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第50話 俺はブラックカードを初めて見た

ブクマ8227件になりました。ありがとうございます。

「どうかしら? 愛人のいる生活って?」


愛人のいる生活。


贅沢な空間で、美女の愛人と一緒にいる。


1日ふたりでぼーっとして過ごした。


いちゃいちゃしたり。

昔話を語りあったり。


まったりした時間が過ぎていく。


「たしかにな。贅沢なものかも。愛人がいるというのは」

「でしょう。これからもずーっと愛人がいたら、どうかしら」


愛は金で買えるのか。

そんな難しいことを考える気はない。


しかし、居心地のいい関係の愛人なら、金で買える。

それを美波さんはお試し体験させてくれた。


「私ね。悠斗さんといると気持ち良い。愛人になりたいって、今は本気で思っているの」

「それもありかも」

「本当?」

「美波さんも生活を保つために無理しなくても良くなるしな」


美波さんが俺の愛人になるためには、月100万円の御手当がいると言っている。

もちろん、俺には全く余裕だ。


だけど、愛を金で買うような気がして、どうしても愛人というものが納得できないでいる。

やはり俺は頭が堅いのか。


「ね、そうでしょ。お互い良い関係が作れると思わない?」

「微妙だな」

「な、なんでよ!」


あ、怒った。というより、怒ったふりだな。

お試し愛人は、実に気配りをした反応をする。


単なるエスコートだと温かみを感じないが、お試し愛人は違う。

ふたりの間に不思議な温かみを感じる。


「まぁ、いいわ。まだまだ6日間はあるからね。焦らずにいきましょう」

「そうだな」


そんな話をして、いちゃいちゃしていたら。

外はだんだんと暗くなってきた。


「さて。飯でも食いにいくか」

「いいわね」


ここでは部屋に食事を運んでもらうこともできる。

もちろんキッチンはあるから、料理をするために必要な物は揃っている。


しかし、今日はレストランで食べるとするか。


俺たちがいる邸宅は、さすがにレストランはない。


レストランは横にある普通のスイートルームが集まった棟の1階だ。

受付ロビーがあるのもそこだ。


俺たちがレストランに行くためにロビーに近づくと、なにやら声がしてくる。


「だからな。俺はな。一番いい部屋に今日泊まりたいんだ。分かってくれないかな」

「すみません。あいにく、そのお部屋は……」


フロントのホテルマンが困ったような顔をしている。


「だからな。その部屋から客を追い出せばいいだけだろう」

「そういう訳には……」


一番良い部屋か。

きっと俺たちの部屋のことを言っているのだろう。


「そういう訳にいかせてくれよ。このブラックカードがあるんだからさ」

「ブラックカードでも他のお客さんの迷惑なことは……」


どうも、お金持ちが無理を言っているシーンだな。


そのお金持ちを見た美波さんの顔が変化する。


「あいつ。私、知っているわ」

「そうなのか?」

「さっき話したわね。困ったお金持ちのボンボンよ」


あ、あいつなのか。

親の金をひけらかしていい気になる奴だな。


そいつも女連れか。

愛人か、それとも、エスコートコンパニオンか。

そんなものに感じる。


しかし、その女もそうだが、あの男の持ち物も品がない感じもするな。


最近は一流のグッズや一流の人たちに囲まれている。

だんだんと俺も、一流かどうかが感覚的にわかるようになってきている。


その目であいつの連れの女を見ると、どう見ても美波さんより格が下だ。


「どうするか。避けて通るか?」

「面白いわ。挨拶しましょう」


なんか、美波さん。

闘争心に火がついてないか?


「そうか。ロビーの人が困っているし。行くぞ」


駄目そうな奴がブラックカードを持って現れた。


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