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番外『マグロス』編12話 1千万円社員の活躍

「うわっ、涼しいな」

「うん。気持ちいいの」


大元神社の参拝と瞑想を終えて、御許山の麓まで来た。

そこに1件だけ喫茶店風のお店があるんだ。


もう6時くらいになっているから、そこで一休みしてタクシーを呼んでもらおうって計画。


「ここは、カレーが名物みたいだな」

「うん、お腹空いた」


ふたりでカレーを頼んで出てくるのを待っているとスマホが鳴った。


「あ、うん。わかってる。もうちょっと待ってくれ。今日のギリギリまでには答えを出すから」


俺はスマホを切った。


「誰?」

「渋川社長。ひとつ、決めなくてはいけないことがあってな」

「どんなこと?」

「悠人カンパニーで年収1千万円でやりたいことを持っている人を募集したんだ」

「あ、覚えている。1年くらい前よね」

「そう。あと1か月で1年になる。で、結果が出た人、全然な人の両方いる訳よ」

「へぇ。結果出た人ってどんな人がいるの?」


年収1千万円社員の10人くらいは1年を待たずしてすでに事業を軌道に乗せている。


ひとりは、新しいインドカレー屋チェーンを作るんだ、ってパイロット店を作った。


「なんで、インドカレーというとナンとタンドリーチキンばっかりなんですか?」


たしかにインドカレー屋っていうと、カレーが1種類か2種類かを選んで、ナンかライスを選ぶのが基本だな。

チェーン店ではないんだろうが、本当に似ている店が多い。


「今や、1駅に同じようなインドカレー屋が2店以上あったりして、客の取り合いをしているんです」


そういえば、前に住んでいたアパートの近くにもインドカレー屋ができたけど、すぐにつぶれたな。


「インドカレーはそんな単純じゃないんです。もっと幅広いんです」


確かに最近は南インドカレーが人気で、ミールズのセットがあったりするな。


「そうなんですよ。ミールズ。他にもプーリーのセットとか、いろんなバリエーションがあるんです」


うんうん、分かるぞ。


「あと、インド人シェフって、料理している姿がいいんです。今、インド屋台の動画が人気なんです」


おー、確かにいいな。動画を見せてもらって、面白いと思ってしまった。


「こういう料理人を入口近くで料理させて、パフォーマンスとして見せるんです」


それは面白いな。


そんな感じで、あっさりアイデア採用された。

まずは、インドに飛んでシェフ探しから始めた。

もちろん、インドに詳しい現地の日本人も探してもらった。


店は上野の近くで人気が落ちているインドカレー屋があったので、買収した。

オーナーは赤字になってしまっているから、喜んで譲ってくれた。


インドで見つけたシェフは料理パフォーマンスがすごくて、ユーチューブで宣伝したらあっという間に人気店になった。

まぁ、俺から見たらパフォーマンスでも、シェフにしたらずっとやってきた料理にすぎないんだけどな。


パイロット店を2カ月ほど経営したら、すぐに次の店を探してみた。

1店だけでは、チェーン店としての実力が分からないからな。


このチェーン店方式のいいのは、人手が足りなくならないこと。

インドやネパールから店員が呼べるのがいい。


あと、出店が楽ということ。

うまく行っていないインドカレー屋を買収すると、早くて安く出店できる。


そんな感じで、もう5店にまで増えた。

それも、それぞれ人気店で、少しづつメニューを変えたりしてバリエーションを増やしている。


1店はビーガン店にして、肉を一切使わない健康志向にしている。

元々インドは、7割がベジタリアンで肉を食べないらしい。

だから、豆等をつかってしっかりとした味なのにビーガンな料理が沢山あるんだ。


他にも、ミール専門店で椀子そばのように、ストップをかけるまでカレーやライス等々を追加しつづける食べ放題の店もある。

どのタイプの店も入口横には大きなガラスで料理は見せられるようにしている。

赤と黄色のド派手な共通のインド風な看板にしているから、やたらと目立っている。


「そんなことやっていたのね」

「他にもやっているぞ」


セレクト.COMというのは、通販店の商品をセレクトして展示するネットショップ。


セレクト店の店長になるとお店のスペースが与えられる。

一番安い裏通り店だと毎月3千円の賃料から始められる。


商品が売れると1割の販売手数料が入る。

成績によっては、それがアップしていく仕組みだ。


「ほら、子供のころ、お店屋さんごっこをしたりしなかった?」

「うん、したわ。お洋服の絵をハサミで切って、お洋服屋さんごっことか」

「それのリアル版だな」


ネットショップになると、実店舗と違って品数は無限に広げることができる。

だけど、そうなると、どれを選んだらいいのか迷ってしまう人がいる。


そういう人のために、センスがある人が選んだセレクトショップに需要がある。


そういうアイデアだな。

それも、店長を一般に開放して、無限のセレクトショップができあがる。


もっとも、最初は裏通りから始まって、表通り、メイン通り、あとはモールがあって、ブランド通り、といろんな場所に店を出せる。

人気がないセレクトショップは、下がって言って、人気がある店があがっていく。

そんな仕組みも入れてあるから、最初にどの店に入ればいいのかは、迷わず決められるようにしている。


他にもウインドーショッピングモードもあって、各店が一押しの商品をウインドーに並べているから、そのウインドーだけ見ていくモード。

もちろん、気に入ったものがあったら、クリックすればセレクトショップに入れるしね。


