第42話 俺はブレイクする瞬間を目撃した
ブクマが7456件になりました。ありがとうです。
やることやったあとは、アイドル育成に戻ります。
「どうしたんだ、これは?」
「わかりません」
俺はスーパー店主に聞いてみた。
ここは商店街の中にあるスーパー。
6mほどの道の両側に商店が並んでいる。
道の上は屋根があり雨が降っても大丈夫だ。
その商店街はいつもは閑散としている。
シャッターが閉まった店も多く、人だかりができていたのは、もう40年も前だ。
だが、スーパーの前には人だかりができていた。
「もしかしたら、あのユーチューバーかもしれませんね」
「そうかもな。もうアップしてあるのか?」
ユーチューバーというのは、撮影した動画を編集したり、テロップを入れたり。
動画加工をしてからアップするものだと思っていた。
だから時間がかかる。
あのユーチューバーは違うのか。
たしかシバとか言っていたな。
トライアイドルで動画検索をすると、一番最初に出てきた。
「みてください。すごいですよ」
なんと、アップ日付が1日前なのに視聴回数がなんと28万回になっている。
コメントもずらりとついている。
「そんなすごいユーチューバーだったんですね」
「ある程度すごいとは聞いていた。だが、最高の動画が視聴回数12万回だと言っていたはずだが」
「どうなっているんでしょう」
どうなっているのかはわからないが、人が集まっている原因はきっとこの28万回だろう。
ユーチューブを見て、このスーパーにやってきた観客だ。
「みなさーん。こんにちは」
「「「「こんにちは」」」」
おっ、みゆちゃんが登場した。
いきなり観客ヒートアップしているな。
「今日はこんなにたくさんの皆さんに来てもらって、みゆ、嬉しくて涙がでちゃっています」
「「「「うおー」」」「「「みゆちゃん~」」」
すごいな、観客のパワー。
特に前に陣取っている連中。
親衛隊かっ、突っ込みを入れたくなるな。
そんな昭和なハチマキして。
「まずは、恋の試食販売、聞いてください」
「「「「おーーー」」」」
おい、そこの男。
オタダンスはやめようよ。
商店街なんだからさ。
なんかいきなり、みゆちゃん。アイドルになってしまったな。
まぁ、そうならないのが困りごとだったんだから、解決してよかったんだろう。
だけど、なんか寂しいのは、なぜだろう。
あ、これが推しメンがメジャー化するときの感情なのか。
また新しい売れていないアイドルを応援する。
そのうち、俺も親衛隊風かオタダンスの彼らの側になってしまうのか。
やばそうな世界に足をつっこんだ気がするな。
☆ ☆ ☆
試食公演が終わり。
みゆちゃんと、お茶している。
「ありがとう。すごくうれしかった」
「いやぁ、すごい人気だ。ほら、視聴回数もう40万回をこえてるぞ」
「本当? 嬉しい」
「だが、複雑だ。人気アイドルの世界に行ってしまうんだな、みゆちゃんは」
「えっ、そうなのかな」
「まだ分かんないけど、そうなりそうだぞ」
「そうなったら嬉しいな」
まぁ、喜んでいるんだから、祝福しておかないとな。
「おめでとう。人気アイドルへの第一歩だな」
「本当にありがとう。みんな悠斗さんのおかげね」
うん。やっぱり、みゆちゃんは笑顔でいるのがいいな。
「アイドルらしい活動ができないって困りごと。解消したかな」
「うん。すっごく解消しちゃった。ありがとう」
「人助けになったかな」
「もちろん。ありがとう」
きっとみゆちゃんがアイドルをしていたら困りごとが発生するだろう。
みゆちゃんの、人助けを続けていくことはできるな。
みゆちゃんはアイドルになりました。
おめでとうっ。




