番外『マグロス』編8話 山の上に答えがあるか
「どうして猫恋には限界があるのだろう?」
「やっぱり、猫がかわいいってだけじゃダメなのかしら」
猫島に来て5日が過ぎだ。
その間、ずっと猫と一緒に過ごした。
島猫に宿猫、シェアハウスの家猫。
たしかに猫はかわいいと思う。
元々は犬派だった俺も今や、完全に猫派に鞍替えした。
「アクセスも島に来るお客さんも伸びないの」
「何かが足りないんだよなー」
猫だけじゃ限界があるのはあたり前。
ハルトカンパニーでも、そんな意見が多い。
S&Sは仕事につながるというのが登録者のモチベーションになって、登録者が急増した。
だけど、猫恋にはそれがない。
「違うんだよ、猫恋は。何か底知れぬ可能性が感じられるんだよ、何か」
「えっと。それって、数字に表れるものなんですか?」
そう…アクセスっていう評価、登録者という評価。
そこでみると猫恋は限界がある。
今は多言語対応しているけど、日本以外では数字のもっと伸びが少ない。
「限界があるんじゃなくて、何かが足りないんだ」
ネットミーティングで東京の連中と話していて、あっ、と思った。
マグロスでも同じセリフがあったなと。
リン・ミンリー達が海溝の奥にあった時空橋に突入して1800年前の邪馬台国にタイムリープした時。
まだ邪馬台国が古代日本をまとめ上げる前。
小さな国がそれぞれの我欲で戦争に明け暮れ、不幸ばかり増えていた頃。
卑弥呼が叫んだ一言。
「私達のやり方が限界だっていうのは認めないわ! 単に何か、とっても大切な何かが足りないだけなの」
邪馬台国の女王、卑弥呼が周りの国々をまとめあげ、古代日本という新しい世界を生み出す。
それを知っていたミンリーは、一緒になって足りないものを探し続けた。
なぜか、その時の卑弥呼と今の俺はつながっている気がする。
戦う以外の何か……人々が熱狂することで、敵対心を越えて新しい世界を築き上げる、何か。
「みゆちゃんだったら、何をするのか」
俺の欠点は、頭で考えすぎてしまうことだ。
それを教えてくれたのが、みゆちゃんだ。
「どうしても分からないときはね。自分の力以外を使うの」
そう言って、蛇神様にチャネリングしていた。
どんなに考えつくしても出てこなかった答えが、ぽろり、と出てきた。
「みゆちゃんを頼るって手もあるけど」
なんか、違う。
自分で見つけたい。
なぜか、そんな気がしていた。
「そうか、瞑想か」
みゆちゃんみたいに、チャネリングで蛇神様につながることはできない。
だけど、瞑想をすればインスピレーションが降りてくるかも。
「あそこか」
猫島は中心に山がある。
その山の頂上には、ちょっとした岩がある。
山の上の岩は磐座だって言う人がいる。
神様に近づけるパワースポットだと言う。
「それが本当なのかは、俺じゃ分からないけどな」
ただ、気がいい場所なのは確かだ。
猫たちが満月になると集まってくる場所でもある。
猫カメラによる満月の猫集会ライブは人気のイベントだ。
俺は山頂に登って岩の上で瞑想をすることにした。




