第23話 俺は闇金で三方一両損をしてみた
ついでに連続投稿っ。
「皆さん~。聞いてください~。この部屋の女性は、お金を借りて返さない人で~」
「や、やめてください」
アパートの部屋から出てきたのは女、20代後半くらいかな。
髪の毛がぼさぼさ。まだ寝ていたのかな。
「素直に出てくれば騒がないよ。出てきてくれないから」
「出てきたんですから、静かにしてください」
「ほら。約束したよね。先週。今日、払ってくれるって」
「すいません。まだ、お金が足りなくて」
「あ。お嬢ちゃん。こんにちは」
「やめてください。怖がるでしょう?」
小学生の2年生くらいかな。子供はその娘さんひとりかな。
「一番上のお姉ちゃんだよね。あとふたり妹がいるよね」
「今はいません」
「どこいったのかな」
「関係ないでしょう」
娘さん3人か。
あとふたりは保育園かな。
「今日は利息くらいは返してよ。13万円。これ返さないと、どんどん増えちゃうよ」
「無理です。そんなお金」
「いいかげんにしろよ。優しく言っているうちに、出せ!」
「すいません。今日のとこは待ってください」
「先週もそういったよな。旦那は見つかったのか?」
「全然、音沙汰がなくて」
「じゃあ、あんたが返すしかないだろ。いいお店紹介してやるからさ」
あ、それって、あれだな。
風俗に沈めるって、あれ。
本当にそんなこと言うんだ。
あとは腎臓がどうのとか。
「できません。娘たちがいるし」
「勘違いしないで欲しいな、娘たちのために、働くんだから」
あ、お母さん。
もしかして、巨乳?
ゆったりした服を着ているからよくわからないけど。
太っている訳じゃないのに胸のあたりがボリュームありそう。
「せっかくいい身体しているんだから、それ活かさなきゃ」
「イヤ」
「あれもダメ、これもダメ。それじゃ、おじさん、困ってしまうのよ」
あ、困っている人、発見。
解決してみるか。
「すいません」
「なんだお前。あそこにいろと言ったろう」
「ちょっと話を聞かせてくれますか」
「だから、変なしゃべり方するんじゃねぇ」
「あ、そうだったな。いいから、話を聞かせろよ、兄貴」
「なんだか、俺より偉そうだな」
あ、そんなつもりはいなんだが。
調整が難しいな。
「どうも、借金があるようだな」
「そうだ。700万円だぞ。今のままで返せるはずないだろう」
「700万円だな」
「おう」
「それで、それを返してもらえなくて、兄貴は困っていると」
「そうだ」
「そっちのお前は、どうなのか? 返せなくて困っているのか?」
「返そうとは思っているんです。ただ、なんともならなくて」
「ちょっと待て。返せなくて困っているんじゃないのか?」
「えっ、まぁ」
「借金が返せなくて困っているな?」
「はい」
700万円か。
ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ、いつつ、むっつ、ななつ。
「700万円だ」
「「えっ」」
ふたりは絶句している。
「困っている、あなたとあなた。これがあれば、解決するんではないか?」
「いいのか?」
「何が?」
「これ、もらっていいのか?」
「もらう? そうじゃなくて。返済だ」
「ああ。もちろん、返済だ。借用書はこれだ」
「間違いないかな、これで」
「はい。ここに、旦那のサインが」
よし、これで解決するだろう。
人助けだ。
「まず、この700万円を奥さんに渡す。いいか」
「はい」
「奥さんの持っている700万円を兄貴に渡す」
「おう」
「すると、借用書が奥さんに戻る」
「はい」
「これで解決。間違っていないか?」
「えっと。間違っていないです」
「兄貴、しゃべり方へんだぞ」
「あ。いけね。間違いはないな」
「奥さんも間違いはないか?」
「間違いありません」
そして、俺の願いも達成できるな。
「俺は困っている人を助けたいんだ」
「「おおーー」」
なんか、ふたりとも、俺を拝んでいないか?
「これで俺の願いとふたりの困りごとが同時に解決したな」
「「はい」」
もしかして。
これは、なんとか越前のテンプレか。
似たようなことをしたという話を聞いたことがあるな。
「これが三方一両損ってやつか」
「「なんか、違う」」
いきなり、ふたりに突っ込まれた。
言っている俺もなんか違うと思ったが。
「まぁいい。三方とも、丸く収まったな、どうだ?」
「「はい」」
うん、終わった。
いいことしたな、
「えっと。私はもう店に戻っていいですか?」
「兄貴、しゃべり方が変!」
「あっ、俺はもう店に帰るぞ」
「おう。俺はもうすこし、彼女と話をつけるから」
「あとはまかせたぞ」
闇金兄貴は帰っていった。
人助けしてみた。