「これはすでに世界最大のネットショップ、アマゾノとの提携も決まっている。これから、テレビCMも予定していて、どでかくなるのは間違いない」


他にも、商品を何でもランキング形式にしてしまう、市場調査をしているサイトとか。

いろんなプロジェクトが進んでいる。


「まぁ、参加した100人のうち、10人は軌道に乗って25人は準備中だけど、テストマーケティングがうまくいっている状態だな」

「それ以外はどうなの?」

「それなんだよな。他の65人は停滞中か、うまくいかないか。要は赤字垂れ流し状態なところが多い」


渋川社長に決断を求められるのが、その連中の対処だ。

このまま、年収1千万円の継続はできないと言われている。

もちろん、そうだろう。


元々、年収1千万円社員は1年契約だ。

お互いに望むなら契約継続もありってなっている。


渋川社長としては、可能性のなさそうなプロジェクトに投資しつづけることはできないって立場だな。

だからと言って、やりたいことを始めた連中を途中で放り出すというのは……。


そこで悩んでいるのだ。


「うーん。年収1千万円は無理でも、なんとか続けられる道は作ってあげられないの?」

「S&Sを売った金があるから、それはできるんだが」

「そうして、あげて欲しいわ」


あ、なんか今。

違和感を感じたぞ。


なんか、違う。


それって、結局、惰性でやり続けることにならないか。

それって、本当にやりたいことをしているってなるのか?


夢を持って初めたけど、夢がうまくいかないと分かった時。

どうしたら、いいのか?


よし、決めた!


「うん。来月で基準に達しないプロジェクトは『終わり』にしよう」

「ええー」

「やりたいは、『始める』より『終わり』が重要なんだ」

「どういうこと?」

「会社を始めると大抵の社長は、つぶせないと言うんだ」

「そりゃそうよ」

「だけど、それをするとやりたくないことをすることになるんだ。社長も社員も」

「うーん」

「それだったら、すっぱりと『終わり』を用意する。それがやりたいを実現する場を用意した俺の役割なんだ」

「うん、悠人。決めたのね」

「おう」


俺はすぐに渋川社長に電話した。


「あの件だが。査定はすんでいるんだよな。その査定で『継続に値しない』プロジェクトは『終わり』にする」

「いいんですか?」

「ああ。その代わり。第2期年収1千万円社員を募集するぞ」

「やりますか!」

「ああ。今度は10倍の1000人だ。どうだ、受け入れはできるか?」

「それはまた、大胆な。いいでしょう、やりましょう」


給料だけで100億円か。

なかなか、でかいな。


「それと。第1期で『終わり』になった連中の第2期チャレンジを認めるぞ」

「条件はどうしましょう?」

「初めてのチャレンジと一緒だ。他のチャレンジャーより魅力的なプレゼンができたら、新たに『始まり』を作ることができる」

「要はやる気を見るってことですな」

「そうだ。なんとか続けせてくれ、は認めない。一度『終わり』にして新たな『始まり』なら認めよう」

「いいですな、それ」


スマホを切って考えてみた。


なんで、今までこんな簡単なことに悩んでいたんだろう。

俺は、やりたいことチャレンジができる場を提供したんだ。

ずっと続ける場じゃない。


やること、やらないこと。

なんか、俺の中で明確になってきた気がするぞ。


チート財布を拾うまでの価値観。

チート財布を拾ってからの価値観。


それぞれ、違う価値観で俺は生きてきた。


そして、今。

チート財布から金は出てこないが。

いろんな事業のオーナーとなった俺。


新しい価値観が必要になる。

だけど、その価値観が見えてこなかった。


「未来につながる価値を生み出す可能性はあるのか?」


蛇神さんにチート財布を託された俺がやるべきこと。


今の価値ではなく、未来の価値。


それが今の俺の価値観だ。

それに基づいて判断をする。

それに基づかない判断は排除する。


やっと、もやもやしたものが晴れた気がするぞ。


なんか、いろいろと新しいことをしたくなってきた!


「みゆちゃんは、今、やりたいことはあるのか?」

「私? 歌いたいわ、思いっきり」

「えっ? 歌っているよな。マグロスの『愛、溺れていますか?』は大ヒットしているんだよな」

「あれは、ミンリーの歌よ。私の歌を思いっきり歌いたいの」

「それ、いいな」


みゆちゃんのやりたいを聞いて、頭の中で新しいプロジェクトのイメージが生み出されつつあった。


やっと、マグロス番外編のプロローグが終わったぞ。長いなー。

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/


明日、いよいよ、『時給12億円のニート』が文庫本で発売になる。

ミリオン、いくかなーーーー。


もうアマゾンは、出荷されたみたい。

よかったら、買ってくださいね。

https://www.amazon.co.jp/dp/4798622664


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[一言] Amazonにて購入しました。 まだ届いて無いけど凄い楽しみ、毎日更新を楽しみにして読んでた作品なんで作者さんには今後に期待大!!
[良い点] 「会社を始めると大抵の社長は、つぶせないと言うんだ」 「だけど、それをするとやりたくないことをすることになるんだ。社長も社員も」 コロナ禍の中、見切りの悪い業種の代表者が立て続けにそのよ…
[良い点] 終わらせることって、始めることより難しいのよね。
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