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番外『マグロス』編16話 やっぱりキャバクラはいいもんだ

「わぁー、久しぶりっ。悠人さん」

「ミキちゃん、元気だった?」

「私は相変わらずよ。あ、でも、いいの? 悠人さん。みゆちゃんと結婚したのよね」

「まあな。今日は遊びに来た訳じゃないんだ」

「えっ、そうなの?」


そうだぞ。キャバクラ遊びに来たんじゃない。

彼女を愛花ちゃんに会わせたいから来たんだ。

そこんとこ、間違わないでね……ついつい、心の中で自己弁護をしてしまった。


「あー、実は彼女なんだが」

「いらっしゃいませ。えっと、当店は初めてですよね」

「ええ。キャバクラも初めてです」


キャバクラに女性のお客さんが来るのは珍しい。

もっと、女性だけじゃなくて男女でくるのはごくたまにあるみたいだけど。


「愛花ちゃんはまだ出勤してないかな」

「まだのようね。そろそろだと思うけど」


愛花ちゃんが来るまでミキちゃんに近況報告などしていた。

やっぱり、ここに来ると妙に安心するな。

ちょっと前まで俺の癒しの場だったからな。


「あ、来たみたい。着替えるまでもうちょっと待ってね」


5分ほどすると愛花ちゃんが来た。


「愛花さんです」

「ご指名ありがとうございます、悠人さん」

「すっかり、キャバ嬢が板についてきたな」

「ええ。悠人さんに教わったこと、ちゃんと実践しているわ」

「俺が教えたこと? なんだっけな」

「稼いだ以上に買い物しないってね」


あー、それは俺が教えたことじゃなくて、自ら気づいたことじゃないか。

あの頃の俺は、全く稼いでなかったのにチート財布でドンペリを入れていた男だからな。


「もう、買い物依存症は治ったんですか?」

「こちらの方は?」

「悠人カンパニーに参加している芽衣めいさんだ。愛花さんに会わせたいと思ってな」

「えっ、私?」


今の芽衣さんの状況を説明してみた。

買い物好きというのは共通みたいで、いきなり意気投合したぞ。


「だから失敗したのは、自分が欲しいと思えない商品を売ろうとしたことね」

「あ、分かる! 欲しいって気持ちにならないのにそれ売るってストレス溜まるわ」

「自分が欲しくて買った商品を、なぜそんなに欲しかったのか、って話すのって楽しいのよ」

「分かる~。東京に来た頃はなんでも新しくて、なんでも欲しかったの。だけど、今は本気で欲しいのかを確認するために、3回お店に行ってから買うってマイルールにしてるの」

