第33話 俺はスーパーの攻略をはじめてみた
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異世界金融 〜 働きたくないカス教師が異世界で金貸しを始めたら無双しそうな件
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トイチの闇金屋さんが主人公というとんでもない系! 闇金ファンならば一度は読んでみないとね。笑
翌日。俺はまた闇金にやってきた。
「こんにちは」
明るく挨拶をする。
どうしても闇金には暗いイメージがあるから、俺ぐらいは明るく挨拶をしてやろう。
「あ。これは、これは」
今日は偉そう親父が闇金事務所にいた。
それも、事務員の女性より先に俺に声を掛けてくれだぞ。
「どうぞ。こちらにお掛けください」
おかしいぞ。
偉そう親父は、ぶすっとして偉そうにふんぞり返っているのが似合う。
それなのに、俺には偉そう親父がすごく丁寧に対応している。
これはもしかしたら、進化したのか?
偉そう親父は、ていねい親父に進化したのか?
「今日はどういった ご用件で?」
俺が進められたソファに座ったら、早速、聞かれた。
もちろん俺も闇金に世間話をしに来た訳ではない。
さっさと用件に入るのは歓迎だ。
「今日はな。スーパーだ」
「スーパーですか。ヨーカンドーみたいな?」
ていねい親父は大手スーパーの名前をあげた。
「いや。そうではない。もっと小さい、街のスーパーだ」
「その街のスーパーがどうしたんですか?」
「スーパーの取り立てがあるかと思ってな」
お、ていねい親父が一気に動き出した。
高速で色々な書類を調べたり、調べさせたりしている。
「すみません。スーパーですか。ちょっとお待ちくださいね」
実にていねいな対応だ。
誰にでも、そんな対応をしていたら、明るい闇金になるのだがな。
しかし、この闇金では街のスーパーの借主はいないようだ。
「なかったら、いいぞ。他へ行くから」
「ま、待ってください。今、本社に問い合わせていますから」
本社だって?
闇金に本社があるのか。
もしかしたら、フランチャイズ制とか?
「あ、ありました。太田店です」
電話を持ったチャラい若者が報告してきた。
手には、何やらメモを取っている。
たぶん、スーパーの住所とかだろう。
「はい。用意できました。今回もたまたま通りがかったということで?」
「そうだ。取り立てはスーパーの事務所でやるのか」
ドラマとかでみる限り、そんな気がする。
「はい。裏口から入って事務所でやるのが基本です。裏口を開け放しておくから、たまたま通りがかってください」
「わかった」
☆ ☆ ☆
そのスーパーは学生が多い街にあった。
近くに大学があると言う。
情報処理科の学生が多いから、女子学生より男子学生が中心だ。
そんな学生が行き交う商店街。
今はシャッターを閉めたままの店も多い。
取り立てする予定のスーパーは、昭和の時代からやっていたのだろう。
古い形のスーパーで食品と日用品を扱っている。
先に闇金の連中が入っていく。
「ここの店の裏口だな」
従業員入口と書いてある方に向かって歩いていく。
建物の中から、どなり声が聞こえてきた。
「だからな。今月の分をもらったら大人しく帰りますよ」
あの声は偉そう親父だな。
俺以外と話しているときは、やっぱり偉そう親父だ。
裏口の隙間から覗いてみると、しっかりと頭をさげているスーパーの店主が見えた。
「お願いします。もうちょっとだけ待ってください」
「何度、それ聞いたと思うんだ? だから返済が増えてしまっているんだろう」
「そこをなんとか。来月こそは返しますから」
「そこの金庫に入っている金があるのは知っているぞ。その分だけでいいから、よこせ」
黒くてごつくて大きい金庫。
間違いなく昭和の頃からそこにあったのだろう。
「あ、それは駄目です」
「調べはついていんるんだぞ。おまえのとこは現金支給なんだってな」
「絶対に駄目です。それは従業員の給料なんです」
「そっちを待ってもらえばいい。うちに廻せよな」
「無理です。そんなことをしたらスーパーを続けられなくなります」
「それもありだな。在庫や什器の転売なら相談に乗るぞ」
偉そう親父、迫力あるな。
そんなに顔を近づけられたら、怖いだろう。
そろそろ、いいかな。
俺はひょっこりと裏口から中に入って行った。
「こんにちは」
「えっ、誰ですか、あなたは?」
「ええ。通りがかりの者なんだが。なにかお困りか、と思って声を掛けたんだ」
よし、ここまでは順調だ。
闇金の取り立てのときに、たまたま通り掛かるのも、3度目となると慣れたものだ。
闇金チーム、再登場。
今度はたたの人助けじゃなくて、ちょっと下心付きです。




