第34話 俺はスーパーで営業協力を申し出た
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「ええ。通りがかりの者なんだが。なにかお困りか、と思って声を掛けたんだ。何か困りごとはないのかな?」
「はぁ? 俺はな、すごく困っているんだよ。こちらの方がな貸した金返してくれなくてさ」
相変わらず、安定の偉そう親父だな。
どうみても、俺とつるんでいるとは思えない。
「それは困っているな」
「なんとかしてくれよ。ただの通りがかりの人よ」
「分かったぞ。こっちの人が金を返して欲しいと言ってるが。どうだろうか」
俺は、ただの善人の役だな。
まずはそこからだな。
「返すお金があれば返すよ。ないから困っているんだろう」
あまりにも、正論を言う通行人にスーパー店主はプチ切れしているようだ。
「それは困っているな。どのくらいの金があれば困らなくなるんだ?」
「それはな、200万円だ。びた一文まけないからな。今日はなんとしても払ってもらうからな。そのつもりでいろや」
「すると、ふたり共、200万円あれば、困りごとが無くなると?」
「そんな金があれば、闇金に追い込まれるなんて苦労しないよ」
「あ、200万円ならあるよ」
デイバックから200万円を出す。
「右手をこう、上に向けて出してくれ」
「こうかな」
店主の手の上にポンと200万円をのせる。
「な、なんだ、これは」
「1万円札。ゴムでくくっているのが100枚で、ふたつあるので200万円だ」
「そうじゃなくて。なんのお金なのか?」
「200万円がなくて困っているらしいので。これがあれば解決だな」
「それは……解決するが。。。」
スーパー店主さんと偉そう親父がなにやら話あっている。
偉そう親父は店主から200万円を受け取り領収書を手渡す。
「予定どおり200万円は回収した。俺は帰るぞ」
「ごくろうさん」
闇金連中は帰っていった。
そして、スーパー店主さんと俺だけが残った。
「申し訳ないが、あの200万円、しばらく借りることはできますか?」
「いや、あれは、あげたものだ」
「へぇっ」
「人助けだ。おまえが困っていたみたいだからな」
あ、確実に混乱している。
顔が?マークだらけになっているな。
「これで困ったことは解決したか?」
「はい。ありがとうございました」
まずは、1人目の人助け成功だ。
「それで」
「はい?」
「私は何をしたらいいんでしょう」
この辺りは男と女は対応が違うな。
女だと下心と決めつけてくるのに、男だと混乱する。
「見たところ、他にも困ったことがありそうなんだが」
「えー、まぁ。とりあえず今月はなんとかなりそうですが、来月はまた」
「スーパーは儲かっていないのか?」
「実は今年に入ってずっと赤字で」
「それはお困りだな」
「はい。なんとかなりますかね」
良くわからない通行人だが、藁をもつかむって表情だな。
「でも、この前の通りは学生がずいぶん通っているようだが。どうして赤字なのか?」
「最近の学生は、スーパーに入りません。コンビニか100均です」
それはいえるな。
俺は元々節約派だったから学生の頃からスーパーによく行っていたがな。
「それでは学生がスーパーで買い物すればいいのか?」
「それができれば」
「よし、俺がやってやろう。あそこの店の前のワゴン、貸してくれるか?」
「はい。使ってください」
「借り賃は200万円でいいか?」
「それはもう」
デイパックからあと2束出した。
「これは?」
「一万円札で100枚をゴムでとめて。2束だから200万円だ。さっき言ったよな」
「そうじゃなくて。この200万円はなんでしょう」
「ワゴンの借り賃だ」
「ええっ、さっきのではなく?」
「さっきの200万円は人助けだ。この200万円はワゴンレンタル代だ」
スーパー店主さん。じぃーと200万円を見ている。
「足りないか?」
「いえいえ、足ります足ります。もちろん、十分です」
よし、これで準備はできたな。
後は男子学生の目を引き付ければいいんだな。
また、人助けしてる。
「もっといい方法あるんじゃないの」って気になるかも。