「それって、すごいわ」


なんか買い物話で盛り上がっているな。

物欲が弱い俺の出番はなさそうだ。ミキちゃんと遊んでいよう。


「ミキちゃんは何か欲しいものってないのかい」

「あ、悠人さん。おねだりしたら買ってくれる?」

「あー、おしかったな。結婚前なら買ったかもしれないけどな」

「冗談、冗談。私って、自分で買えるくらいの物しか欲しくならないみたい」

「おー、俺と似たとこあるな」


チート財布を拾った頃は本当に何を買ったらいいのか皆目、分からなかったしな。

キャバクラ豪遊以外、本当に欲しい物ってなかった気がするな。


「そうそう。新しい娘入っているの。呼んでいい?」

「おー、いいぞ。どんどん呼べ」


あ、いけない、いけない。気が大きくなってきているな。

キャバクラに来て酒を飲むとガンガンに金使いたくなる。


まぁ、ミキちゃんがいるから安心だな。

ちゃんと財布の中身を考えて勧めてくれるから。


「こんにちわ。ノアです」

「どう、かわいいでしょ。悠人さんのタイプかなって思って」


ベリーショートで猫目な娘か。たしかにストライクゾーンに入っているな。

ど真ん中じゃないけど。


「あー、俺にはみゆという最愛の妻がいるからな」

「やぼなこと言わないの。みゆちゃんはみゆちゃん。キャバクラは別でしょ」

「おー、そうだったな」

「えっ、もしかして。みゆちゃんが奥さんって、伝説のお客さん?」

「伝説ってなんだよ」

「このキャバクラから超セレブになった人がいるって」


そんな話が広まっているのか。

まぁ、女3人寄れば姦しいって書くらしいからな。

噂の種を撒いた覚えがあるぞ。


「その話は禁止よ。ここは家庭を忘れて楽しむ場なの」

「そうでした。すみません」

「いや、いいんだが。でも、他の話の方が楽しめるかな」


そうだな、ノアちゃんのこと詳しく探るとか。

あー、結婚したら、急におっさん的な思考をするようになったな、俺も。


「で、売りたいのが、これ。メイクボックス」

「あ、知ってる! 女優ミラーが付いているのよね」

「それだけじゃないわ。すごいのはここ。サブミラー付き」

「それいい! 横顔とか同時にチェックできるね」

「そうなのよ。あと、こっちはスマホアームがあって、メイク撮影もできちゃうの」


なんか、芽衣ちゃんが出してきたメイクボックスと言う名の箱。

なんかでかい荷物持ってきたな、と思ったら、そんな物だったのか。

しかし、サンダーボードの秘密基地みたいな奴だな。

あちこちに秘密を隠していそうな。


「すごいわね。それいくらで売るの?」

「今売っている値段はネットで4万9800円」

「高いわね。欲しいけど、躊躇する値段ね」


愛花ちゃんが買い物を簡単にしなくなったのは本当みたいだな。

ちゃんと俺に金を少しづつ返しているしな。


「それ、いいわね」


おっと、ノアちゃんも参加したぞ。

やっぱり、メイクボックスというのは女子の興味を引くのか。


「でしょう? だから、私。これを動画で売ろうと思っているの」

「えっ、動画?」

「テレビショッピングの動画版よ。この商品ならうまくいくと思うのよ」

「無理じゃないの、それ」


おっと、ノアちゃんは商品の良さを認めながらも、動画販売には反対か?


