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番外『マグロス』編11話 俺は宇宙を旅する経験をした

「ここはどこだ?」


今、俺は小さな光が無数は輝く場所にいる。

夜空を見上げているのか?

いや、足元にも光は輝いている。


と、なると、ここは宇宙にいるということだな。


宇宙服はどうなっている?

空気は大丈夫なのか?


そんなことを考えてみたが、当然ながら分かりはしない。

だいたい、自分の身体自体が人間的な姿なのかどうか、それもあいまいだ。


「なぜ、俺は宇宙にいるのか?」


さっきまで、みゆちゃんと一緒に大元神社にいたはずだ。

その裏で瞑想をしたら、こんなところに来てしまった。


宇宙にいるということは、無重力ってことだよな。

それなら、飛び回ることができるんじゃないか?


なんとなく、そんなことを考えたら動き出した。

小さな光、つまり星が後ろに流れ出した。


あ、このシーン、マグロスにもあった。


海溝の奥にあった時空橋にマグロスで突っ込んだ後。

乗組員、それぞれが宇宙を旅するシーン。


あれは宇宙ではなく時空だと思うんだけど、映像は宇宙ぽかったしな。

それと似た感じで星が流れだした。


うん、いい気分だ。

重力も、光速の壁も、すべての制限から解き放たれて自由に動ける。


「今、俺は自由な場所に帰ってきた」


あれ? 帰ってきたのか? 元々、ここにいたのか?

なんとなく思った言葉が気になっている。


俺は自由な宇宙から制限だらけの地球に降りたのか?

なんで、そんな道を選んだのだろうか?


ここでなら、他の星にだって簡単に行ける。


蒼く輝く星に向かって飛べば、それが大きな恒星だと分かる。

恒星の周りを廻っている惑星に近づくことだってできる。


もちろん、その惑星は地球じゃない。

赤い土に覆われた惑星で、そもそも太陽が青白いしな。


宇宙を飛び回っていると、なぜかある方向へと導かれる。

なぜ、そこに向かわないといけないのか。


全く分からないまま、最高速で向かっていく。

すると、白く輝く何かが現れる。


「あ、みゆちゃん」


なぜ、その白く輝く何かがみゆちゃんだと分かったのか。

全く分からないけど、あれはみゆちゃんだ。


俺はみゆちゃんとひとつになるように、やはり白く輝く身体を近づける。

ふたつの白く輝く何かは、ひとつになって下へ落ちていく。


下? それまで上下前後左右がない宇宙にいたのに、急に上下前後左右ができた。


下に向かって落ちていくと、地球が見える。

ユーラシア大陸の東端、日本列島、九州……意識がぼーっとしてくる。


その中に会っても、ひとつのシンボルだけ、ぽっかりと浮かんでいる。

うん、あれだな。間違いなく、あれだ。


なぜ、そのシンボルなのかは分からないが、力強くシンボルが訴えかけてくる。

私のこと、忘れないで。そんな気持ちが込められているように感じる。


「あれ?」


意識が戻った……たぶん、今、目を閉じて瞑想をしている。

右手にはみゆちゃんの手の体温を感じる。


暑い夏の日なのに、なぜかひんやりとした空気感。

俺は目を開いた。同時にみゆちゃんも目を開いたみたいだ。


「シンボルだな」

「うん、シンボルね」


やっぱり、みゆちゃんも同じシンボルを見たようだ。

そのシンボルを口に出すと次に進める気がする。


「スペードだよな」「ハートなの」


えっ、見たシンボルが違うのか?

それって、どういうことなのか?


「俺がスペードでみゆちゃんがハート。これはどういうメッセージなのか?」

「みゆにもわからないの。なにか意味があるとは思うけど」


もしかしたら…これは、ギャンブルとか?

ラスベガスに行って、ギャンブルをして、俺がスペードに賭けて、みゆちゃんがハートに賭ければ……なんて、ことはないわな。


ふたりは、宇宙を旅して得たシンボルの意味が分からないまま、ぼーっとしていた。


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― 新着の感想 ―
[一言] そうそう、文庫版の307ページの1行目の『みなちゃん』って誰だか判んなくて一生懸命探しちゃったのはナイショです…
[良い点] 追伸。 Amazonで予約しました。
[一言] なかなかに抽象的な回でした。 ここ数話はヒントが少ない中での進行なので、次話あたりが本当に楽しみなのであります。 そして伏線回収がどのようになるのか楽しみです。 蛇神様ではない…まさか鮪様と…
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