番外『マグロス』編2話 海底宇宙人と似てるとこ
「この資料の通り、2年後マザーズ株式市場に上場を予定しています。今、投資してもらえれば、2年後は10倍になることを保証します」
「あー、パスだな」
「お帰りはあちらです」
「えっ、そんなバカな! 10倍ですよ、10倍」
「時間の無駄だ」
「お引き取りを」
朝の1時間は、投資や取引相手のプレゼンタイムになっている。
今日は、12件の会社が来ているというから、1社5分だな。
毎日このくらいのプレゼンを受けているが、そのうち1割も検討するところまでいかない。
これはチート財布がなくなったからではなく、あった時からそうだった。
投資を求める人のほとんどは、リターンの話で気を引こうとする。
どのくらい儲かるか、だ。
もしくは社会的な意義もプラスしてくる人もいる。
だが、ほとんどはそれは大義名分でしかない。
結局は儲かるって話になる。
「どうしても、そんなに儲けたがるのか?」
俺にはどうも良く分からない。
「なぜ地上人はそんなに仕事ばかりしているのか」
「何言ってるんですか。仕事が大切なんですよ」
海底宇宙人が初めて会った日本人とそんな話をしていたな。
朝、ゾロゾロと満員電車に乗っていく日本人を不思議そうに見ていた。
「この人達はきっと奴隷に違いない」
海底宇宙人にとって奴隷になることは一番の不名誉とされている。
自分のことを自分で決める、それを放棄した人達。
それが海底宇宙人にとっての「奴隷の定義」だ。
ほとんどの日本人が奴隷行動をしているのを見て、制圧者がいると勘違いした海底宇宙人の活躍が面白かったな。
制圧者だと思った人物が結局、これまた奴隷だったのを知ってカルチャーショックを受けていた。
「なぜ、制圧者もいないのに日本には奴隷ばかりいるんだ?」
今、考えると俺は子供の頃に見た『マグロス』で奴隷にならない生き方を選択していたのかもしれないな。
生活に必要な最低のお金を計算して、それを稼ぐだけの仕事をする。
野性の肉食動物だって、自分や家族が食べる以上の狩りはしない。
なぜ人間だけは生きるのに必要ないくらい多くのお金を稼ぎたがるのか?
社会に出る前から、ずっと疑問に思っていたことだ。
「老人施設向けにカルチャースクールを開きたいんです」
「ん? それはなぜ、かな」
「老人施設が今、やっているレクレーションっていうのがレベルが低くて。もっと楽しいことが世の中にあることを知らせたいんです」
「それって、儲かるかい?」
「分かりません」
「よし! 合格!」
「えーーーー」
儲かるかどうかわからないことをプレゼンしてきた。
いいぞ、いいぞ。
こういう奴が面白い。
可能性を感じてしまう。
事業計画なんてものは、プロに任せればいい。
そのあたりをサポートするプロは、悠人カンパニーには揃っている。
そんなことより、「やりたい」って気持ちをプレゼンしてほしい。
お金より、やりたいを優先する。
俺がチート財布持って得たものは、結局、海底宇宙人が言っていたのと同じことだったな。
あ、ちなみに。
みゆちゃん主演の『超時空海中戦艦マグロス』はこの土日で興行収入が5億円を越えたらしく、今年の映画では最大の興行収入になると言われ始めた。
また、この映画が流行るのも25年経っても海底宇宙人の言葉は斬新だということかもしれないな。
もちろん、みゆちゃんがカワイイというのもあるがな。
この話があったとき、「やりたい」って言ったらしい。
まだ俺が事故に会う前だったが、極秘だったらしいから全然知らなかったな。
やっぱり、やりたいって思った物の方がうまく行く可能性は高いってことだな。
「さて、俺もそろそろ、覚悟を決めないといけないな」
悠人カンパニーの人達をはじめ、俺の決断を待っている人達がいる。
もしかしたら、全世界の人達に影響を与えるかもしれない決断。
俺は本当はどっちの道を歩きたいのか。
今、決断するべき時だな。
わーい、ローファン日間ランキング7位になったー。
びっくり。
ブクマは増えてないので、評価をしてくれた人がたくさんいたってことだね。
ありがとうっ。
この小説の連載当時より、評価の仕方が簡単になっているんだ。
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僕もめんどくさがり屋だから、ブクマとか評価とか、しないことが多いんだけど、
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