「そうかしら。この商品の良さなら、私、30分でも1時間でも語れるわ」

「テレビショッピングみたいのは、きっとすごい人が脚本を書いているの。ただ、真似しても無理だと思うわ」

「ノアちゃん、そうじゃないの。芽衣さんがやろうとしているのは、テレビショッピングみたいと言っても、ああいう大げさなのじゃなくて」

「普通に商品紹介しても、売れないわ。甘いと思うわ」


うーん、ノアちゅんは現実派みたいだな。

芽衣ちゃんと愛花ちゃんは、夢見る系かな。

まぁ、そういう話なら、俺も話に参加できるぞ。


「まぁ、売れるがどうかはやってみないと分からないじゃないかな」

「そんなことないって。そうやって、何の確信もないのに事業を始めるのはどうかと思うわ」

「あー、事業を始める訳じゃないぞ。もう、芽衣ちゃんはやっているんだ」

「えっ、そうなの? で、うまく行ってるの?」


あー、そこを聞くのか。

なかなか、シビアだな。


「全然ダメだな。赤字垂れ流しって感じだ」

「やっぱり! 話を聞いていて、そうじゃないかって思ったの」


なんか、攻撃的な発言が多いな。

そういう娘なのかな。


「失敗したのは、商品のせいなの。やっぱり、自分が欲しくて買った商品じゃないとダメって」

「そうやって言い訳するのね。売れないのは自分のせいじゃなくて商品のせいって」

「なんなのよ。あなた! 文句ばっかり言って」

「文句じゃないわ。いい大人なんだから、常識を持たないとって話でしょ」


あー、なんか、リアルな場で炎上しているな。

まぁ、ネットでも、こういう話をすると炎上するんだがな。


「ノアちゃん、もうすこし立場を考えて話をしましょうね」


おっと、ミキちゃんが珍しく止めに入ったぞ。

そういうこと、普通はしないのにな。

まぁ、場が荒れるのを嫌う娘でもあるけどな。


「あ。そうでした。ごめんなさい。言いすぎました」

「立場なんて関係ないわ。言いたいことは言わなきゃダメよ」


おっと、当事者本人の芽衣さんが火に油を注ぎ始めたぞ。

まぁ、その教えは、俺が悠人カンパニーのみんなに伝えていることだけどな。


「了解をもらったということでいいのね。じゃあ言うわ。そういう常識のない行動をしていると、周りが迷惑するのよ」

「周りって誰よ。私がやりたいことやって、迷惑をかけているのは、この悠人カンパニーの社長の悠人さんよ」

「えっ。悠人さんの会社でやっていたの、それ。悠人さんはよくそんなの認めたわね」

「ああ。芽衣ちゃんは俺の会社の新規事業を立ち上げる責任者100人のうちの一人だからな」


ん? ノアちゃん、黙ってしまったぞ。

何か、考えているみたいだな。


「要は本当の責任者は悠人さんってこと?」

「今はな。ただし、これからは俺のところから分離して、芽衣ちゃんが一人で事業をするかどうかってところにいる」

「それなら、辞めた方がいいわ。絶対損するから」


まぁ、当たりと言えば当たりなんだがな。

芽衣さんが成功する可能性はまぁ10%というとこかもしれないし。


「損するとしても、やりたいの。思いっきり、自分が欲しいものを誰かに伝えるって仕事をしたいの」

「うん、それいいわ。欲しい物が買い物をするのが仕事になるってことでしょう。物欲がある方が成功する仕事なんて素敵」


愛花さんはそうだろうなー。旅行好きが旅行を仕事にするような物だからな。

俺では絶対できやしない仕事だけどな。


「冗談じゃないわ。物欲を仕事にできるはずがないじゃない。絶対に失敗するわ」

「ノアちゃん。いいか。確かに芽衣ちゃんが失敗する可能性は大きいよ。たぶん90%は失敗だと思う」

「でしょう?」

「だけどな。10%の成功の中には、俺が体験したような2000億円の会社売買につながることもあるんだ」

「2000憶!」


さすがに、その数字は驚くよな。

チート財布のせいで大金慣れした俺だって、びっくりしたもんだ。


「失敗して一年間無駄働きになるかもしれない。貯金が減ってしまうかもしれない。だけどな。成功したら莫大な報酬が生まれてくる」

「そんな夢みたいなこと、うまくいくはずがないわ」

「そういう人が多い物こそ、成功のチャンスが残っていると俺は思うんだ」

「そんなはずない!」

「実際、俺も100人の新規事業と自分がやった物を含めるともっと多くの事業を起こした。その中でうまくいきそうと言われた物の方が成功しづらいと分かったんだ」

「そんなの、おかしいわ」


なんだろう。

なんか、ノアちゃんに言いたいことがある。

なんだろう。まとまらないな。なんだろう…なんだろう…なんだろう。


「いいか。うまくいくはずがないとやりたくもないことをし続ける人生よりも、うまくいくかどうか分からないことに全身全霊を傾ける人生が、俺は楽しいと思うぞ」


あ、黙ってしまったな、やっぱり。

この言葉はノアちゃんに言っているんじゃないな。


チート財布を拾う前の俺に言っているんだろう。

想定できる範疇でしか選択をしなかった。


やりたいことも、恋愛も家族も。

想定できないという理由で切り捨てる人生を歩んでいた昔の俺。


昔の俺だけでなく、今を生きている多くの人が安心を選ぶ人生になっている。


「やりたいを取り戻せ」


というのは、ノアちゃんみたいな多くの常識で生きている人達に伝えたい言葉。

伝わるかどうかは、誰が伝えるかによる。


物欲を仕事にできた芽衣ちゃんや愛花ちゃんなら、きっと多くの人に伝えてくれるはずだ。

ひとりひとりのできっこないにチャレンジする姿が、新しい世界を生み出す。


「どうせ、私なんか」


そんな言葉より、できるかどうか分からない夢の言葉を語る人が俺は好きだ。


「な、ノアちゃん。おかしいかどうかは、自分で決めることなんだ。で、どうするのかな、芽衣ちゃんは?」

「やるわ、絶対!」

「うん、やりましょう。愛花も手伝うわ」

「おっと。芽衣カンパニーのスタッフ候補がもうできたのか?」

「本当? 愛花ちゃん。手伝ってくれるの?」

「だって、夢があるじゃない。私も自分の物欲が悪い物だとばっかり思ってきた。それが評価される会社なんて、想像しただけでワクワクする」

「そうなのよ。物欲だって、ちゃんと評価してあげなきゃ、可哀そうよ」


うん、決まったな。

まぁ、ノアちゃんには理解できない世界かもしれないけど、

芽衣ちゃんの進む道は決まったようだ。


「ミキちゃん、お祝いしよう。芽衣カンパニーの船出だからな」

「いいわね。もしかして、あれ?」

「当然だろう。お祝いと言えばドンペリに決まっているじゃないか!」

「わーい」


黒服さん、おっと黒服店長さんだったっけ。

横でしっかりと聞いていたようで、コールした。


「ドンペリ入りました!」


あー、みゆちゃんに教育されて注入されていた常識が溶けていく。

ドンペリ連鎖が止まらない。


この日の支払いは結局、32万円になってしまった。


みゆちゃんによるキャバクラ禁止令が出たエピソードでした。(笑)


そうそう。

チャンネル登録者数 2.45万人のユーチューバーTERUちゃんが、この書籍版をとりあげてくれました。

【大物現る】誰しもが妄想した事が現実に『時給12億円のニート参上!』【ラノベ】【小説家になろう】

https://www.youtube.com/watch?v=hT1eIfSD3Ko


悠人を大物って言ってもらったぞ。まぁ、しょうもなさが大物って意味だけどね。(笑)


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[良い点] 化粧BOX、是非商品化を。 コスメ&投稿ってのは現代女子(一部男子)には欠かせない日常。 レフ板&ライトもあればなお完璧。 価格1万ならかなり売れると思う。 [一言] YouTuberにも…
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