番外編3話 俺は秘密基地が完成したのを喜んだ
「ええっ!? 本当? 美尾ちゃん」
「本当、本当。できたんだって。紗夜華」
「ずいぶんかかったわね」
「うん。1年と10カ月だって。その代わりすごいのになったみたい」
「だけど。結局、あの離島って何になったの?」
「それがね。ステージなんだって」
「ステージ!」
その島は、悠斗の夢が詰まった島だった。
真ん中の山の上には祠と鳥居。
小さいけど、太白神様を祀った瀬戸天一神社。
祠の先には大きな岩があって、磐座として祀ってある。
北側にも磐座があって、そこには大神神社。
三輪山の麓にある大神神社から勧請した。
蛇神様と金星の神様が揃っている。
そして、南側には山の麓まで入り江があって、港になっている。
そこにちょうど、メガヨット『アイなろ号』が停泊できるようになっている。
「おっ、来たな。アイドル革命のメンバー達」
悠斗が『アイなろ号』の一番上で手を振っている。
私、犬神美尾は紗夜華と一緒にヘリで東京から今、離島に着いたところだ。
島にはちゃんとヘリポートも作られている。
「悠斗さんっ。来たわよ」
「美尾たちもこっちにこいよ。気持ちいいぞ」
「今行くわ」
メガヨットの構造は何度かステージとして使っているから、ちゃんと理解している。
一番上のサンデッキまで、最短距離で駆け上って行った。
「あっ、煌もいたんだ」
「うん、ちょっと前に着いたの。あとは、みゆちゃんだけね」
「みゆちゃんも、すぐに着くって言ってたわ」
悠斗が楽しそうに笑っている。
最近、アイドル革命のメンバー達は忙しくて、あまり悠斗に会えていない。
悠斗と結婚しているみゆちゃんを除いて。
「それで、悠斗。ここで何をするの?」
「あー、見て分からないかな?」
「なにが?」
「ほら、この山と『アイなろ号』」
「どういうこと?」
「あー、見る位置が問題か。じゃあ、ドローンで見てみようか」
悠斗がノートパソコンを開くとドローンで撮影している映像が映し出される。
「ほら、この角度だと分かりやすくないか?」
「えっと。わかんない」
「これはな。前方後円墳と同じ形になるんだぞ」
「あ、もしかして」
「そうさ。1800年の時を超えてやるのだ」
「そう。伝説のステージ卑弥呼さ」
元々は、アニメ『超宇宙戦艦マグロス』で語られている邪馬台国の卑弥呼の話。
普通に習う歴史だと、卑弥呼は日本最古の統一国家、邪馬台国の女王で鬼道という術の使い手とされている。
しかしアニメ『超宇宙戦艦マグロス』では、人の心をひとつにする歌を使って争いを収めたアイドルとなっている。
アイドル革命のメンバー鵜谷煌は、卑弥呼以来の1800年ぶりのアイドル歌手とマスコミでは呼ばれている。
統一国家を作った伝説の歌手卑弥呼は、前方後円墳をステージとして小国の王たちを前に歌を歌って、協力しあう国を創り上げていった。
そして、小国の王たちは、自らの領地にも前方後円墳を作って卑弥呼から授けられた楽曲をアイドルに歌わせて人心掌握を実現していったのだ。
そこから大和王権が生まれて古墳時代になり、飛鳥、奈良、平安時代へとつながっていったのだ。
「あ、ヘリ! みゆちゃんね」
「ああ。きっとそうだ」
「じゃあ。みゆちゃんが卑弥呼役なのね」
「そうさ。神々もきっとバックアップしてくれるぞ」
☆ ☆ ☆
「これで、みんな揃ったな」
「「「「ええ」」」」
アイドル革命の4人。
みゆ、美尾、煌、紗夜華。
そして、俺、悠斗。
「それじゃ、リハーサルいくぞ」
明日は、令和3年の8月8日。
ライオンゲートが開き、宇宙のエネルギーが地球に降り注ぐ日、らしい。
みゆちゃんが神社やスピリチュアルにやたら詳しくなって教えてくれる。
だから、ライオンゲートの日にステージを開催して、それをテレビ放送&ネットライブで日本全国に伝える。
もしかしたら、何か起きるかもしれない。
それも、瀬戸内海に浮かぶ離島の前方後円墳のステージで。
「うん。蛇神さんも、星神さんも、協力してくれるって言ってるわ」
最近のみゆちゃんは発言が神懸っているな。
「あのね。みんなには言ってないんだけど」
「ん? なんだ、みゆちゃん」
「蛇神さん達に教えてもらったんだけどね」
「何を?」
「明日のステージの意味」
「どういうこと?」
「完全に新しい時代の扉が開くんだって」
「新しい時代?」
みゆちゃんが言うには、卑弥呼が作った時代の流れ。
それは、統一に向けて進む流れだった。
それまで多くの神様がいて、それぞれが活動していた。
それが統一日本を創り上げるために、強力な神様を封印していくことになった。
「おいおい。それじゃ、強力な神様を解放してしまうということかい?」
「うん」
「それって、また戦乱の世の中になるってことじゃないのか?」
「ううん。統一から融合に進むんだって」
「融合?」
「いろんな神様、いろんな考え方。それらが同時に存在して、協力しあえる関係、それが融合なの」
よくわからないな。
しかし、俺とアイドル革命の4人がライオンゲートの日にステージをすると、新たな時代の幕開きになるのか。
「面白いじゃないか」
「でしょう? 蛇神さんもワクワクしているの」
「それでか。最近、ゲリラ豪雨がすごいと思ったら」
「うん。そうみたい」
こうして、伝説のステージが行われることになった。
もちろん、メインの歌は、あれだ。
「やりたいを取り戻せ!」
融合の時代の幕が開くのか。
それは、もっと先になって歴史学者が答えを出してくれるだろう。
伏線回収ができていなかった、離島の話。
コメントでリクエストも入っていたので、書いてみました。
再来年の8月8日。
何か起きるかもね。笑




