第4話 俺は生まれて初めての贅沢をした
無限に金を引き出せる財布。
それを手に入れた俺。
「今までの辛かった貧乏生活とはおさらばだな」
何を買うにも「本当に必要なのか」と考えてきた俺。
買うときも徹底的に調べてもっと安い物、もっと安い店がないか調べてきた俺。
3本100円の人参を探して、スーパーを5軒、自転車で廻ったこともあったな。
野菜が高い頃で、ふだんの値段で買えないから。ムキになって探した。
特売で3本98円の人参を見つけたときは嬉しかったな。
しかし、今の俺は使っても減らない財布持ちだ。
100円だろうが、198円だろうが気にせず買えてしまう。
すごいことだ。
せっかく、そんなチート財布を手に入れたんだ。
何か贅沢なことをしてみないとな。
「そういえば腹が減ったな」
もう午後1時を過ぎている。
昼飯の時間だ。
あんまりのんびりしているとランチタイムが終わって、ランチセットが頼めなくなってしまう。
いかん。
どうしても、節約する思考になってしまうな。
ランチタイムだろうがディナータイムだろうが。
食べたいものを食べることができる。
今の俺はそうなったんだ。
よし決めた。
いままでやったことがない贅沢をしてしまおう。
俺は行きつけのラーメン屋に入った。
濃厚魚介系スープが有名なラーメン屋。
ここのラーメンはめちゃくちゃ美味い。
その上、俺は腹が減っている。
俺はカウンターに座った。
そして、初めてのメニューを注文した。
「トクマルラーメン、トッピング全部のせ」
そう、この店はトッピングが豊富なラーメン屋なのだ。
普通のトクマルラーメンなら600円だが、トッピング全部のせだと、1580円になる。
今までの俺では注文できない贅沢なメニューだ。
ラーメン一杯がなんと1580円もする。
こんな贅沢なことはない。
腹が減っていた俺は、その贅沢ラーメンを食べ出した。
「うまい」
そして、いろいろなトッピングをカジるたびに思う。
「贅沢は素敵だ」
7分ほどで、ラーメンスープの最後にの一滴まで飲み干した。
「毎度ありぃ」
俺はあのチート財布をポケットから取り出した。
100万円入っているから分厚いはずなのだが、
開いていないときははそんなことはない。
普通の厚さだ。
財布を開くと1万円札が100枚入っている。
そのうちの1枚を抜き取って店員に渡す。
お釣りは8420円だ。
小銭を入れる部分がないから、チート財布に戻すのは無理だ。
普通の財布に戻すとしよう。
「すごいな」
贅沢なラーメンを食ったら、お釣りで8420円も増えてしまった。
使ってもお金が減らないどころか、使ったらお金が増えてしまった。
もちろん、分かっているぞ。
たかがラーメン。
チート財布がなくても、全部のせラーメンくらいなら気合をいれたら注文できることを。
せっかくチート財布を手に入れたんだから、もっと贅沢をしてみないと。
店を出て考えた。
贅沢をする。
何をしたらいいのか。
今の俺が一番やりたい贅沢ってなんだ?
「そうだ! キャバクラだ」
贅沢なんてものを通り越したすごい世界。
それがキャバクラだ。
その上、チート財布があれば、あれができるだろう。
キャバクラ豪遊!
その言葉を思いついた瞬間。
くらくらした。
俺なんか一生縁があるはずがなかった言葉。
キャバクラ豪遊。
やばい!
チート財布を授けてくれた女神様にすべてを捧げてしまいたくなった。
キャバクラ豪遊。
今の俺に必要な贅沢はこれに違いない。
キャバクラ豪遊。
いざ、行こう。
夢の世界へ。




