第35話 俺はプロダクションに依頼を出してみた
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「それはもう。みゆ、ですか? それならチーム1ですね」
「衣装も送ったデザインもので?」
「それはもう。完璧です。うちの公式衣装にしたいくらいです」
「それなら、プレゼントしよう」
「本当ですか?」
あ、しまった。
みゆちゃんにプレゼントする予定だったのだが。
まぁ言ってしまったから仕方ないか。
みゆちゃんが所属するデモンストレータ・カンパニー。
スーパーからの公式依頼ということで、1カ月間毎日、試食販売を頼むことになった。
トライアイドルのチーム1の3人。
みゆちゃんがセンターのチームらしい。
「あと。こちらで用意する楽曲も使ってもらえるかな」
「それは聴かせてもらってからでいいですか?」
「もちろん。イメージを壊す感じなら、断ってもらっても結構だ」
「了解しました」
よし、ちゃんとプロダクションの了解をもらったし。
楽曲も作るとするか。
☆ ☆ ☆
「えっ、すると。あの国民的アイドルの楽曲も作っているのか?」
「いやぁ、作っていると言っても。しょせん影ですから」
今、会っているのはゴースト・ソング・ライターで一輝さん。
ファッションデザイナーの真希さんは芸能界にも詳しく、楽曲を作れる人を紹介してもらった。
いろんな歌手の歌を作っている。
ただし、ゴーストなので名前は一切でない。
大御所の名前で発表になる。
時には、シンガーソングライターの名前で作る。
「私の仕事はとにかくたくさん作らないといけないんです。単価が安いですから」
彼の作った歌がミリオンセラーになっても一切、彼には入ってこない。
最初の製作代だけが唯一の収入だ。
「自分の名前で発表したくないのか?」
「私の名前では通用しないんです。芸能界はそんなものです」
「いや、通用するとかでなくて。自分の名前での発表はイヤなのか?」
「そりゃ、できれば、自分の名前で発表したいですよ」
「それを聞いて安心した。この件はそちらの名前での発表としよう」
「本当ですか? でも、無名アイドルですよね」
「その通り」
芸能界というのは、いろいろとややこしいルールがあるようだ。
俺は関係ないがな。
「しかし、試食をさせる楽曲ですか。面白い依頼ですね」
「まぁな。試食販売アイドルだからな」
「これから作りましょう」
「どのくらいで完成する?」
「今日中に作りますよ」
「めちゃくちゃ早いな」
「こういうのは、ノリで作るに限るんです」
芸能界の人たちは、意外と協力的だった。
言い換えるとお金でなんとかなることが多いのだ。
☆ ☆ ☆
その他にも、こまごまとしたやりとりがあった。
たとえば、スーパーの店主とは、試食販売するものを何にするか。
その計画を立てて、試算もおこなった。
200万円の場所代はすごくよく効いて、なんでも店主は協力的だった。
みゆちゃん達、トライアイドルの3人にも連絡が行って新曲の練習も行われた。
そして、いよいよ、スーパーでトライアイドルの3人による試食販売のスタート当日を迎えたのだった。
いよいよ、アイドル養成が本格スタートしたぞ。
闇金で苦しんでいる人を助けると、なんでも言うことを聞いてくれる。
そんなことを主人公は学びつつある・・・ダークサイドに落ちそうだな。笑




