第27話 俺が助けるのは闇金も困る女らしい
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今日の6話目です。これで最後の予定です。
闇金一行と俺が乗ったベンツが着いたのは、小奇麗なマンションの前。
ここに困っている女がいるのか。
「ここは、狭いくせに意外と高いマンションだ」
「そうなのか」
「こういうとこに住んでいる女はダメだ。金の使い方を知らない」
どきっ。金の使い方を言われると、俺には何もいえないな。
「だがよ。こんなとこに住んで闇金に追い込みされる女は助けても無駄だぞ」
「そうなのか」
「そうだ。一時的になんとかなっても、また同じことを繰り返すだけだ」
「そういうものなのか」
「無駄だと思うがな。まぁ、間違いなく俺たちは助かるがな」
「だったら、それでいい。助かる人が少なくともひとりはいるな」
「いい心がけだ」
ベンツの運転席にいたチャラい若者。
服を着替えて、帽子をかぶった。
あれだな。宅配のあんちゃんだ。
「あの女はネットショッピングが大好きでな。どうせ、なんか頼んでいるに違いないんだ」
まずは、チャラい若者がいく。
マンション玄関でボタンを押している。
「こういうセキュリティ完備のとこはめんどうなんだ。おっ、いたようだな」
マンションの玄関の自動ドアが開いて閉まらないように、間に立っている。
兄貴と偉そう親父も出番か。
お、いけない、俺もか。
締め出されてしまったら、困っている人を助けられないな。
「こんにちは。お届け物お持ちしました」
「うまいだろ。宅配バイトさせて、制服もろともパクらせたんだ」
あの制服とかは本物か。
どうりでリアルなはずだ。
「はーい。ちょっとお待ちください」
ガチャ。簡単にドアが開いた。
不用心だな。
チャラい若者がドアをこじ開けて、強引に中に押し入ったぞ。
偉そう親父と兄貴も続いて入った。
「こまるんだよな。ちゃんと払ってもらえないと」
「なに、あんた達。警察呼ぶわよ」
「呼んでみろよ。その前にこいつのパンチがお前の顔を変形させるぞ」
うわっ、怖いな。俺は暴力反対の平和主義だ。
「金なんてないわよ。帰ってよ」
「そうはいかないんだ。俺たちは取り立てのプロだからな」
「なによ。わかったわよ。風俗でも水商売でも、どこかに私を売ったらいいわ」
「お前の考えは分かっているぞ。そうやって店に売らせておいて、逃げるんだろ。前の金融屋はそれで大変な目にあったんだ」
「知らないわよ、そんなこと」
うわ。なかなかの猛者だな。
闇金の裏までかくとは。
「お前にはいいとこを紹介してやろうと思ってな」
「どんなことよ」
「いい服を着て、おいしい料理をふるまうとこだ」
「嘘。そんな仕事、紹介するわけないじゃない」
「ただ。ひとつだけ問題があってな」
「どんな問題よ」
「それが日本じゃなくてな。中国だ。中華料理は好きか?」
「なんで、私が中国いかないといけないのよ」
うーん、彼女。ちゃんとしていれば、ちゃんと綺麗な人だと思うな。
ただ今は、表情が暗くてひどい顔をしているな。
「中国と言っても、普通のとこじゃない。上海にある秘密クラブでな、中国共産党のお偉いさんとか、とんでもない大富豪しか入れないとこだ」
「秘密クラブってなによ」
「場所はな、上海からちょっと離れてい森の中だ。8mくらいの高い塀に囲まれていてな。中は覗けないんだ」
「なに、それ」
「そこの中で何がされているのかは、俺も入ったことはないから知らないがな。きっと楽しいことだろう」
「絶対、楽しくない。楽しい訳がないじゃない」
「そこのいいのは、絶対逃げられないってことだ。まだ刑務所の方が脱獄しやすいと噂だ」
「なんで、そんなこと入らないといけないのよ」
「日本人の女は中国人に人気でな。いい金で引き取ってくれるのよ」
「いやよ。そんなとこ」
「大丈夫だ。お前はこれでちょっと寝ていてくれればいい」
なんかハンカチを出したぞ。
あれかな。
眠らせる薬剤、なんて名前だっけ。
「やめてよ。私、パスポートないし」
「気にするな。プライベートジェットですぐだ。向こうは国ぐるみだから、なんのチェックもなしだ。中国にいるのは、誰にも知られやしないさ」
「やめて。お願い」
「闇金をなめたことをした報いだと思え」
「ごめんなさい。ごめんなさい。中国はイヤ」
さすがだな、中国。大人しくなったぞ、彼女。
さて、いこうか。
「こんにちは」
「誰だ、お前」
「通りがかりの者です」
「通りがかりって、ここは住人しか入れないだろう」
いいな、偉そう親父。
本当にびっくりしている感じが出ている。
「こちらの彼女、困っているように見えたから声を掛けました」
「困っているのは、こっちだよ。闇金の借金を踏み倒す女なんだよ、こいつは」
「すると、あなたも困っていますね」
「あー、困っている。だから、この女を中国に売らないといけないくらい困っている」
「それはお困りですね」
いきなり関係ない男が乱入してきて、彼女は混乱した顔をしている。
そんな彼女に聞いてみる。
「もしかして、困っていますか?」
「何言ってんのよ。見ればわかるでしょ。闇金に追い込みされて中国に連れていかれてしまうのよ」
「はい、知っていますよ」
「だったら、なんとかしてよ」
「それでは、あなたは困っているんですね」
「困っているわ、こいつらに。なんとかしてよ」
よし双方の困っている発言をもらったぞ。
人助けをよう。
「もしかして、お金があれば解決とかしたりしますか?」
「あー、そうだな。この女の借金400万円。耳をそろえて返してくれれば解決するな」
「なんで400万円なのよ。300万円でしょ」
「いいか。利子というものがあってだな」
「細かい話はいいですから。400万円あれば解決するんですか?」
「あー、もちろん。俺たちは400万円もらえれば文句はないぞ」
「そんな金、ある訳ないじゃない」
「ありますけど。ここに」
俺はデイバックから100万円の束を4つ取り出した。
「ここに400万円あります」
「おう」
「これを貴方に渡します」
「えっ」
「貴方のとこに400万円がありますね」
「は、はい」
「これを返済するというのはどうでしょう」
「……それでいいです」
状況は理解できていなさそうだな。
まぁ、了解がでたことで良しとしよう。
「それでは、返済するってことですね」
「はい」
「では、借用書、お願いします」
「おう、これだ。この金、もらうぞ」
「はい。オッケーです」
「俺たちは用事が済んだ。帰るが?」
「はい。あ、その前に」
「な、なんだ?」
なんか警戒しているな、偉そう親父。
「困ったことは解決しましたか?」
「もちろん、解決だ。きれいに解決」
「よかったです。じゃ、お帰りください」
「おう。じゃあな」
街金屋の3人は帰っていった。
俺とおねぇちゃんだけが残っている。
この女は中国行きでいい、って意見多数! みんな厳しいなぁー。




