第43話 俺は元ゴースト・ソングライターの悩みを聞いた
ゴーストさんの後日談。
「ちょっと相談に乗って欲しいのですが」
そんな電話をしてきたのは、みゆちゃん達のトライアイドルの『恋の試食販売』を作詞作曲したソングライターの一輝。
マンションの一階にある談話ルームに来てもらった。
「それで、相談というのはなんだ?」
このタワーマンションは、いろんなサービスを提供していて、談話ルームもそのひとつ。
仕事などで打ち合わせしたいときは、すぐに使える。
特に最上階の住民は特別扱いされているらしく、いきなりでもコンシェルジュデスクに連絡したら用意してくれた。
「実は、あの歌の件がバレまして」
「バレたって誰にだ」
「私の作詞作曲のほとんどを取り仕切っている大手プロダクションです」
「もしかして、専属契約していたのか?」
「いえ、そういう訳ではないですが、ほとんどの仕事はそこ経由なんです」
うーん。
それだと、仕事がなくなってしまうってことだな。
「もし、そこからの仕事がなくなるとどうなってしまうのか?」
「ええー、そんなことになったら生活できません」
そういうことか。
大手プロダクションはそうやってゴーストソングライターを操縦しているのか。
しかし、困ったな。
他のプロダクションにツテなどない。
「要は生活できればいいのか?」
「えーと。作詞作曲の仕事、大好きなんです。確かに自分の名前で発表できないのはつらいけど、それでも好きな仕事ができているのは嬉しいんです」
「どうなりたいのか?」
「とにかく、作詞作曲をして生活できれば文句はありません」
そうなのか、困ったな。
ただ、生活できるだけならお金でなんとかなるが、作詞作曲の仕事となると別だな。
「大手プロダクションに土下座してあやまるくらいしか思いつかなくて」
「土下座、したいのか?」
「したい訳ないじゃないですか。どうしようもないって話ですよ」
「その困りごと、解消しよう」
うわっ、言ってしまった。
対策も考えていないのに。
つい、困っている人をみると、このフレーズを言ってしまう癖がついてしまった。
人助けが条件反射になってしまっているぞ。
「本当ですか!」
「うむ。任せておけ」
今さら、何も考えていませんでした。
では済まないな。
誰か頼れる人をみつけないといけないな。
ゴーストは姿を現すと問題になるらしい。




