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第36話 俺はスーパーをステージにしてやった

ブクマが6759件になりました。ありがとうござまいます。


いよいよ、アイドルステージ回です。うまくいくかな。


「こんにちは。私達、トライアイドルです」


新しいアイドル衣装を着た3人。


ピンクのみゆちゃん。

グリーンのななちゃん。

アクアブルーのめいちゃん。


エプロンを付けたコスチュームがなかなか可愛いぞ。


俺はちょっと離れたところに椅子を置いて、3人を眺めている。

その俺に声を掛ける女がいる。


「プロデューサーさん」


あれ? ミキちゃんじゃないか。

なんで、ここにいるんだ?


「みゆちゃんに教えてもらったのよ。今日が初日だって」

「そうか」

「いろいろ、やってくれちゃったらしいわね。全部みゆちゃんが教えてくれたわ」

「そうか」


丁度、もうひとつ椅子があるから、ミキちゃんに勧めた。


まだ、観客は来ていないな。

人は通りがかるが、横目で見て通り過ぎていく。


まぁ、無名のアイドルだから、そんなものか。


「それでは私達の歌『恋の試食販売』を聞いてください」


いよいよだな。

通りがかりの人はどんな反応を示すのだろうか?


「初めて会ったのは~、スーパーでした♪」


始まったな。

この歌、歌詞はベタだけどメロディラインがなかなか良いんだ。


「ずいぶんと、今時じゃない歌詞ね」

「そう。わざと昭和アイドル風にした、と言っていた」

「だけど、なんかいいわね」

「そうだろう」

「耳に残るわ」

「秘密はメロディなんだ。ずっと同じ繰り返しのメロディがあるだろ」

「あ。確かに。歌詞が載るメインのとは違う繰り返しのメロディ」

「これは相当、狙っているって言ってたな」

「いいかもしれないわね。なんとなく聴いてしまうメロディだわ」


このメロディが良いと感じるのは俺だけではないらしい。

ミキちゃんも、気に入ったみたいだし、おや、足を止める観客も出てきたぞ。


「ステーキ弁当の試食、いかがですか?」


試食タイム始まったな。

歌の1パートが終わるとアイドルのふたりは試食販売を始める。


今日の試食販売はステーキ弁当。

それに使われているステーキ肉とご飯を小さなお皿と小さなプラスプーンで試食してもらう。


残った1人はマイクを持ったまま、コーラス部分だけ歌っている。

アイドルステージでありながら、試食販売。

なんか、面白い光景だ。


「どうですか?」

「おや、ゴーストソングライター君ではないか」

「今回はゴーストじゃありません。作詞作曲をしたソングライターの一輝です」

「おお、そうだったな」


俺達の会話を聞いてミキちゃんは割り込んでくる。


「あなたが作ったの? 私、この曲好き」

「初めての自分の名前で発表した曲なんですよ。思いっきりこだわりました」

「その割にすぐにできたな」

「時間じゃありません。集中度です」


いつの間にか、男子学生が集まってきたぞ。

みゆちゃん達はかわいいからな。


「あなたの姿、探し求めて~♪」


また、3人で歌うパートに戻ったな。

試食タイムは終わったらしい。


おっ、手拍子が起きてきた。


「いいでしょう。ほら昭和ぽい歌だから、つい手拍子をしたくなるんですよ」


一輝くん、ドヤ顔になっているな。


「私も応援しにいかなきゃ。一緒にどう?」

「俺はここにいる。影の存在だから。そうだ、君は出て行ってみたらどうだ。作詞作曲した者ですって」

「それがいいわ。きっと、みゆちゃん達喜ぶわ」


ミキちゃんに連れられて一輝君。

スーパーの店頭ステージに入って行った。


おっ、ちゃんとみゆちゃんがトークで紹介している。


あ、拍手されていて、照れている。

面白いな、あいつ。


このステージはランチタイムの1時間。

用意したステーキ弁当は全部で50個。


ちゃんと売り切ることができるかな。


強引にプロデューサ化する主人公。


こいつは社会性ないな、と思う今日この頃です。笑


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