第25話 俺はすき焼きだけ「ごちそうさま」と言った
連続投稿の4話めです。
「おまたせっ」
おっ、困りごと、解決。
さすが、巨乳(確定)人妻だな。
「今日はすき焼きよ」
「「「わーい」」」
なんか、ドラマで見たようなシーンだな。
だけど、たしか昭和の話だった気が。
「ちょっと待っていてくださいね。すぐ作るから」
カセットコンロにフライパン。
たぶんスーパーでもらってきた牛脂を溶かしてぐるぐる伸ばして。
そのうえで薄切り牛肉を焼く。
じゅわ~。
肉が焼ける音と匂い。
たまらないな。
そうか。関西風なんだな。
俺も関西風すき焼き好きだぞ。
「砂糖と。お醤油と。ほら、じゅわーーー」
「「「じゅわーーー」」」
おおっ、コーラスだ。
鍋の音がメインだな。
「じゅわーーー」
俺も合わせてみた。
「じゅわーーー」
「「「じゅわーーー」」」
砂糖が溶けて、醤油がちょっとこげて。
それに肉の匂いも重なって。
最高にうまそうだ。
「もういいわよ」
「「「わーい」」」
すぐに3組の箸が肉に伸びる。
おっと、娘たち、もう、卵を割り入れていたのか。
ずいぶんと準備いいな、
「「「おいしい」」」
最初の肉は娘3人に全部食べられてしまった。
ひとつくらい寄越せよな。
「すみません。うちの子、食いしん坊で」
「大丈夫。気持ちいい喰いっぷりだな」
ここは大人の余裕を見せておこう。
しかし、うまそうに喰うな。
1セットを食べ終わっても、まだまだな感じだな。
焼いている肉を見つめる瞳は、さながら野獣のようだ。
「次は私達も食べるんだからね。ここは手を出しちゃダメ」
巨乳(確定)人妻は、牛肉をふたつのエリアに分けてフライパンに載せる。
「ほら、もういいわよ」
「「「わーい」」」
娘達エリアの肉はあっと言う間に消える。
残っているのは、娘達の進入禁止エリアの肉だけだ。
「はい、これをどうぞ」
ちょうどいい感じに焼けたすき焼き肉。
ひょいと菜箸につまんで、俺の取り皿に入れる。
うん、うまそうだ。
「「「もっとー」」」
俺が食べる前に娘達は食べ終わり、次をリクエスト。
「おいしい?」
一番上の娘が俺の肉を見て食べたそうにしている。
「ちょっとまて。これから食べるんだ」
肉に卵にしっかりと絡めて。
濃い味付けのすき焼き肉を、一気に口に放りこむ。
「うまい!」
「うん。おいしいよね」
一番上の娘がにっこりと笑う。
なんだろう。
このうまさは?
料理屋で食べた能登牛。
最高の美味を追求しまくったものだ。
それに対して、こっちはたぶんスーパーの牛肉で、そんなに高いのではない。
それなのに、こっち肉の方が、やたらと美味いと感じてしまう。
きっと気のせいだろう。
「こうして、みんなですき焼きを食べられるのって贅沢よね」
巨乳(確定)人妻がニコニコして言う。
贅沢か。
そうかもしれないな。
シングルマザーだった俺の母親。
得意料理のハンバーグ。
あれは美味かったな。
「今日はハンバーグよ」
「わーい」
そんなシーンが浮かび上がってきた。
もう、亡くなってしまったから、そのハンバーグは食べることはできない。
「まだまだあるから、沢山食べてね」
巨乳(確定)人妻も作りながらも食べる。
あ、ふにゃっとなった。
肉、好きそうだな。
きっと、うまいんだろう。
俺はもうあきらめていた贅沢がここにはあるな。
家族の団らんっていう贅沢がな。
「寝ちゃったな」
「ええ。あれだけ食べたらね。お昼寝の時間ね」
「娘はかわいいな」
「うん。あなたはお子さんは?」
「いない。結婚もしていなし、恋人もいない」
「結婚はしていないのね。だけど。恋人がいないのは嘘ね」
「なんでだ?」
「こんなにいい男、女が放っておくはずないものね」
今日の服は、美咲さんコーディネイトだ。
さすがプロだな。
こんな俺でもモテ男に見えるらしい。
「なんで、私達にこんなに良くしてくれたの?」
「人助けをしたくてな」
隠す必要もないから、本当のことを言った。
「本当かしら。でも、いいわ。あなたが他に何かを望んでいてもね」
「人助けだけだぞ」
まぁ、あれだな。
巨乳は気になっているから、視線がそのあたりに行くのは男の本能だから許してくれ。
「久しぶりの笑顔だったの。私も、娘達も」
きっと、闇金の集金におびえていたのだろう。
笑顔なんてなくなっていたはずだ。
それがすき焼きだけで笑顔になった。
人助けはいいな。
きっと癖になってしまうだろう。
「こんな幸せあるの、忘れていたわ」
「それはよかったな」
俺は思いっきり笑顔で答えた。
心からの笑顔で。
「それで、私はどこにいけばいいの? やっぱりソープなの?」
「ちょっ、ちょっと」
あれ、なんか話がおかしいぞ。
「どこでもいいわ。あなたの命令なら喜んで受けるわ」
「そうじゃなくて」
俺はあせってしまった。
話が通じないぞ。
どうすればいいんだ。
「ただ。ひとつだけお願いがあるの」
「お願い?」
「あなたに抱いて欲しいの」
どうして、そんな話になるんだ?
巨乳(確定)人妻さん?
「子供の笑顔のためなら、風俗だろうとなんだろうと。できるって思ったの」
「だから」
「でも。いろんな男に抱かれる前に。あなたに一度でいいから抱かれたいの」
「あの・・・」
「そんなお願い、迷惑かしら」
これって、ご都合主義って奴ですか?
いきなり、そういう展開は強引すぎるとおもいませんか?
「ねぇ」
なんでそんなに、すりよってくるの?
やばいなぁ。反応してしまうでしょ。
「ねぇ」
あ、なんか甘い匂いがする。
やばい。そんなにシャツの裾をひっぱったらダメでしょう。
Gカップの巨乳が存在を主張しちゃうじゃないの。
「それじゃ、そろそろ」
「えっ」
戸惑いの顔をした。
「あ、そうそう。なんか紙ない? あ、ペンも」
「ありますが…………どうぞ」
そこらにころがっていたメモとペンを手渡したくれた。
「これが俺の電話番号な。困ったことがあったら電話してくれ」
手渡された電話番号メモと俺の顔を、かわりばんこに見る。
「えっ。本当に帰ってしまうの?」
「ああ。だが、困ったことが起きたら、また来るから心配するな」
さっさと帰ろう。
俺の煩悩が巨乳に負けてしまう前に。
闇金シリーズ・エピソード1。おしまい。また、普通の更新に戻る予定。




