第20話 俺は寝付けない夜をすごしていた
ブクマ4959件になりました。もうすぐ5000。更新がんばりますっ。
「俺はどうなってしまったのか?」
1日何億円も現金で使ってしまう俺。
本当に節約を楽しんでいた俺なのか。
その上。
ふたりの女性を振り回してしまった俺。
いや、ふたりだけとは限らないな。
たとえば、アリサ。
俺が現れなかったら、俺がチート財布を拾っていなかったら。
アリサは、あのアリサのままだっただろう。
謙虚になる必要なんてなかっただろう。
チート財布を持っていた俺に対抗しようとして自滅した。
自信満々だったアリサはたぶんもういない。
どう変わったかは分からないが、たぶん変わってしまった。
俺がチート財布を使って振り回してしまったからだ。
ミキちゃんだって、みゆちゃんだって。
振り回されていて、何かが壊れてしまっているかもしれない。
多くの人の何かを壊してしまっているのは俺か?
それとも、チート財布か?
金は人の何かを壊す力があるのだろう。
いろんな物語や、テレビニュースの中にはお金によって人生を壊されてしまったストーリーが数限りなくある。
だけど、それは俺とは関係ない世界の話。
1週間前まで、そう思っていた。
千円札1枚だけ入っていた財布を拾うまでは。
もしかしたら、ただの夢なのかな。
お金が欲しいと思っていた俺が見た夢。
朝起きたら、この天井がムクの木で作られたベッドルームではなく、6畳間のふとんの中にいる。
「あーあ。面白い夢だったのにな」
そんなセリフを吐いているのかもしれない。
だけど。
今の俺は、この部屋が夢の中にいるとは感じられない。
すべては現実として認識している。
「チート財布。もしかしたら俺を利用して何かをさせようとしているのかもな」
だいたいがこの俺がこんな贅沢な部屋を欲しがるはずがない。
いくらお金が無尽蔵にあるとは言え、欲求が少ない奴とずっと言われてきた俺。
車もいらない。彼女もいらない。
なろうアニメと無料アプリゲームとアイドル。
大して金がかからないから、一生懸命働かなくてもいい。
年収180万円で、満足していた俺。
それが、時給12億円だって?
なんだそれ。
なろうアニメだって、そこまでひどい設定なモノはない。
なろうアニメだったら、きっと何か裏があるのだろう。
なんか事件が起きて、お姫様が現れて。
みゆちゃん、みたいな。
そして、巨乳の美女も現れて、ハーレムができて。
巨乳美女もいいな。
美少女と悪役令嬢みたいなのと、スレンダー美女と、そこそこむっちりの美女がいて。
やっぱり巨乳がいいな。
あ、女奴隷を忘れていた。
エルフも必要だ。
それが揃ってこそ、ハーレムだ。
「駄目だ。頭がまともに動かない」
フィクションと現実が混ざってきた。
このまま異世界に転生してしまうのか?
あー、もやもやする。
「チート財布は、俺に何をさせようとしているのか?」
おっ、また元の問いに戻った。
重要なのは、ここだ。
もしかしたら、何か意味があって、あの財布は俺のとこに来た。
それはあるかも、しれないな。
俺じゃなくてもよかったのだろう。
単に誰かの元に来て、大量の金を使わせる。
キャバクラでドンペリを入れまくるためか?
いや違うな。
マンションを現金で即買いするためか?
いや違うな。
金の力で女の何かを壊して、都合がいい女にするためか?
いや違うな。
そんなものであるはずがない。
もしかしたら、もっと違ったチート財布の使い方があるのだろうか。
ある。きっとある。
そうだな。
いい加減、贅沢はもう飽きたし。
明日は、もっと別なチート財布の持つ可能性を探しに行こう。
そんなことを考えていたら、俺はいつしか夢の世界の住人になった。
彼は旅立った……完。なんてことはないだよ。ここからが本番なのさ。




