第36話 俺はスーパーをステージにしてやった
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いよいよ、アイドルステージ回です。うまくいくかな。
「こんにちは。私達、トライアイドルです」
新しいアイドル衣装を着た3人。
ピンクのみゆちゃん。
グリーンのななちゃん。
アクアブルーのめいちゃん。
エプロンを付けたコスチュームがなかなか可愛いぞ。
俺はちょっと離れたところに椅子を置いて、3人を眺めている。
その俺に声を掛ける女がいる。
「プロデューサーさん」
あれ? ミキちゃんじゃないか。
なんで、ここにいるんだ?
「みゆちゃんに教えてもらったのよ。今日が初日だって」
「そうか」
「いろいろ、やってくれちゃったらしいわね。全部みゆちゃんが教えてくれたわ」
「そうか」
丁度、もうひとつ椅子があるから、ミキちゃんに勧めた。
まだ、観客は来ていないな。
人は通りがかるが、横目で見て通り過ぎていく。
まぁ、無名のアイドルだから、そんなものか。
「それでは私達の歌『恋の試食販売』を聞いてください」
いよいよだな。
通りがかりの人はどんな反応を示すのだろうか?
「初めて会ったのは~、スーパーでした♪」
始まったな。
この歌、歌詞はベタだけどメロディラインがなかなか良いんだ。
「ずいぶんと、今時じゃない歌詞ね」
「そう。わざと昭和アイドル風にした、と言っていた」
「だけど、なんかいいわね」
「そうだろう」
「耳に残るわ」
「秘密はメロディなんだ。ずっと同じ繰り返しのメロディがあるだろ」
「あ。確かに。歌詞が載るメインのとは違う繰り返しのメロディ」
「これは相当、狙っているって言ってたな」
「いいかもしれないわね。なんとなく聴いてしまうメロディだわ」
このメロディが良いと感じるのは俺だけではないらしい。
ミキちゃんも、気に入ったみたいだし、おや、足を止める観客も出てきたぞ。
「ステーキ弁当の試食、いかがですか?」
試食タイム始まったな。
歌の1パートが終わるとアイドルのふたりは試食販売を始める。
今日の試食販売はステーキ弁当。
それに使われているステーキ肉とご飯を小さなお皿と小さなプラスプーンで試食してもらう。
残った1人はマイクを持ったまま、コーラス部分だけ歌っている。
アイドルステージでありながら、試食販売。
なんか、面白い光景だ。
「どうですか?」
「おや、ゴーストソングライター君ではないか」
「今回はゴーストじゃありません。作詞作曲をしたソングライターの一輝です」
「おお、そうだったな」
俺達の会話を聞いてミキちゃんは割り込んでくる。
「あなたが作ったの? 私、この曲好き」
「初めての自分の名前で発表した曲なんですよ。思いっきりこだわりました」
「その割にすぐにできたな」
「時間じゃありません。集中度です」
いつの間にか、男子学生が集まってきたぞ。
みゆちゃん達はかわいいからな。
「あなたの姿、探し求めて~♪」
また、3人で歌うパートに戻ったな。
試食タイムは終わったらしい。
おっ、手拍子が起きてきた。
「いいでしょう。ほら昭和ぽい歌だから、つい手拍子をしたくなるんですよ」
一輝くん、ドヤ顔になっているな。
「私も応援しにいかなきゃ。一緒にどう?」
「俺はここにいる。影の存在だから。そうだ、君は出て行ってみたらどうだ。作詞作曲した者ですって」
「それがいいわ。きっと、みゆちゃん達喜ぶわ」
ミキちゃんに連れられて一輝君。
スーパーの店頭ステージに入って行った。
おっ、ちゃんとみゆちゃんがトークで紹介している。
あ、拍手されていて、照れている。
面白いな、あいつ。
このステージはランチタイムの1時間。
用意したステーキ弁当は全部で50個。
ちゃんと売り切ることができるかな。
強引にプロデューサ化する主人公。
こいつは社会性ないな、と思う今日この頃です。笑




