第29話 俺は人助けに疲れてキャバクラに来た
ここから新章に突入。アイドル育成編だぁー。
「あ、いらっしゃい」
また、来たぞ、板橋のキャバクラ。
それも開店の18時ジャスト。
「今日はミキちゃんとみゆちゃん指名で。しっとり飲みたいからほかの子はつけなくていいよ」
「かしこまりました」
ほとんど毎日、ここに来るようになってしまった。
家に帰っても、誰もいないからな。
せっかくの新居、意味ないな。
「いらっしゃい。新しいおうちはどう?」
「それがな。慣れなくて」
「そうよね。都心だとね」
明日が日曜日。
みんな遊びに来てくれるから、ちゃんと住所も教えないとな。
「いらっしゃいませ」
「こんばんは、みゆちゃん」
「今日も来てくれたの。嬉しいわ」
「俺もみゆちゃんの顔を見ないと寂しいんだ」
俺の本命はみゆちゃん、ということになっているらしい。
まぁ、そうといえばそうだ。
この店の中限定の恋人、みたいな、だ。
本気でキャバ嬢に恋したら痛い目を見るというのは知っているからな。
「もう引っ越し終わったの?」
「引っ越しはおいおいな。必要なものは運んだから」
「それだと不便でしょう」
「そうでもないぞ。元々、あまり物はない系だからな」
あと残っているのは、アニメのDVDが沢山くらいだな。
それと5億円ほどの札束か。
これは無くても生活には困らないものだしな。
「そう言えば、今日はどんな仕事をしていたの?」
ミキちゃんがいると話題に困らない。
いろんな話題をみつけてくれる。
だから、ミキちゃんを最近は指名している感じだな。
「今日は仕事じゃないな。人助けをしていた」
「人助け?」
「ああ。通りがかりだけどな。困っていたから助けてみた」
「そうなんだ。いいなぁー助けてもらって。みゆも助けて欲しい」
「困っていること、あるのか?」
そういえば、みゆちゃんが何をしているのか。
全然聞いたことがなかった。
仕事で困っていることあるのか?
「うん。みゆね。実はアイドルしているの」
「おおっ、アイドル!」
なんと、みゆちゃんはキャバ嬢だと思っていたけど、違った。
本職はアイドルだった。
急に遠い存在に思えてしまった。
「あ、アイドルって言っても、本当に大したものじゃないの」
「それだってアイドルだろう。テレビで歌を歌ったり、バラエティ番組に出たり」
「テレビなんて、無理無理」
「じゃあ、ステージで歌うのか?」
ミキちゃん、笑ってみている。
きっと、知っているんだな。
「みゆのステージは、スーパーなの」
「スーパー?」
「みゆの所属しているアイドルグループはトライアイドルっていうの」
「トライ。アン・ドゥ・トライとか?」
「ううん。トライアル、プラス、アイドルで、トライアイドル」
なんか。もやっと、したぞ、今。
すっきりしない名前だな、それ。
「元々は試食販売員を派遣している会社が作ったアイドルなの」
「すると、スーパーにいる、『角切りステーキ焼けました。試食してください」ってあれか」
「うん。私もするの。試食販売。アイドルの服で」
なんか、シュールな絵が出てきたぞ。
アイドルの恰好をしたみゆちゃんがスーパーの精肉売り場で試食販売?
「見てみて。こんな感じ」
スマホで撮影した写真をみせてくれる。
うわっ、本気でシュールな写真だった。
は、恥ずかしい……でも、そんなこと言えないしな。
「わかってるの。こんなのアイドルじゃないって」
あ、落ち込んじゃったぞ。
どうするか……そうか!
ここにも、困っている人がいたってことか!
「もしかして、困っているか?」
「困ってる?」
「もっとアイドルらしいことしたいって」
「うーん。そういう気持ちあるけど……試食の仕事を断ると何もなくなりそうなの」
うん、みゆちゃん、困っているな。
助けを求めている。
これは人助けだな。
よし、なんとかしてみよう。
「みゆちゃんの会社。なんて名前かな」
「デモンストレーターカンパニーって言うの」
いかにもって感じの名前だな。
「みゆちゃんは、アイドルらしい仕事があるといいんだな」
「うん……だけど、そんなの変えられるの?」
「やってみよう」
「本当?」
半信半疑だな。当たり前か。
俺もできるかどうか、分からないしな。
「俺に任せておけ」
「嬉しい」
いかん。
勢いで言ってしまった。
俺は借金ある人さえ、ちゃんと悩み解消できていないのに、な。
トゥルルルーーー♪
俺のスマホが鳴った。
掛けてきたのは。。。。
闇金編がおわったぁ~。
で。
やっとわかりやすい主人公の目的ができたぞ。
それがアイドル育成。
アイドルオタ属性を持つ主人公にはおいしい目的。
現金パワーでなにをやらかすのか?
楽しみにしてくださいね。




