。このカードはプラチナカードではありません。限度額30億円と言われているパラジウムカードです」
あ、固まった。
本当に面白いな、こいつ。
もうちょっと遊んでやるか。
美波さんに合図を送った。
「あら、ダーリン。どうしたの」
「お、お前、美波! どうしてここに?」
やっぱり面白い。表情がいちいち大げさな男だな。
「どうも。今はね。休暇中でダーリンと一緒に過ごしているの」
「ダーリンって……ただの仕事の相手だろ」
「失礼ね。あなたは仕事の相手だったけど、ダーリンはダーリンよ」
あわあわ、って表情は本当にするものなんだな。
見ていて面白いぞ、ボンボン。
「あ、フロントマンよ。さっきの話は忘れてくれ。ただの確認だったからな」
「はい。存じて上げております。限度額30億円なら金額的に買えないはずはないですから」
「そういえば、このカードを持ったお客はここなら良く来るのか?」
「御冗談を。私が見たのは初めてです。前にここにパラジウムカードを持ったお客様が来たのは、3年前のアラブの王様です」
あー、確かにアラブの王様ならもっていそうだな。
少なくとも、親父がちょっと金持ちレベルのボンボンが持てるカードではないな。
「そういうことだ。お前のカードとは格が違うと分かったか」
「覚えてろよな」
チンピラみたいなセリフを残して困ったボンボンと品のない女は去っていった。
なんだかんだ言って、ザマァは好きっ。
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